トカトントン 2.1

01.あくまでドライブ
02.ツアーメン
03.またたびをする
04.恋のかけら
05.リー!リー!リー!
06.股旅(ジョンと)
07.遺言
08.海猫
09.手紙
10.さすらい
11.イージュー★ライダー’97

■さすらいもしないで　このまま死なねえぞ　
どんな時にこの歌詞が浸みるかというと、何かうまくいかねえな、疲れるよなぁ毎日、あーあ、明日もまたあんな事、こんな事かってうんざりするような夜なんですよね。いつかきっとさすらってやる（漢字変換すると流離うって書くんですよ）、あれも捨てて、これも捨てて。
「さすらう」って語感のなんと甘美な事よ。

■だらだらしている。やる気が見えない。何が言いたいんだかわからない。でもそれは聞いていて、決して嫌悪感を伴うものではない。考えてみれば、その逆に、しゃきっとしてて、前向きで、説教聞いているような音楽なんて、ちっとも聞きたくはないんだ。この人の曲は特別、外に向けて伝えようとする意志が感じられない。どっちかっていうと、自分に向けて書かれている。でも肝心なのはそれによって自己陶酔しているわけではないということだと思う。

■特にこの股旅というアルバムは、あきらめと安堵というような一見矛盾したような解放感に溢れているように思える。テーマは「心の旅」。同名のチューリップの曲とは真逆のリアルが大好きだ。元歌が「眠りについたキミをポケットに詰め込んでそのまま連れ去りたい」に対して、「キミが眠った隙にポケットに酒瓶入れてそのまま旅に出る」そんな感じだね。

■M5を初めて聴いた時、お、６６年くらいのBEATLESだ、しかも全部英語じゃんなんて思った。んで、よく聞くとこれは桑田佳祐を上回る見事な巻き舌日本語ソングだったのである。何度も聞いたが全部はわからん、たぶん草野球の話だろう。で、ネットをウロウロしてたら、おそらくこんな歌詞だろうってものに出会った。おまけにつけときますんで興味がある人は後で読んで下さい、傑作ですから。

■M8は名盤「FAIL BOX」に入っていてもおかしくない曲。あのアルバムのトーンを引き継いでいる。M1,M9は骨太ギターと重いリズムが初期の傑作「ハネムーン」を思わせる。strange love の根岸くんたちとのバンドの相性もすごく良い。ストーンズに聞こえなくもないくらいだ。そんでもって、M6はローハイドだし、M7はフォークルだよ。まったく節操がない。

■ラストのM11が大好きで、何度も何度も繰り返して聞いてしまう。このスピードが良い。おそらく元歌を温泉で歌うとこんなテンポになるんじゃないかと思うだるさだ。途中でコイツ寝てしまうんじゃないかと思わせるような節回しがよい。途中でコイツ死んでしまうんじゃないかと思わせるような白鳥の歌のような民生のボーカルがよい。本当にこの人、数少ない日本人ロック・ボーカリストのひとりだと思う。

おまけ

M5　リーリーリー　（ちなみに草野球ではランナーが出たら、ファーストコーチはこう言うことになっています）

あの打球スッ転んで　落球
才能がないけん知らんで　延長に突入
だんだんかわいそうに
４人が三振並んで　する普通？
その変化球変化せんで　たぶん練習中
だいたい無理だっちゅうに
くるぶしが痛げな自打球
悩みがなさげな投球
のんきが人気の草野球っつうに
運動オンチなお前が　まだまだ元気なジジイが
汗にまみれて青春かい
ところで皆仕事はいいんですかい
無理はぜったいアカンで　脱臼
夕方もう球見えんで　試合は明日で
夕日は落ちた、とうに
真剣さながら野球道　のんびり見ながら野球道
根気が本気の草野球　ほんに
普段は陰気なお前が　いかつい顔のオヤジが
すてきな顔で笑うんだ　ぼくに
すてきな顔で笑うんだ　to me to me