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TOLEDOの部屋

TOLEDOの部屋

銀の河・金の河1

(ナレーター)天に輝く天の川は、アイヌの伝説で石狩川が
        天に映ったものだと言われています。
【第1場 道路】
(子供1) あ。犬だ。(エツ子を指さす)
(子供2) あ。ほんとだ。犬だ。(同じように指さす)
(エツ子) え?どこに犬がいるの?犬はどこなの?
(子供3) おまえだよ。おまえが犬なんだよ。
(エツ子) どうして、私が犬なの?私は犬なんかではないわ。
(子供1) だって、おまえアイヌだろ。アイヌだから、
      「あ、イヌ」って言ったのさ。
(子供2) アイヌは人間じゃないのさ。
(テルオ) (舞台に現れ、だまってみている。)
(エツ子) 私は、人間よ。犬なんかではないわ。
(子供3) 何言ってるんだ。こいつ。犬だから、
      人間の言葉がわからないんだな。
(子供2)  こんな変な犬なんか、ほっといて、さあいくべ。
(子供1) そうだな。ほっとこ。こんな犬。
(子供2) イヌー。イヌー。
(子供3) イーヌが鳴くからか~えろ。
(エツ子) 私は、犬なんかじゃないわ。私は、姿も言葉も人間よ。
      私が、何をしたっていうの。わたしは、確かにアイヌだわ。
      だけど、アイヌが何をしたっていうの。アイヌは人間よ。
      だって、「アイヌ」は「人間」ということなんだもん。
(テルオ) ほ。君は、アイヌのことにくわしいなあ。
(エツ子) 私のおじいちゃんは、純粋なアイヌよ。おじいちゃんは、
      アイヌ語を話せる数少ないアイヌなの。おじいちゃんに
      アイヌのことを教わったわ。アイヌとは誇り高い人間のこと。
      悪い人間は、アイヌとは言わないこともね。その人間である
      アイヌに人権はないの。毎日、「犬・犬」と言われて、
      「アイヌのくせに。」って言われて、馬鹿にされるのよ。
(テルオ) それは、いいことを聞かせてもらったなあ。そうだね。
      アイヌ民族は、自然と共に生きたすばらしい民族だね。
(エツ子) おじさんは、見たところアイヌではないわ。なのに、なぜ
      アイヌの味方をするの?
(テルオ) アイヌの味方というわけではないけどね、ただねえ、正し
      いことは正しいものねえ。君に、いいことを教えてもらっ
      た。そのお礼に、ぼくの友達の話をしよう。その友達の名
      は・・・・・。

【場面2 河】
(母)   ヘナウケ。ヘナウケ。・・・・ヘナウケ。
      おお!ここで、漁をしていたんだね。
(ヘナウケ) おっかあ。今年は、鮭があがってこないんだ。
      見ろよ。この川の汚れを。ヘドロで川が汚れている。
      いつもは、鮭の肌で川が銀色になるほどなんだが・・・。
(母)   きっと、上流の砂金とりのせいさ。三年前、上流で砂金
      とりが始まって、鮭が年々減っている。それに、和人が入
      ってきて、へんな病気もはやり出した。
      ヘナウケ。おまえのお兄さんも、砂金とりに連れて行かれ
      て、病気になって帰ってきた。それも、片腕を失い、目も
      見えなくなっていた。・・・・
      その上、とうとう、三日目にな亡くなって・・・・。
      なんて、ひどいことをするんだ!和人め!
(ヘナウケ) おっかあ、もうやめれ。和人にきかれたら、またひどい
      めにあうぞ。
      おとうも、和人の悪口をいったばかりに命を落としたじゃな
      いか。
(母)   そうじゃな、ヘナウケ。おまえだけがたよりじゃ。
      もし、おまえもへんなことになったら、わしも生きてはおれ
      ない。
      ヘナウケ。気をつけるんじゃぞう。
(ヘナウケ)おっかあ。また縁起でもないことを言うもんじゃない。
      ほうれ。鮭がとれたぞ。今日も、三匹じゃ。


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