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カテゴリ:音楽
01. All I Want
02. My Old Man 03. Little Green 04. Carey 05. Blue 06. California 07. This Flight Tonight 08. River 09. Case of You 10. Last Time I Saw Richard ■ボブ・ディランはこれを聞いて「ブルーにこんがらがって」を書いたという。この群青色のレコードには色んなものが詰まっていて、ただ遠くで聞き流しておくにはちょっともったいない。一度聞いただけでは覚えられないメロディの流れ、オープンチューニングのギターの妙技、そして何より彼女の書く歌詞の奥深さ。 ■彼女の作品の中でも最も私小説的なものと言われる。その理由は具体的な時とか場所を表す固有名詞の登場シーンの多さからきているのだろうか。しかしよく聞くとカリフォルニアもアフリカもパリもカナダもクリスマスも68年の冬もイメージを喚起する記号のようなもので必ずしも彼女自身がその時その場所で行った数々の経験談ではない。 ■私小説を思わせるのはむしろ彼女の恋愛観の方で、弱気な男だったらジョニ・ミッチェルと付き合うことはもちろん別れ話を持ち出すなんてもってのほか、と思えてしまうような激しさ、しつこさ、執念深さを感じる。ある意味カナダの中島みゆきかもしれない。 ■夏休みのオトナの自由研究にはもってこいの名曲揃いなのだが、今日は有名なM9 「Case of You」 の話だ。このタイトルの意味をずっと”あなたの場合”だと思っていた。case はたとえば a rare case (珍しいケース)みたいな”場合”とか”事例”という意味で訳していたわけだ。で、歌詞を見てみるとそれは第3節に登場してくる。 oh you are in my blood like holy wine oh and you taste so bitter but you taste so sweet oh I could drink a case of you I could drink a case of you darling Still I'd be on my feet I'd still be on my feet あなたは私の血の中に聖なるワインのように流れている あなたはとても苦いけどとても甘い 私はそんなあなたを一箱飲める あなたを一箱飲めると思う それでも私は立っていられる 両足でちゃんと立っていられる(大意) ■a case of you は「あなた1ケース」だった。彼とうまくいかなくなった私が、とあるバーでその男を待っている。仄暗いバーの中、彼女はテレビの青い光をたよりに漫画のコースターの裏にカナダの地図を書く。そしてその上に2度、男の顔のスケッチを描くのだ。そんな歌い出しの状況の後で上のフレーズが来る。ジョニ・ミッチェルに一箱飲まれる男を想像する。やめてくれ、やめてくれ、と何度言っても芸能界一の酒豪である彼女は飲み続けるんだろう。 ■このアルバム、触れたい曲はこれだけではないが長くなるのでまたの機会に。それにしても全曲物語性に富んでいてほとんどアコースティックギターだけの伴奏ながら曲調も多彩。たしかにプリンスのリスナーも一聴の価値あり。71年の作品と聞いてまたビックリ。「逃避行」「ミンガス」あたりから入った私だが、70年代後半から徐々に遡って聞いている。 ■この曲は「Blue」以外にも「ある愛の考察」というスタンダードベストの中でオーケストラバージョンも持っているが、その曲調もまたこくがあって良い。ただし「Blue」を大きめの音で聴いていると隣の犬がよく吠える。この人のキンキン声が癒しにならないと感じる人の気持ちもわかる。そういえばその犬の名前はボブだった、というのは私の作り話なんだけどね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/08/24 12:04:54 AM
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