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私を変えたきっかけ、働く青少年宛のメッセージとして皇子が書き下ろし、 そして文部科学省、厚生労働省より、推薦を受けたものがこれ・・・
===== 昨年 6月、通算 18年間単身での東北勤務、いわゆる< みちのく一人旅 >を終え、 東京に戻ることが出来た。そして、憧れの自由人としての生活に。年金生活だから 昔のようなお金の自由はないが、今は有り余るほどの時間がある。規則に縛られず、 気ままな一日を過ごすことが出来るのが、何よりも嬉しい。
長かった会社人間としての生活を、懐かしさもこめ今振り返ってみると、やはりこの 東北勤務が私を変えた大きなきっかけ、となった事には間違いない。
ある日、私は上司より突然、盛岡支店勤務の打診を受けた。 入社以来、輸出・三国・輸入・開発と、商社としての基本業務に携わりながら、国内 取引にそれまでかかわる事はなかった。それが、何故今更国内取引なのか?それも、 東北の盛岡なのか?私にとって、それはある意味では、左遷に近いような話であり、 即断で承服出来るものではなかった。
会社を辞める事まで考え悩んだ末に、父の ( このリストラの世の中、仕事があるだけでもいいじゃないか!岩手県の八幡平は、 紅葉がとても綺麗な処だから、遊びに行ってみたい。 ) という言葉に諭され、赴任を決意したのだった。
親不孝を重ねてきた私にとって、親孝行が出来るいい機会になるかと思った。しかし、 その父も盛岡に赴任後 3日目に急逝し、親孝行をする機会は永久に奪われてしまった のだが。
( 悠愛さん悪いけんどもよ、そんな仕事の仕方では、ここは通用しね~だ。 ) 笑いながら、ある得意先の専務が、そう言った。 これまでは、ビジネスライクで仕事の話に直ぐ入る、そしてあくまでビジネス・トーク 中心の、顧客との対話であった。
彼がいわく、商売とは人との関わりの中で成立するもの、相手の心を捉えることが まず第一。だからどんないい商品をもっていても、客先の信頼を得ない限り、商売など なりたたないのだと。
( 郷に入ったら、郷に従え ) 国内取引のみならず、確かに商売の原点はそんなところにも、あるのかもしれない。 それ以来、 ( 毎度、お世話さまで~~す!! ) という挨拶から始まり、相手の趣味、時候の話題、家族の話など、いわゆるよもやま 話から、会話を始めるようにした。
ゴルフが好きな人、文学が好きな人、音楽が好きな人、政治が好きな人、それぞれ 人の趣味は千差万別。すべての話に応じる為には、自分の引き出しを多く持って いなくてはならない。そして仕事の話は最後の十分間。
酒の力を借り、日々の憂さを晴らす酒席など、元来が下戸の私は大嫌いなので、 そのような機会はなるべく欠席してきた。しかし、国内取引に関与するようになり、 酒席やゴルフなどにも、努めて参加するようにした。やがて客先との信頼関係が 構築されると、こちらがくどくど説明しなくても、 ( 悠愛さんがもってきた話であれば、のりましょう!! ) と、商談はいとも簡単に纏まるようになった。
盛岡支店勤務を契機に、郡山・仙台・そして郡山と、東北勤務が知らない間に、通算 18年にもなってしまった。しかしこの間、客先の信頼を得ることが先決という、 日々の接触をまず大事にするという姿勢は、恒に変わらなかった。その意味で、私を 変えた大きなきっかけは、東北勤務といっても過言では、ないかもしれない。
先日、中学校のクラス会に、卒業以来参加した。 髪が薄くなり、歯も欠けてはいるが、昔の面影を目元にわずかに残している同級生 たちが、 ( 悠愛は、昔鼻もちならぬ、いやなやつだったのが、随分と変わったものだ! ) と。 これは褒められたのだろうか? それとも、けなされたのだろうか?
== 平成24年度 勤労青少年の日 エッセイコンテスト 入選作品集より ==
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