医療をしていると、ほとんど救命は不可能だが一縷の望みを託して治療に望むことはあります。心肺機能が低下し、そのままでは死を免れないときの心肺補助装置の使用は、ダメでもともとの場合が多いでしょう。ダメでもともとの場合にダメだったら刑事罰というのであれば、どうしたらよいのでしょう。何もせず、そのまま死なせろと言うことですね。
カテーテル挿入で患者死亡…大阪医療センター
09/10/19読売新聞
大阪市中央区の国立病院機構「大阪医療センター」で、人工心肺装置の装着手術を受けた男性患者(69)が、カテーテル挿入時に血管を損傷し、死亡していたことがわかった。大阪府警は、医師の挿入ミスの可能性があるとみて、業務上過失致死容疑で捜査を始めた。
府警や同センターによると、男性は今月5日、経営する大阪市の工場で起きた火災で一酸化炭素中毒などで意識不明となり、同センターに搬送された。11日に人工心肺装置を取り付ける手術を受けたが、医師が太ももの静脈からカテーテルを挿入した後、容体が急変し、同日中に死亡した。
病院から届け出を受けた府警が13日、遺体を司法解剖した結果、死因は左太ももの静脈損傷による出血性ショックと判明したという。同センターの斉藤三則管理課長は「現段階では医療過誤ではないと判断している。院内に検証チームを設置し、原因を究明したい」としている。
解剖する医師は臨床の現場を知りませんから、静脈に損傷があって死亡すればこんな判断をするのかも知れません。この事例の人工心肺装置というのは、
PCPS と言われる心肺補助装置と思われます。通常は大腿部の動静脈を穿刺しますから、それらの血管は傷つくわけですが、さすがにそれを「損傷」とは言わないでしょう。言うのかな。
おそらくは静脈を穿刺するときに貫いたのだろうと思います。これは良くあることで、引き抜いてきて、血液が逆流するところで進めれば血管内に針を進めることが出来ます。通常はこれを失敗とは言いません。そもそも、大腿静脈を損傷したくらいで人間は死にません。それで死ぬようならカテーテルの挿入は不可能です。
この事例は意識不明から6日後に PCPS を行っています。つまり、いよいよ死が免れない状況になってきたので、何とか持たせようとしたのでしょう。そして、装着のための手技中に坂を転がり落ちるように亡くなったものと思われます。ダメでもともとの治療をして、実際にダメだっただけのように思うのですが、そうですか、業務上過失致死ですか。
よく分からないのですが、このような状況で亡くなった場合、司法解剖により、死因が出血性ショックによるものだなんて特定できるものなのでしょうか?
他に死に至る原因がない場合、大量の出血が認められば出血性ショックが直接の死因だと推定できますが、他に死の原因となるものがある場合(この場合一酸化炭素中中毒)、明確にどちらが原因だと特定できるものなんでしょうかね?(2009.10.29 23:51:54)
wadjaさん、コメントありがとうございます。
実際の解剖所見では断定されているのではないかも知れません。
以前にも、病理解剖で、解剖医の個人的意見「と思われる」が一人歩きしてトンデモ判決が出たことがありました。
(2009.10.30 05:17:54)
最後に不適切な処置をした人間が業務上何タラという犯罪の対象になるだけですね。 アホな国家ですねw(2009.11.01 09:01:32)
元外科医さん、コメントありがとうございます。
今回の場合、本当に処置が不適切だったのかも怪しいですしね。
今回の臨床麻酔学会でも、「ミスがなかったのなら、どうして死んだのですか」と言う家族の談話を不適切な例としてメディアに話したら、やはり、「ミスがなかったのなら、どうして死んだのですか」とメディアからも再度問われて愕然としたという話が披露されていました。
正しく治療すれば人間は死なないと思っているのですね。(2009.11.01 14:08:06)