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テーマ:DVD映画鑑賞(13596)
カテゴリ:映画
■クロとシロの表情が時々仏像のように見える時がある。基本的には無表情なんだけど、哀れんでいるような、怒っているような、絶望しているような。それは何に対してかと言えばふたりを取り巻く世界なんだろうなって思った。
■ものを食べるシーンが極端に少ないのだが、あの子たちはいったい何を食べて大きくなっているんだろう。歯の欠けたシロがリンゴを囓る。それはそれを食すというよりは、その種子を土に埋める為にそうしているに過ぎないようにも見える。 ■猥雑で抽象的な原作の静止画がアニメーションになった時に、すごくビジュアルとして整理整頓されたように見える。動く絵として登場人物たちが表現された時、手も足もその先端が細長くデフォルメされているのを見て、なんだか誰も人間には見えなくなってくる。そもそもこの町も、この時代も、ここではないどこかに見えてしまうことは作品にとって都合が良いのか悪いのか、どっちなんだろう。 ■フルスクリーン大音量でこの映画を観たいと思った。再現された宝町の微に入り細にいる町並みを鳥の視線でもう一度体感してみたい。Plaidによる電子音楽の重低音を柔らかい椅子に座りながら感じてみたい。意識された手ブレのようなカメラワークに少し酔ってみたい。もう既に観てしまったものをもう一回観てみたいと感じさせる映画は特別な映画だと思う。 ■ビックリするくらいオリジナルに忠実に物語は進行する。ほとんどのセリフが原作からのそのままの引用。それだけスタッフはこのオリジナルに敬意を払っての映画化なんだろう。ただそれが全く異なった印象を与えるということは静止画と動画のもたらす想像力を引き出す力の違いなんだろう。 ■アメリカではR指定だそうだ。17才以下の者は成人と一緒でなければ見てはならない。原作よりもだいぶ薄まったとはいえ、その暴力描写のせいだという。香港では「悪童」というタイトルで上映されている。本当は童に見えて、彼らはオトナになる一歩手前でずっと成長を止めてしまっただけなんだけどね。 ■童の話といえば、連想したのが大友克洋の「童夢」。シロはエッちゃんの不規則変化形だったのかもしれない。空間を自由に飛び回るあの童夢的表現がこの鉄コンの中にも随所に見られた。松本大洋が大友を好きなのか、マイク監督が彼を好きなのか、おそらくどちらもそうなんだろう。 ■終盤のイタチとのせめぎ合いは目で見る14才の哲学のようだ。この部分のクロとイタチを演じる二宮君が良い。そしてシロの蒼井優の名演技。クロから引き離される際の咆哮は声優の粋を超えていた。すごいすごい。 PS ■蒼井優といえば、集英社の夏のキャンペーン「ナツイチ」。ジャケ買いしてしまいました漱石の「こころ」。内容は同じだけど、何冊持っていたって良いでしょ。実は太宰の「人間失格」まで買ってしまったんですけどね。でも合わせて600円弱なんですよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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