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創作映画企画の趣意

戦後、日本は世界的にも類を見ない経済的発展を遂げてきましたが、近年のバブル崩壊以降の長引く不況により、人々はまず先に自分が生きながらえるための試練を要求され、その結果、自己優先的な社会がはびこり、地域に住み暮らす人々が互いに助け合いながら繁栄し育んできた愛情(こころ)までが失われ、これまでの地域コミュニティーという考え方は時代錯誤の陰影となりつつあります。これはまさに時代のもたらした「心の空洞化」であり、そしてさらに、代々受け継がれてきた古き良き伝統や和の精神、そして何よりも日本人としての誇りまでが失われてしまったと考えます。

このような時代にあって、少しでもこのまちに住んでいてよかったと思えるもの、私たちが置き去りにしてしまっていた大切な心のつながりを共有できるようなものはないのでしょうか。そしてそれは、いったいどこに行けば見つかるのでしょうか。

私たちには、「みやこ」という故郷があります。みやこに住み暮らす人、みやこを出ようとしている人、外に行った人、帰ってきた人、帰れない人、帰らない人・・・ 全てが人生模様であり、それはみやこという町がその人の将来を決めていくものではなく、「そこに住もう」「「離れよう」「やり直そう」など、決意をする環境を与え、母のような包容力を持ち、暖かく見守っているのが「ふるさと」なのだと思います。

みやこに限らずどんなところに住もうと、私たちが忘れてはならないことは、家庭における「個と公の倫理観」に基づいた、家庭と自分、地域と自分、社会と自分の関わりと、その地域に生まれ、育ち、これからを生きていこうとする「自信・誇り」そして「夢」そのものではないでしょうか。

私たちは本事業を通して、多様な価値観を認め合い、誇りをもって語れるような我がまちみやこの夢と絆を創造してまいります。大切なのはその製作過程(プロセス)において、たくさんの地域社会との接点を持ち、住民参加を基本とした取り組みを行うことであります。

映画主題「ふるさと孝行」は、コミュニティーの最小単位である我が家=「家庭」を原点に、宮古に住む親や子供たちの心にストレートに訴えかける、かつて一度も行ったことのない提言手法です。この映画という手法は、一般にも人気があり、受け入れられやすく、観客の感情移入もしやすい事から、私たちの新しい街づくりにかける思いと情熱がより伝わるものと考えております。

また、私たちが制作する映画作品は、宮古・下閉伊域内から公募した出演者たちがオーディションを経てリハーサルを重ね、本番を迎える過程で、ひとつのものを創り上げていく達成感や感動などを体感するといった点で、有効な地域開発プログラムとしても個と公の調和の実践に繋がっていきます。

「これからの世代にどんな夢・可能性を手渡してゆくのか」が、私たちの大きなテーマです。私たち(社)陸中宮古青年会議所は、より多くの人にあるべき地域のかたちを共に考えていただきたいと思います。子供と大人が互いに育み合い、個と公の倫理観に基づいた地域、そんな可能性に満ちた明日を、この「ふるさと孝行」を通して創り上げたいと思います。そして、少しでも参加して頂いた皆さんや、作品を見ていただいた地域の皆さんに、ふるさと宮古への愛を感じ、自信と誇りを育める作品作りに取り組んでいきたいと思います。


(2004年度 (社)陸中宮古青年会議所 感動創造委員会 企画趣意書より 原文のまま)


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