TIMEー02 仮面の下の素顔 前編無事盗みも成功し家に向かっている手には、今さっき盗んだ炎の燭台がある 炎の燭台は、炎が付いている名の通り、赤色に輝いている そして、家の屋根まで来た自分の部屋のベランダに下りると玄関の方から話し声が聞こえた 話し声は、夜公の母、風華と志麻であった 志麻の手には、見覚えのあるノートを持っているそれは、自分のノートであった 多分急いでいたので忘れたのだろう 「これ、夜公君にお願いします」と夜公のノートを風華に渡す 風華は、夜公のノートを受け取り 「ありがとう志麻ちゃん朝、夜公ちゃんに言っとくから」 「はい ではおやすみなさい」と軽く礼をして家に戻って行った 風華は、玄関のドアを閉め 「夜公ちゃんも幸せ者ね~」と言い階段を上り夜公の部屋に向かっていく 夜公はベランダの窓を開け部屋に入って窓を閉め鍵を掛ける そして盗んできた炎の燭台をベットの下に隠す すると、ドアノブが90度ほど回りドアが開く だがまだ夜公は、レーベンの格好のままである、このままでは、夜公がレーベンだと言う事がばれてしまう だが、風華がドアをあけ切ったときには、もう夜公は、机に向かって黙々と勉強していた これも、夜公の隠しスキルの一つ 早着替えである 風華は、夜公が黙々と勉強しているから声が掛け辛かった 「や・・・ 夜公ちゃん、志麻ちゃんがノート届けてくれたわよ」 「ありがとう 母さん」 「お礼なら志麻ちゃんに言いなさい」と少し叱り口調で言った そして「勉強もいいけど早く寝なさいね」と言い残して部屋を出て行った 時計は、12時を回っていた 「じゃ~ そろそろ寝るか」と言って 部屋の明かりを消し布団に入った 東の空に日が昇り鳥の鳴き声が聞こえる気持ちのいい朝 だが、水奈樹家では違った 水奈樹家の大黒柱である志麻の父親が悔しそうに新聞を見ながら叫んでいる 理由は、こうである 昨夜、レーベンが現れた事、それとそのレーベンを逃がした警察の失態についてトップ一面を使って書かれているからである 読んでいた新聞を握り締め 「次こそは絶対に逃がさんぞレーベン!!」とお決まりの台詞を吐き立ち上がった するとキッチンで志麻の母親が 「その台詞何回目かしらね~」と呟いき一緒に朝ごはんを作っている志麻方に目線を送る 志麻は「しっかりしてね」とダイニングに居る父に聞こえるくらいの声で言った そのころ夜公はと言うと夜のお仕事のせいで寝ている 昨夜は、美術館内で警察官達と鬼ごっこ相当疲れたであろう テレビではお目覚めテレビの時計の形をしたキャラクターが「6時45分 6時45分」とテレビの前の人たちに告げている それを聞いた夜公の母、風華は階段を上り夜公の部屋のドアを開け 「夜公ちゃん!! 朝よ起きなさい!!」と大声で言った 夜公は上半身を起こし、ぼけぇ~っとしている 夜公は朝、起きても低血圧で5分間ぐらいこの調子です ・・・・・・5分経過・・・・・・ 夜公は両手を上げ「あぁ~」と声を上げる 布団から出てタンスを開け制服を出して着替え始める 着替え終わり階段を下りていくリビングのドアを開けてダイニングまで歩いていく テーブルには、もう朝ごはんが並べられている 朝ごはんは、トーストにベーコンエッグ、きゅうりにトマト、レタスの入ったシンプルなサラダに牛乳、いたって普通の洋風の朝食である ダイニングの椅子に座り 夜公が「いただきます」と言うと夜公の母が「どうぞ」と言う 水奈樹家の食卓には、ご飯に味噌汁、納豆、生卵にちょっとしたおかずが並べられてる飛影家とは正反対の純和風の朝食である 水奈樹家は、家族3人そろって「いただきます」 志麻の父親の横には、握り締めてシワクチャになった新聞とよく警察が証拠品などを入れておく密封袋にカードらしき物が入った袋が置いてある 志麻がご飯を口に運んでいるとその入った袋カードらしき物が目に入った 「そ、それ~」と言って袋を指差した 「あ、これか これは今回、レーベンが出した予告状だ」と言った 志麻はそれを手に取り「きれいな字」と言った 今度は、志麻の母が「どれどれ」と言って志麻の持っている予告状を覗き込んでこう言った「見事な字ね」と 予告状には、こう書かれていた 『今夜11時30分に炎の燭台を頂に参ります Fromレーベン』と 志麻の母が「レーベンって結構字に癖があるわね」 と言った 「癖??」と志麻が聞くと母は「そう! 癖があるの」と答えた 「たとえば『Fromレーベン』の『From』の『F』を見て」と語り始めた 志麻の母が言いたいのはこういう事だ、普通筆記体で『F』を書く場合『T』の筆記体に少し真ん中にちょんと短い線を書くのにそれが長いと言うのだ まー字と言うのは人それぞれだがこの『F』の真ん中の線は、異様に長かった 志麻は母が指摘したこの『F』どこかで見たことがあった 悩みながらも朝食を食べ、自分の部屋に学校の準備をしに行った 制服に着替え、鞄に用具を詰めて、部屋を出て行こうとしたとき 昨日、夜公が書いて置いて行った手紙が目に入った、手紙を手に取り、母の言っていた『F』の文字を恐る恐る見た あることを思いながら・・・ だが、夜公の書いた字とレーベンの書いた字が一緒だったのである あることが当たってしまったのである 志麻は、手紙を鞄の中にしまい、一階に降りていった そして、父にレーベンの予告状を一日だけ貸し手と頼んだ 理由を聞かれたがうまくごまかして、借りた予告状を鞄にしまい、自分のと夜公の分の弁当を持って、家を出て行った 隣の夜公の家まで行き、夜公を呼び一緒に登校 志麻は、夜公になかなか今朝のことを聞けずにいた 志麻が、迷っているともう学校が見えてきてしまった いつも通っている道は、短く感じるものである そして、門を潜ろうとした時 「フッハハハハ・・・・・・朝から仲良く登校ですか、いいですね」 宝条が夜公と志麻の後ろでそう言った 「ほっ 宝条君!!」 と志麻が驚き振り返っても宝条は、そこにはいなかった 「残念ですね僕は、こっちですよ」 と門の陰から出てきた 「おはよう ほあじょ」 夜行は欠伸しながら言った 宝条は、礼儀正しく 「おはようございます 飛影、水奈樹さん」 志麻は一応挨拶されたので「おはよう 宝条君」と返した そして、3人で教室まで行った 教室には、まだ誰も居なかった 「相変わらずこのクラスは、朝弱い奴が多いですね」 と宝条は言った 席は、6列あり、1列6人の計36人のクラスである 3人の席は、 黒板 □ □ □ □ □ □ ま ろ □ □ □ □ □ □ ど う □ □ □ □ □ □ が か □ ☆ □ □ □ □ わ が ◎ □ □ □ □ □ わ □ □ □ □ □ ▽ ☆が夜公の席、◎が志麻の席、▽が宝条の席である 用具を机の中に入れ終わった、宝条が志麻の席まで来た 「水奈樹さん、何やっているんですか?」 「え、あ、ほ、宝条君」 と言って 机に上に出していた物をとっさに隠した 「隠すなんて、怪しいですよ」 「いや、別に何でもないから」 「ま、そんなに隠すなら、詮索しませんが」 といつもの宝条らしくない答えだった いつもだったら「んー怪しいですね~」なんて言って、どんな手を使っても取るのに 志麻は、いつもの宝条らしくない宝条に今、隠したものを見せた 宝条は、夜公が寝ているのを確認し 「これは、レーベンの予告状ですね」 と言った 答えが『3』なのにわざと『6』と答えるような明らかに何か知っている口調だった 「宝条君、ちょっとついて来て下さい」 志麻は宝条と教室を出て行き人気の少ない階段の踊り場ままで来た 「何ですか水奈樹さん、人気のない所に呼び出して、さては飛影を諦めて僕に変える気ですか」 とふざけ半分で言った 宝条は「水奈樹さんが飛影を諦め僕にしたとなると・・・・・・」 なんてぶつぶつ言っていると 「宝条君!!」 と大声で宝条に向かって言った 「やっ やだなー、冗談に決まってるじゃないですか」 宝条は「アハハハハ・・・・・・」と笑い誤魔化した 「違います、私が言いたいのは宝条君がレーベンについて知っていることを全部教えて欲しいんです」 「僕がレーベンについて知っていることですか?」 「そうです」 宝条はこの時レーベンの正体が夜公ではないのかと志麻が疑っていることを察した 「レーベンは1992年に現れ始め、これまで6年間数多くの美術品を盗んできています数字にしますと、約900ぐらいかと、それと28年前から18年前にもレーベンがいたらしく10年間の間に約1500品以上の美術品を盗んだと言われています」 「へぇ~、じゃなくて私が知りたいのは・・・・・・」 「レーベンさんの正体です!!って言いたいんでしょうけど、残念ながら僕はレーベンの正体は知りません」 「本当に」 「本当にです」 前回とは立場が逆転、お互いに睨めっこ 張り詰めた空気が漂う 「分かりました、宝条君を信じます」 「ありがとうございますでは、信じてくれたお礼に良い情報を差し上げます、今夜10時半レーベンはセントラル美術館に現れます」 「どこでそんな情報を」 と宝条に尋ねたが宝条はいなかった 「それは、企業秘密ですハハハハハ・・・・・・」 と何所からともなく宝条の声がした 廊下には宝条の声が響いている 「ハハハハハ・・・・・・」が何度も何度も繰り返し聞こえる 志麻は宝条を追いかけ教室に戻った 教室にはクラスの半分ほどしかおらず、その中に宝条の姿は見当たらなかった よく見ると夜公の姿もなかった 志麻は、教室にいた友達に夜公がどこに言ったか聞いた 「飛影君なら宝条君起こされてどっか行ったよ」 と返事が返ってきた その返事を聞いた志麻は、走って教室を出て夜公と宝条を探しに行った 「夜公、今夜10時半セントラル美術館にお願いします」 夜公を屋上につれてきて宝条が始めて言った言葉がこれだ 当然、話の見えない夜公は 「話が全然見えないんだが」 と聞き返した これは、当然の答えだろう 宝条は「えーっと、んー」と考え始めた 右手を顎に当てて、右ひじを左手の掌において 「理由は後でいいから、何を盗めばいいんだ」 「よくぞ聞いてくれました」 と言って宝条は獲物の写真を見せた 写真には、なにやら2枚の仮面の絵がある 宝条は獲物の写真を見せながら説明した 「これは、『太陽の仮面』と『月の仮面』と言いまして以前飛影が盗んだのは『太陽の仮面』で飛影から見て左手の方ですね、『太陽の仮面』とセットだった『月の仮面』は輸送途中にトラブルがあり、『月の仮面』だけ行方不明だったんです、けど、つい最近になって見つかったと言う訳です」 と宝条が説明しているのに 夜公は、じーっと写真と睨めっこ 「せっかく人が説明しているのに、どうしたんですか、飛影」 「いや、これがあまりにも『月の仮面』が『太陽の仮面』とそっくりだなと思って」 「そのことですか、『太陽の仮面』と『月の仮面』はあまりにも似ていて区別するのは至難の業で、一般人では区別するのは不可能です、僕でも区別するのが大変ですよ」 なんてさらっと言って「アハハハハ・・・・・・」なんて笑っているから大変そうに聞こえない 「アハハハハッ」と宝条の笑いがブツンと切れた 「静かに、夜公」と言ったが夜公は、元からあまり喋っていない 宝条が「アハハハハ・・・・・・」と笑っていただけだ そして、宝条は夜公の前から消えた そして屋上の入り口のほうから「キャァー!!」と悲鳴が聞こえた 志麻は、教室を出て夜公と宝条を探しに行った 人気の少ない場所を手当たりしだいに探した 階段の踊り場、理科室などの特別教室を探したがどこにもいない 残るは屋上だけ 志麻は走って屋上まで向かった 屋上に上がる階段の前まで来た そして、ゆっくり上っていく15段上って中間地点の踊り場 後半の15段上がりきって屋上の重たそうな鉄のドアの前まで来て、そっと少しだけその鉄のドアを開けた そこには夜公と宝条が居たが 突然、宝条が消えた そして、驚きを隠せない志麻の左肩に誰かの手が置かれた 「キャァー!!」 「うわっ!!」 と志麻の左肩に手を置いた本人も驚いている 悲鳴を聞いて駆けつけてきた夜公がドアを開け「どうしんだ!!」と言った ドアを開け目の前に居た志麻は「夜公君!!」と言って夜公に抱きついた 志麻の目には少し涙が相当怖かったのであろう 「え、あ、し、志麻」 夜公は突然抱きつかれたので硬直している 今にもゼンマイが切れそうなゼンマイ玩具のようである それをすかさず志麻の左肩に手を置いた本人こと宝条秋宗は 「お熱いですね~二人とも、昨日といい、ね~水奈樹さん」 と志麻に問いかける それを聞いた、ゼンマイが切れそうなゼンマイ玩具ような夜公は 「?・・・・昨日・・・・?」 とコメディ漫画風に言うなら夜公の頭の上に『???』とクエスチョンマークが3つほど浮かんでいる その反応を見た宝条は、「あっ!!」と言って 「飛影っ!! 今の無かった事にしてください!!」 と焦っている 夜公に抱きついていた志麻は抱きつくのをやめ 「夜公君!! 今の聞き流していいから」 と志麻も焦っている 何がなんだか解らない夜公は「う、うん」と返事をした それを見た宝条は『はぁー』と心の中で肩を撫で下ろした 「とにかく教室に戻りましょう」 と宝条が提案し、3人は教室に戻った つづく TIMEー01 夜を駆ける者 後編 TIMEー02 仮面の下の素顔 中編 |