80.3人のお母さんの話(聞く・訊く・聴く)

3人のお母さんの話(聞く・訊く・聴く)




「良好な人間関係の秘訣は、相手の話を聴くことから始まります」

僕が管理職社員の研修に使用しているツールを少し変えて書いてみます。

第1(聞く)のお母さんの、お嬢ちゃんは小学校3年生です。いつも算数の成績が悪くて、せいぜい60点か、良くても70点ぐらいしかとってきません。
この日、85点とったのです。
お嬢ちゃんは答案用紙を手に持って、走って帰ってきました。
「お母さん、85点とったよ!……」
ちょうどその時、お母さんは、洗濯機の方へかがみこんで、洗濯をしていました。
きっと、あとで見ようと思ったのでしょう。「あ、そう!……」と答えたのです。
すると、お嬢ちゃんは、黙って答案用紙を投げ出し、遊びに行ってしまいました。


第2(訊く)のお母さんのお嬢ちゃんも3年生で、やはり算数の成績があまりよくないのです。たいてい70点どまりです。
それがこの日85点とったのです。
嬉しくて、答案用紙を手にヒラヒラさせながら、走って帰ってきました。
「お母さん、85点とったよ!」
お母さんは洗濯機の方にかがみ込んで洗濯中でしたが、このお母さんは、洗濯の手を休めて、どれどれと見てあげたのです。
「もうちょっとやね。隣のA子ちゃんはいつも100点よ!」
隣のA子ちゃんまで引き合いに出されては……。
お嬢ちゃんは、ポーンと、鞄と答案用紙を放り投げて、遊びに行ってしまいました。


第3(聴く)のお母さんのお嬢ちゃんも3年生で、同様に算数の成績はいま一つです。
いつも60点か、良くて70点ぐらいのところです。
ところがこの日85点とったのです。
お嬢ちゃんは嬉しくて嬉しくて、答案を手に持って走って帰りました。
「お母さん、85点とったよ!」
あいにくお母さんは洗濯をしていましたが、その手を休めて、どれどれとお嬢ちゃんの方を見てあげました。
アッ、この子は走って帰ったのだわ。
娘が、ハアハア、荒い息をしているので、パット分りました。
「お母さん!……」と言って、見上げている目が輝いているのを見たとき、アッ、私に何か言って欲しいのだ、と感じました。
「まあ、よかったわね」、思わず声が出ていました。
「あなたが、よく頑張ったからよ!」
そして、答案用紙を手にとって、
「こんなところに気をつけたら、今度はきっと100点とれるね」と言いました。
お嬢ちゃんはとても喜びました。


さて、3人のお母さんの話は以上ですが、お母さんのあなたはどのタイプでしょうか?

聞く、訊く、聴くと言葉の意味はまったく違うのがお分かりいただけたと思います。

子供や部下から相談や話を持ちかけられた時に、どんなに自分が多忙でもその場で聴くようにします。後できく後で読むは絶対にしてはいけない行為なのです。
これが度重なれば、二度と相談には来ないでしょう。
その時は、自分の手を止めて聴くことに徹してください。
そして、相手の目や表情を見ながら、話の内容の情景を思い浮かべながら聴て上げてください。
そのお母さんの姿勢は直ぐに相手に伝わります。聴いてくれていると分かれば必死で話をします。

人間は誰でも存在感や達成感を認めてもらいたいのです。だから、
この場合は絶対に途中で話を遮ってはいけません。
また、叱ったり怒ったりする事も場面の中にはあるでしょうがこの時も、どんなささいなことでもいいので先ず相手を褒めてあげてから、叱ったり、注意したりしてください。

どんなにヤンチャな子供でも、どんなにヤンチャな部下でも、褒めることから話を切り出せば、自分が信じている人が自分の事を思って、叱ったり、怒ったり、注意してくれているんだと素直になれるから。
この時間違えないでください。叱ると怒るは意味が全く違いますよ。

もし、言葉の意味が理解できない方がいらっしゃれば、自分をお嬢ちゃんに置き換えてもう一度読んでみてください。

どうです、第3の聴くのお母さんになら何でも話が出来るのではないでしょうか。

教育とはOFF-JTのように日時を決めて行うのではなく、教育とは「今日行く」という言葉の如く愛情を込めて行います。

子供から見た素敵な親、部下から見た信頼できる管理職になる為の秘訣でした。


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