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カテゴリ:音楽
01.How Dare You
02.Lazy Ways 03.I Wanna Rule the World 04.I'm Mandy, Fly Me 05.Iceberg 06.Art for Art's Sake 07.Rock 'N' Roll Lullaby 08.Head Room 09.Don't Hang Up 10.Get It While You Can [*] ■あるバンドが細胞分裂して2つのバンドになって、なおかつ、両者とも充分お気に入りと言える例はこの10cc以外には考えられないんじゃないかと思う。そのバンド名を引き継いだ方の2人組はポップ路線に磨きをかけ、もう一方のふたりは実験的な音楽を極め続けた。それでも、やはり円満だった頃の4人の作品は今でもなおキラキラと輝いているように見えて心に残っているのである。 ■私にとっての10ccのベストアルバムは「How Dare You!」だ。ポップな部分とひねくれた部分の適度な共存。離れてしまった方のゴドレィ&クリームの実験的な音づくりがポップなメロディに微妙な陰影を与えて、ただの聴きやすさだけで終わらないあとひき感を作品全体にもたらせている。大雑把に言えばクイーンにXTCを混ぜたような音楽。このXTC的なスパイスこそモンティパイソン的風味でもあるのだ。 ■トータルアルバムが始まる予感に満ちたインストのM1、まさにパイソン的なM3、そして名曲M4へと移っていく音の流れ。このバンドの姿勢がタイトルにも反映しているM6、Mrファルセットって言ってもいいM7、そして極めつけはマイベストソングM9。少しの静寂の後、ポロロンポロロンとなる電話の呼び出し音、ややあって「Hello」と応える声に続き始まる強烈哀愁な歌い出し。曲は何度も上昇し下降しドラマチックな展開を聴かせて着地する。最後に流れるのはツツーツツ-という機械音。伝えるだけのことは相手に伝えた。それでも満足かといえばそうでもない。そんな虚しさ切なさが胸をいっぱいにさせる。ああ「電話を切らないで」。 ■中ジャケットも含め電話電話の洪水である。とりわけジャケットの男と女のやりとりから連想するのはなぜか、キャロル・リードの「フォロー・ミー」なのである。ミア・ファロー主演のこの映画が好きだ。彼女の夫がトポル演じる私立探偵に近頃様子がおかしい彼女の尾行を依頼する物語。家を出て彼女が向かうのは円満だった頃の自分たちの想い出の場所ばかりだったのだ。何でこの映画のミア・ファローに胸がキュンとなるのだかよくわからない。けど私の切なさのキーワードはこの映画とこの曲なんですよ。 ■本屋で「ストレンジ・ディズ」を立ち読みしていたらグレアム・グールドマンの記事があった。今年の夏に彼のバンドが来日していたんですね。ポップ組の片割れ、そうか、彼はホリーズの「バス・ストップ」の作者でもあったのですね。写真を見て、この人が昔10ccだったなんて誰も気づかないと思う。載っていたインタビューによると10cc時代、一番つらかったのは、やはり、あのふたりがバンドを去っていったことだと言っていた。そうだよな、あと2枚くらい4人でアルバム作ってくれても良かったのにな、なんて今でも私は思っている。 PS 現在手に入る版はボーナストラック(M10)つきである。でもね、このアルバムはM9で終わってこその傑作なんですよ。だから私はレコードで聴く。オートリターンじゃないから、しばらく針のプツプツという音を聞いているのもまたこの作品の余韻の味わい方なんですよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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