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カテゴリ:フットボール
ところで、この一戦を制したクラブへの報酬は、一説によると1億ユーロに上るだろうと言われている。(CLスポンサーのマスターカード社調べ)
日本円に換算すると、約160億円。これは高騰するスポンサー料、放映権による収入、チケット代によるものだと言われている。 また、クラブのホーム都市にも好影響を与えるようで、一昨年に同じくミランとの決勝に挑んだリバプール市には7,000万ユーロ(約115億円)の経済効果をもたらしたとの報道もある。 都市への経済効果は別として、欧州一を決めるUEFA主催の主要大会とはいえ、クラブへの報酬がとてつもなく増幅していることに私は不安を抱かずにはいられない。 チャンピオンズリーグに出場し、優勝をかけて戦えるクラブはほとんどの場合、ビッククラブだというのが現状だ。 これがいわゆるスモールクラブとの格差をより一層広げてしまうのではないか。 アメリカ4大スポーツの一つ、NBAなどで採用されているサラリーキャップ制度。 これは、財政的に余裕のあるチームが、優秀な選手を独占してしまうことに対して歯止めを利かせている。 2006-07シーズンのサラリーキャップは、$53,135,000。日本円にすれば約63億円。 しかし、それに例外が次々と加わり、制度自体が曖昧なものとなってきてはいる。 その象徴ともいえるチームが、アメリカ最大の都市に本拠地を置いている、ニューヨーク・ニックス。 通常、NBAではサラリーキャップを超過した場合、その超過分を罰金としてNBA側に支払う義務があり(※1)、これをラグジュアリー・タックスと呼ぶ。 しかし、ニックスの場合は、大都市にチームがあるが故に、サラリーキャップ超過額と同額のラグジュアリー・タックスを支払っても充分利益を見込めている。 チームが低迷しているにも関わらずだ。 2005年にアムネスティ条項(※2)にも疑問が残る。高給取りのベテランたちが次々と解雇され、彼らはラリー・オブライアン・トロフィーとチャンピオンズ・リングを求めて優勝候補のチームへ移り行く。こんなものを作り出せばサラリー・キャップを運用している意味がない。 ※1 ただし、いくつかのエクセプションが存在し、対象外となる場合もある。 ※2 各チーム1名にのみ適用されるもので、解雇したもののサラリーをサラリーキャップに計上しなくてもよいというルール。通常、NBAでは解雇した選手の契約が切れるまでの期間分のサラリーをサラリーキャップに含めなければならない。 とはいえ、NBAはサラリーキャップ導入で最も成功を収めているリーグだ。 だからといって、サラリーキャップが必ずしも素晴らしいものとはいえないし、欧州フットボールの世界に導入すべきだとは思わない。そもそも欧州フットボールは1つのリーグで成り立っているわけではないため、導入など不可能だ。 しかし、だからといってこの状態を放っておいてよいわけがない。UEFAが歯止めをかけようとしてはいるが、それがうまくいかなかった場合、選手のサラリーと移籍金はまず間違いなくさらに高騰し続けていくだろう。 現アーセナルFCのマネージャー、アーセン・ベンゲルは、「イングランド人は高い」と言い続け、プレミアの試合でスターターにイングランド人がいないことも度々ある。 現在の「主力」にイングランド人がいないといっても過言ではない。唯一、テオ・ウォルコットのみが「主力」に近いと言ってもいいかもしれないが、まだ尚早な気もする。「主力」と言うよりは、まだ「戦力」レベルだろう。 話を戻すが、もしミランが優勝した場合、その1億ユーロでロナウジーニョを取るのか、という考えが浮かばなくもない。(まだまだ続くロナウジーニョ去就問題参照) 確かに1シーズン、死力を尽くして戦ってきたクラブに対して報酬はあって然るべきだとは思う。しかし、選手やスタッフはその栄誉のために戦っているはずだし、そうあるべきだと私は考える。 どのプロスポーツの世界でも共通して言えることだが、富を得るためにオーナーに就くといったケースは防がなくてはならない。そこに肌の色や、生まれた土地などまったく関係ないし、外資系だからと買収を断る理由は正当ではない。 しかし、オーナーも「ただそのチームが好きだから」、という感情だけではオーナー職が勤まらないというのは理解に難くない。 とはいえ、ファンにとってはそういった背景が顕著に表立ってしまうと、興醒めしてしまうというのも事実だ。 プロスポーツ界があるべき姿を追い求めて、理想を追求してもいい時期ではないだろうか。今こそ岐路のときだと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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