タイムカプセル ~みんなと共に~

大切な彼 - thank you -

大切な彼 ~いつもありがとう~



私が乳がんの告知をうけたのは、彼と付き合ってから半年目のことだった。
最初はずっと隠していようって思っていたけど、その日の夜に検査結果で悪性と言われた事を伝えた。
私は、病気の事で彼が私に別れを言って去っていっても仕方ないと思っていた。あの時の私は死の恐怖にもとらわれていたし...。
「こんな辛い目に遭うなら生まれてこなけりゃ良かった」って泣きながら言っていた。
彼は、「トマトっていう人間に生まれてきて良かったって思えた方が良いだろう。悪いことばっかり考えてもしようがない。」と言って私をしかった。
そして、それからも彼は今までと変わることはなかった。
しばらくの間、私の中では別れた方が彼の為ではないかという葛藤があり苦しんだ。

ゆびわ

クリスマスに指輪をもらった。
クリスマスの1週間前に1回目のCEFをしたがまだ脱毛は始まっていなかったので自毛でクリスマスを過ごせた事は嬉しかった。
年明けに会った時は、カツラ。
彼は私を見て「どうせ被るんだったらもっと若々しいのにすればいいのに」と言っていた。
悲観的な事は何一つ言わなかったので私の心はいつも軽かった。
術前治療中も副作用が出ていない時は、よく週末デートをして楽しんだ。
私はカツラだったから帽子は必須アイテムになっていて、絶対にお店でも帽子はとらなかった。

術前治療が終わっていよいよ手術。
私は術前治療の効果があって、温存できることになった。彼にその事を伝えると喜んでくれた。
告知されたばかりの時に、「もしかしたら、私胸が1つになるってしまうかも」って言った時に「別にもう1つあれば良いじゃん」って返事をされて逆に戸惑ってしまったことがあった。

入院中も手術日以外は連絡を取り合って、とても元気をもらった。
退院すると、成田ヒルトンに一泊お部屋をとってくれた。
成田山にも2人でお参りに行った。彼に手術の傷をみせたけど、別に気にしてないようだった。
実は手術して間もない頃、私の乳首は没落していて、そのことで凹んでいた。(今は元に戻っている。)
その後、放射線治療を終え、北海道旅行に2人で行って楽しんだ。
そこで始めてカツラをとった時は、一瞬彼も驚いた様だった。温泉もあるホテルに泊まった時は、温泉をすすめられたけどさすがにカツラでは行けなかった。

年末年始に中国旅行に行った時、彼から仕事の事を聞かれた。
年が明けたら休職中の会社に復帰するのかと聞かれたのだ。私は、休職中の会社に復帰するかは悩んでいた。
以前、彼から1度だけ「俺の希望としては、早く今までどおり仕事をしているトマトでいて欲しい」と言われた。
本当はずっと早く元の生活に戻る事を彼が希望している事はわかりきっていたが、「3月までに結論を出すつもり」とだけ答えた。
彼はいつも私の生き方を否定することはない。自分の好きなように生きれば良いと言っている。
だから、3月に派遣登録会に行くことも反対はしなかったし、会社を辞める事を反対もしなかった。

ここまで、いろいろと書いたが、病気の事で彼と言い争いになった事は1度もない。
私が告知されたばかりの頃、乳がんの患者会で活躍されているUさんに「トマトさんの彼があなたを受け入れても、彼のご両親があなたを受け入れてはくれないかもしれない」って言われた。確か、告知をされて1週間目くらいだった。ちょうど、うずさんと出合った頃と同じ頃だ。
確かに、Uさんの言われていることは正しいと思う。
ある人には、「乳がんになった事でトマトさんの価値は下がりましたね」って言われた事もあった。これも否定はしない。
でも、これからの人生も彼と一緒に歩いて行きたいっていうのが私の正直な思いである。
告知された時、自分の気持ちに無理に蓋をしていたら一生後悔したかも知れないって思う。
今、私に出来ることは自分の気持ちに正直に生きる事だと思う。

私は、奥さんを2年前に乳がんで亡くされた旦那さんからメールを頂いた事がある。
その方の奥さんも若くして乳がんになられたのだ。
今は、お子さんと2人で父子家庭だが幸せに暮らしている。
人間はどんなに辛い事があっても幸せをみつけて生きていける。だから私だって、乳がんに立ち向かえたのだ。

乳がんという病気になったことは不運以外の何ものでもない。
けれど、その事が原因で私のこれからの人生を不幸にしたくないと思う。

そして思う事がある...。
母にも言われたが、「トマトとこーたんが逆の立場だったら、トマトはこーたんを見捨てていた」と、「でも、それが当たり前のこと」だと。
「だから、トマトを見捨てなかったこーたんはスゴイ」って。
逆の立場だったら、私はこーたんと同じ事が出来たかは疑問である。母の言うとおりだと思うのだ。私は、見捨てたかも...って。
乳がんを通して、本当にこーたんには人間の優しさを教えてもらったと思う。
だから、これからの人生すこしずつでもこーたんに優しさのお返しができたらと思っている。




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