カテゴリ:恩人・マサタさん
ここ数日間の夜に感じる、
どことなく違う気配を含んだ春の空気。 それは決して目には見えないものだけど、 自分の心は確かにその変化を感じ取って微笑んでいる。 年に何回かしかないこの心の微笑みは、 新たな土地に立った瞬間湧いてくる想像力と似ている。 その場に留まってる自分を決して良しとしない。 新たなどこかへと自らを誘いたくなる。 春の空気は、そんな旅の感覚を芽生えさせる。 この日の日中、何ヶ月振りかに ネックウォーマーと手袋を外して原付の運転をした。 肌に風が触れてることがはっきりとわかった。 たったそれだけのことで感じた、 あの解放感は一体何なんだろう。 でもそれはよく感じることでもある。 うちの近くの木々の てっぺんの方のつぼみだけが 白い花を咲かせ始めたのを見た時。 装いが軽いものになっている街の人々の中に、 さすがにまだ季節外れなTシャツの人を見つけた時。 やはり気持ちは一瞬で開く。 自分が変化することにはかなり恐怖感を感じるのに、 周りのそうした変化には感動すら覚えるのが不思議でしょうがない。 変化は、頭でなく心で捉えればいいのかもしれない。 この日の夜、 コスタリカ時代の恩人のお見舞いへ。 「定められた終わり。」 「あの日のまま。」 「かがやき。」 「あなたの病室。」 「田舎時間の幸せ。」 「幸せのカタチ。」 「素敵な奇跡を。」 「これからも。」 「生かされて。」 ベッドの上に足を乗せる時に、 奥さんの手伝いなしで自力であげてる嬉しいとこを初めて見た。 でも、甘いものが食べれなくなったという悲しい話も聴いた。 何かが出来るようになって、何かが出来なくなって。 でもそれは恩人だけのことじゃなくて、 俺にも花にも木々にも起こる自然の摂理なのかもしれない。 恩人は「余命14日」と言われてたところを、 もうすでに1年以上も生きている。 じつはそれ自体が最も素晴らしいことなのではないか。 そしてそれもやはり、 恩人だけのことではなくて、 全ての生きとし生けるものに言えることなのかもしれない。 もうすぐ、 恩人の好きな暖かな季節がやってくる。 花が咲き誇る。 『花を愛するのに植物学は不要である。』 作家・稲垣足穂 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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