059077 ランダム
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赤いグラス

「赤いグラス」






何の前触れもなく、赤いグラスはするりと落ちた

ゆっくりと、漆黒の空中を落下していく

咄嗟に手を伸ばせば、受け止められたかもしれない

でも、君は、あまりにも鮮やかに

僕の手をすり抜けた。


はすになりながら、黙って冷たい床に吸い込まれていった

パンッ、と乾いた最後の音がして

かたちのあるものは、かたちを失い

かたちの無いものは、かたちになった

もう、戻れない。





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