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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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テーマ:お勧めの本(7264)
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塩野七生著『ローマ人の物語』(32)
       迷走する帝国(上)(新潮文庫)

読破ゲージ:
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アントニヌス、通称カラカラ、ガリアの長袖の衣類の事。生来自己顕示欲強く好戦的。母の前で弟ゲタを殺して帝位に。マズいことには、ヤル気満々での即位。最初にやった政策が、「誰もがローマ市民」宣言=「アントニヌス勅令」。一見人道的なこの政策、つまりは、ユリウス・カエサル以来、ローマ市民権を敗者同化路線の要、つまりはパクス・ロマーナの肝にしてきたのが、とうとうご褒美の大安売りという結果に。なぜなら、単に人道的見地に立てば、これまでの賢帝がすでにうやっていてもおかしくない法。それをしなかったのには、ローマ市民権取得こそが、深謀遠慮の末に生み出されたカードとして完璧に機能していたから。誰でも簡単に手に入る権利に、人は感謝もしないし興味も持たない。自助努力も、帝国への協力も怠って当然。多民族多文化多宗教国家の基盤がここに崩れる。「取得権」の「既得権」化とは、そのようなものだ。現代の投票権を筆者は例に挙げている。ローマ帝国を支えて来た「市民権」なるブランドは死んだ。安全保障という点では責任感強いカラカラ、外敵に打って出るのも積極的。戦場が恋しいカラカラ、和戦両面にて、見事ドナウ河防衛線の堅固化に成功。軍事面ではなかなかの器量ではあったカラカラ、パルティアと対峙。以降のローマ軍団の主力を努めることになる機動部隊も新設して、軍勢再編成も果たす。オリエント行の途中でアレクサンドリアの若者といざこざ、体育館に集めて虐殺。これがまた、元老院の眉をひそめさせた。結局、パルティア王ヴォレゲセス5世の王弟による王位簒奪や、王の娘との結婚話破談で、矛をおさめる理由もなくなったカラカラ、パルティアとの戦闘再開にやる気十分。が。陣営で不祥事を起こした兵士を叱ったカラカラ、恨まれることに。この兵士、上官マクリヌスに訴え、「あなたがその気なら」とまで囁く。悪魔は勝ったのか。神殿で祈るカラカラ、兵士により殺害さる。そして、マクリヌス即位。この不審に誰も声をあげなかったのは、今まさにそこにパルティア軍が迫っていたから。戦時に最高司令官を空席にすることはできない。といって、ムーア人で元老院出身でもないマクリヌス、突然皇帝として戦役を任されることになるも、すでに足元は見られていた。パルティア、先人の努力の賜物である北部メソポタミア放棄を迫る慇懃な講和条件に、安直に飛びつく。ローマ属州メソポタミア、40年ぶりに手を離れる。無念。首都では、カラカラの叔母ユリア・メサ(姉ユリア・ドムナは息子カラカラの死後自殺)が、突然落ちぶれた己の身分に我慢ならず。成長した孫二人を擁立して富・権力の奪回を志す。二人の孫の年長ヘラガバルスを立て、セヴェルスゆかりの将官たちに「この子の父親は、実はカラカラ」と嘘をつく。が、前線の兵士には人望あった生粋の戦士カラカラの子であれば嬉しい、と希望的解釈をする兵士らはあっさり嘘を信じ込む。「ならば、皇帝の席にあるマクリヌスを討つべし」。血気上げる兵士たちから変装までして逃げるマクリヌス、嫌悪に駆られた兵士たちに突きまくられ死亡。とうとう皇帝として首都入りすることもかなわなかった。神速にて皇位奪回、ユリア・メサ。14歳のヘラガバルス即位。オリエントの神官として育てられたこの不思議な少年は、皇帝への適正は皆無。ゆっくりもったいぶって、が信条ならば、シリアで立って、ローマ到着まで一年5ヶ月もかけている。やってきた輿には黒い石ころ=ご神体、公衆の面前で堂々と同性と愛を育む姿に市民は唖然。オリエント式にアレンジを加えない様は受け入れられなかった。聡いユリア・メサ、ヘラガバルスの年若い従兄弟、アレクサンデルを後継者に。が、ヘラガバルス後悔、今やアレクサンデル殺害で頭が一杯。一目も憚らずアレクサンデル殺害を命じたその矢先、逆に自分が殺害される。4年の治世。ここに、皇帝アレクサンデル・セヴェルス、即位。ユリア・メサ、今度は失敗すまじと綿密に傀儡化を推進。といって、この幼く経験も少ない少年の右腕に、法学者ウルピアヌスを据えたのは流石。ウルピアヌスあればこそ、アレクサンデルの治世は少しずつ信頼を得始めて来た。性格も地味、スポーツと読書を愛し、きわめてノーマルなアレクサンデル。真面目過ぎたのが玉に瑕。偉大なる先人ほどの実績も積まぬうちから、そうあろうと努め過ぎた。ユリア・メサ、死去。かわって実母ユリア・マメア。メサと違って、悪いが賢くはなかった。まずはウルピアヌスが、ユリア・メサの覚えめでたいと目をつけられ、ユリア・マメアに煽動された兵士により殺される。ところで、なぜパルティアがいつもしつこく立ちはだかるのか。アレクサンダー大王に敗れたペルシア王国を大王死後に継いだ将軍たちは、地中海に近いエリアにしか関心を示さなかったため、遊牧民族であるパルティア人たちは、肥沃なるメソポタミアに進出し、以後着々と農耕と通商で底力を強化してきた歴史があったからなのだ。折しも、ペルシア再興の機運高まる。賢くつき合うパルティアとは違い、ローマとは決着をつける気概のペルシア、後のササン朝ペルシアの創始者アルダシルを戴冠させて意気軒昂。北からは、同盟国アルメニアを敗ったペルシアの大軍、リメスを突破しカッパドキア侵入。西からの軍は属州シリアを壊滅。アレクサンデル・セヴェルス、皇帝として初めて、“インペラトール”の称号にふさわしいかの試練に臨む。つまり、ペルシア戦役に出陣である。一兵卒たちと苦労を同じくしながら真面目に真面目に軍を進めてきたアレクサンデル、もはや“栄光の時代”は過去の事と知る事に。なんと、アンティオキアで皇帝を出迎えた軍団がストを起こす。これには、カエサルの事例にならって対処するも役者が違ったか、結果は裏目に。とはいえ、戦果は上々。元老院への報告したほどには実際には立派ではなかったが、少なくとも、ペルシアの主戦力を巧みに撃退し、以後20年間戦意を失わせた功はあったのだ。が、この久々の勝利と、予想外にも結構頑張ったアレクサンデルへの期待が結局はアレクサンデルを潰してしまう。軍を率いれば勝つ、とまで持ち上げられ、引くに引けなくなったアレクサンデル、防衛線を脅かす、ライン河の向うの“蛮族征伐”に出発。アレクサンデルが採ったのは、期待された武力による制圧ではなく、経済援助を提案しての問題解決であった。これが、蛮族とのせめぎ合いに命をかけてきた兵士たちの不満に火を点ける。緊張するマインツで、誰ともなく、反皇帝一斉蜂起。天幕にいたアレクサンデル、なだれ込む兵士に殺される。享年27歳、13年の統治。アレクサンデルから右腕を奪った悪母ユリア・マメアも殺害される。「セヴェルス朝」潰え、以後50年間を人は、軍団に担ぎ上げられた司令官が、元老院の承認なしに皇帝になることから軍人皇帝の時代と呼ぶ。この意味では、セプティミウス・セヴェルスなど、厳密には軍人皇帝などではなかったのだ。軍人皇帝の輩出は、三世紀という時代の要請に応えた現象に過ぎないとは筆者のクールな分析。(了)


ローマ人の物語(32)

「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『何のために生き、死ぬの?』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2009/01/15 12:25:13 PM
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