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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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テーマ:お勧めの本(7264)
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塩野七生著『ローマ人の物語』(34)
       迷走する帝国(下)(新潮文庫)

読破ゲージ:
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読み進めて行けば、この時代はつくづくモダンだ、と感じる。繰り広げられることは野蛮きわまりないが、帝政初期のクラシカルさと比べてモダンだと感じる。躊躇う、逡巡する、という、みっともない叡知が欠けているのだ。なにしろ、あらゆる蛮行はモダニゼーションから発しているこの皮肉が事実なのだ。さて、皇帝ヴァレリアヌス生きながらに捕縛の事件、権威失墜の動かぬ証拠。茫然自失に続いて、“残された者たちの分裂”を誘発、俗にいう「三十人皇帝」の時代へ。父を切り捨てたガリエヌス、健闘。なだれ込む外敵を防衛線の外へ撃退。皇帝ガリエヌスには、危機の打開を急ぐより、これ以上の悪化を防ぐことの方が重要と分かっていた。が、動揺した風紀はつまらぬ揉め事を多発させてしまう。ラインの防衛線で、蛮族から奪回した略奪品を巡った将軍二人の争いは、あろうことか武力衝突に発展。総督シルヴァヌスと側近を殺した一方のポストゥムス、殺した者の中に皇帝ガリエヌスの長男がいたことを知って、もはや未来なしと判断、治める一帯を擁して「ガリア帝国」を興して帝国離脱。独立、というよりは、ミニ・ローマ帝国として分離した「ガリア帝国」は、風雲の志や大望の下に興った国には非ず。帝国としても放置はできない。が、下手に手を出せば帝国中枢そのものが四面楚歌になる可能性もあり。当面は「ガリア帝国」を陽動させて、ドナウ河防衛、ペルシア王対策。ペルシアに抗する「シリア砂漠の真珠」パルミラのオデナトゥスと共闘作戦は前半好調も、ゴート族への勝利を祝う宴で、ガリエヌスの甥がこの帝国東方全域を任されるオデナトゥスとその子を私怨で斬って事態は暗転。夫と前妻の連れ子を斬られたゼノビア、我が子を擁して後見人になり、パルミラ王国を樹立。皇帝の弱みにつけこむ形で、カッパドキアからエジプトまでの勢力を我が手にした浅はかな野心の女ゼノビア。ここに、「ガリア帝国」「パルミラ王国」との三国時代がスタート。ところで、軍人は政治が理解でいなくても構わないが、政治家は軍事を理解しないではは政治は行えない、とは筆者。ローマ人の採った、軍務と政務の往来の自由が人材を育成したと。軍務と政務を分離=非ローマ化がさらに進むこの頃から、以降政治の分かる軍人、軍務の分かる政治家を、ローマは生まなくなる。元老院と軍を完全ぶり、ゼネラリストではなくスペシャリスト育成方式に変更したガリエヌスはまた、伝統的な重装歩兵主軸の軍団構成を、騎兵主体に変更した、つまりゲルマン的構成(軍の非ローマ化)にした皇帝。社会の安全度は社会の健全度を示す計器。一、人々の居住地域が防衛に適した高所でなく、平地に分散(土地の有効利用度を示す)。二、いつでも逃げられる牧畜でなく、定住前提の農耕が盛んであること。三、交通手段が整備され、移動中の安全が保障されていること。これこそまさに、300年間守られてきた「パクス・ロマーナ」。それが崩壊を示した時代でもあった。三世紀ローマ帝国を襲った平価切り下げに伴うインフレーションと、先行したデフレーションのダブルパンチで経済も苦境に。折も折り、ガリエヌス、軍部のクーデターにより殺される。これは、いわば軍事面での信頼を失った皇帝に突きつけられた不信任に等しい。皇帝に就いたクラウディウスによってゴートは退けられる。クラウディウス、ゴティクスを名乗る。が、軍部の支持を集めたクラウディウスもまた、疫病により没す。下克上が当たり前になった今、実力こそが正義。軍人皇帝の時代とはそういう時代。アウレリアヌス、皇帝即位。「常に剣に手をかけている」と綽名されたアウレリアヌス、軍規の立て直しならば筋金入り。厳罰も辞さず。物事の優先順位を明確につけ、時間を無駄にしなかったアウレリアヌス、三分された帝国に対峙し、決然と反攻開始。が、蛮族対応に失策あったアウレリアヌス、元老院に足元をすくわれる形に。これ、いわば軍務から締め出された元老院による軍人皇帝への屈折した態度の顕れ。皇帝の、帝国の敵は帝国内にいた。元老院による執拗な皇帝批判の中、皇帝・元老院間の関係は硬直、アウグストゥス以来の伝統である、元老院による通貨の発行権を皇帝権限に移して、いよいよ元老院の不満は頂点に。それも気付かず、パルミラ問題、ドナウ河防衛線の再度の確立に向う皇帝、ゼノビアを追いつめる。パルミラも、包囲されたゼノビアに対して、援軍もよこさぬ始末。ペルシアの助力を宛てにするゼノビア、なおも抵抗。開戦。もはやアンティオキアも助けず、皇帝入城を受け入れ。第二戦では息子のヴァラバラトゥス王も戦死。ゼノビア、パルミラに敗走。商いが滞ることの方を怖れたパルミラの住民にも疎まれ、ペルシアのシャプール王の救援も期待を裏切られ、ゼノビア打つ手なし。憧れのクレオパトラにはなれず。パルミラ開門。問題解決と事後処理終えてエジプトでの統治権回復に向うアウレリアヌスの耳には、寛大な処置を読み違えて駐屯兵を殺し独立宣言したパルミラ人のニュースが。ローマ伝統の信義を踏みにじったパルミラ人たちは、ゼノビアですら受けなかったほどの、徹底した暴行と略奪を受け、パルミラの繁栄は永久に消滅した。「速攻のアウレリアヌス」、勝利に酔う間もなく、今度はガリア再復に軍を動かす。巧みに会談に持ち込み、なし崩し的に離脱せざるを得なかった足腰弱いガリアを説き伏せて無血にて「ガリア帝国」壊滅、ガリア地方を取戻して凱旋式。次の課題、ササン朝ペルシアが五月蝿い。ペルシア戦役に率いる軍勢準備の最中、自分にも厳しいアウレリアヌス、手違った秘書エロスを叱責、生命の危険を感じた秘書は、奸計により将官を動かし、皇帝の寝首を掻かせる。4年九ヶ月の治世、呆気ない最期。ここに、はじめて、惨めに過ぎる事件に皇帝空位期間が生じる。元老院いとっては主導権奪回の好機。五ヶ月の空白の後、高名なる歴史家タキトゥスの血を引く75歳のタキトゥス皇帝誕生。教養人で、理性もあった高齢皇帝、引き受けたからには真面目に皇帝を勤め上げるつもりも、間もなく自然死。皇帝の自然死がこんなにも新鮮だなんて!!元老院すかさずタキトゥスの実弟フロリアヌスを皇帝に指名するも、タキトゥスで懲りていたシリア&エジプトの軍団は総司令官プロブスを支持。元老院ノーを突きつけられ動揺、内戦回避のためとはいえ、下策に出てフロリアヌスを殺す。対抗馬を立てないことが回答だった。皇帝プロブスは、ユリウス・カエサル以来の「敗者同化政策」への回帰を掲げ、「勝って譲る」を踏襲宣言も、各地で起こる反乱や帝国の綻びに振り回される。兵士が一級の土木技師であったのがローマの伝統でもあったが、スペシャリストになってしまった兵士に工事用具はもはや持てない。故郷シルミウムの工事の進捗を見ようと、組まれた塔に登るプロブス、工事を嫌った生粋のエリート兵士たちにより塔を倒され殺される。苦労だけの6年の治世、最期には、もはやローマのは跡形なく消えたことを示すのみ。が、不信任ではなかったこの皇帝殺しは支持を得ず、実行犯は皆殺し。ケルンの軍で訓練係を努めるカルスが皇帝に。先帝準備中のペルシア戦役を引き継ぐ。長男カリヌス、次男ヌメリアヌスを共同皇帝にしてシャプールに臨む。砂漠の雷は、何より怖い。ただ一点を目指した落雷、カルスを直撃。皇帝死去。我を失った次男ヌメリアヌスに希望なしと見た兵士たちにより、引き返したローマで馬車から姿を現した共同皇帝は死体で登場。ヌメリアヌス殺しの容疑は状況証拠からヌメリアヌスの義父アプルスに向けられ、裁判もなく身辺警護の隊長ディオクレスにより一刀両断。最前線で変事を目の当たりにした臨戦態勢のローマ軍は、もはや指導者を選択するより他になし。カリヌスではなく、ディオクレスを選んだローマ軍団は、西方で控える現皇帝カリヌス討伐に兵を向ける。内戦覚悟も、カリヌス部下に裏切られて殺され、ディオクレス一人、皇帝を名乗ることに。ローマ風に名を改め、ディオクレティアヌス帝誕生。近年の他の皇帝とは違い、21年の治世をもらったディオクレティアヌスの政治は、ローマ帝国を新たなフェイズに誘う。この巻末には、「ローマ帝国とキリスト教」について、まとまった論考があり復読に価する。(了)


ローマ人の物語(34)

「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『何のために生き、死ぬの?』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2009/01/26 12:56:13 PM
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プラダ バッグ@ gpzqtt@gmail.com 匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_…
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