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カテゴリ:真田丸
■最初にハマった大河ドラマは倉本聰の「勝海舟」だった。無論その時、その歴史上の人物の事はほとんど何も知らず、彼がどんな経緯(いきさつ)で後世、史実に燦然と輝く偉業を残したのかはそのドラマと共に理解した。
■ただその中で今でも最も印象に残っているのは萩原健一演じる人斬り以蔵が大原麗子の前でぼりぼりと豆を食べながら語り合うシーンだ。それがどんな場面で彼と彼女がどんな話をしていたのか(または、していなかったのか)は全く記憶にないが、おそらくその時、その歴史上の人物がとてもリアルに人間臭く感じたということが原因だったように思う。 ■最終回前夜となった今年の大河もまた、これから先も永らく記憶に残るドラマになったことは間違いない。それはやはりそこで描かれた人物ひとりひとりが善人でも悪人でもなくひどく今も間近で呼吸をしているような人間に見えたからに他ならない。 ■三谷脚本の特徴の一つは回収の妙にあると前回の感想に書いたが、最終盤に来て、さりげなく(あるものは倍返しほどのスケールで)繰り返されたエピソードの数々を列挙してみる。 ・大泉洋が木村佳乃に対し姉上は婆さまに似てきたと言った時、彼女が左耳が聞こえないふりをする。 ・信繁に会いに出かけようとする信之を送り出すおこうが彼に身体を触られようとすると咳き込んでしまう。 ・徳川側につくように信繁を説得しようとした叔父信尹がお主の好きなように生きろとほっぺたをペチペチたたく。 ・徳川襲撃の陣割りを確認した後、信繁が五人衆に対し、「おのおの、抜かりなく!」 ・形勢いよいよ怪しく、伊達に庇護してもらうように信繁から言われた春が「泣いて見せましょうか」と言いながら人差し指でぐいぐい。 ・その伊達政宗が信繁の妻と娘たちに食べてみろと勧めるのがそんなにおいしそうには見えないずんだ餅。 ■中でも一番痛快だったのは足止めを食った徳川方の陣でたまたま出くわした室賀の息子に浴びせた逆「黙れ!小童!」。惜しくも今年度の流行語大賞の候補には漏れたが、この大河の序盤、西村雅彦会心の決めゼリフだったそのセリフを満を持して返した大泉洋の逆襲。ここにも史実を超えたドラマ的な場面作りの才を感じる。 ■そしてこれから先も何度も何度も繰り返し見てしまうことになるだろうシーンは今回の最後の5分(私は今日これまで5回見た)。「源次郎様がいない世にいてもつまらないから」もうこの時、きりは信繁が生きて大坂城に戻ることはないと悟っている。そして自分も茶々と同じようにこの城と共に消えてなくなろうと決めている。 ■彼女のそんな覚悟を悟った彼は座ったまま彼女を抱きしめるわけだが、この構図が「あまちゃん」における水口とアキちゃんの抱擁シーンに酷似している。抱きしめられて「遅い」、口を吸われながら「10年前だったら私一番きれいだったのに」と彼の胸にうずまる彼女の姿にかぶさるナレーションはいつもの死亡宣告なんかではなく、きりが春にも、たかにも、そして梅にも勝ったという勝利宣言にも聞こえた。 PS ■毎回漢字2語で表されたタイトルも最終回のそれは無題として封印されてしまったようだ。またしても三谷のしたり顔が目に浮かぶのであるが、この一年の毎日曜日の感謝の気持ちを込めて「満足」という2字を送ろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016/12/11 09:38:51 PM
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