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梨華は雪降る、大通り公園を歩いていた。あれこれと、思いめぐらし ながら。毎年2月初めになると、札幌では雪と氷の祭典が開催され、 日本全国や海外から200万人を越える、観光客が訪れる。 香ばしい匂いが、冷気の中に漂っていた。 選んだ。第二番は、ショパンの故郷であるワルシャワへの、告別と 飛翔の意味が込められていると言われている。ロマンチックな情念と 創意に溢れる第二番と比較し、この一番の方が構成を重視した作りで、 スケールも大きいことから、梨華の好きな作品の一つになっていた。
恒に演奏中に、感じられたのだった。特に、第二楽章の前半に、山を 持っていきたかったのに、尾高は後半部へ楽団の演奏を導いていき、 曲の解釈に根本的な違いがあった。 スタンデイングオベイションによる拍手も、梨華にとっては、何の意味も なさなかった。
赤いネオンに彩られ降る雪が、20数年前のおぞましい記憶を、梨華に 蘇らせた。父が母を殺害し、そしてその父も、その場で自殺したという。
冴子の叔母夫婦には子供がないこともあり、梨華は彼等に引き取られ、 札幌で育てられることになった。両親の衝撃的な死を、眼前で見せつけ られた梨華は、その精神的ショックから他者とのかかわり合いを 一切拒み、無感情・寡黙という自閉症のような、幼少期を過ごした。 人々との感情的な交流を避け、自己中心的な考え、そして時々被害 妄想に襲われる幼い梨華に、叔母夫婦は長らく心を痛めていた。
そんな孤独な梨華の心を、なんとかして開かせようと。。。 ある時叔母は梨華をピアノ教室に通わせ、それ以来鍵盤と梨華の 対話が始まった。冴子の遺伝子を引き継いだのか、梨華のピアノに 対する才能は、年と共に急速に開花していった。特に、楽譜から 曲想を考え、そしてそれを独自の速さ、強さ、そして音色で表現する 感性が、常人とは全く違っていた。 コンクールに応募し、史上最年少で梨華は優勝の栄誉を得た。 同コンクールは、エリザベート王妃国際音楽コンクール、チャイコフスキー 国際コンクールと並び、世界三大コンクールの一つで、国際的 ピアニストへの登竜門である。
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備考 : この作品は、10月 3日~19日まで掲載され、皆さまより 大絶賛・大好評だった( と、作者は自画自賛。あはっ。。 ) ラブ・ロマンス< 奈落の恋 >の第二部として、書かれた ものです。 第一部のヒロイン冴子の子供達が、どのような生きざまを おくったのか?、さあ~~、皆様想像力を働かせながら、 どうぞお楽しみくださいませませ。。。。
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