カテゴリ:カテゴリ未分類
全国学力テストの結果が発表された.学校の決まりや規則を守る規範意識の高い子どもの方が正答率が高かった,と文部科学省は言っているらしい.
いろいろ疑問に思うことはある.「規則を守る」をどういう尺度で計ったのだろう? 「正答率」に影響しうる他の要因(家庭の収入とか)を考慮しても,なおかつ「規則を守る」という日常行動と「正答率」の間に有意の相関があったということだろうか? まあ統計のプロがやっている事だろうから,その辺は抜かりないのかもしれません.しかし「規則を守る」=「規範意識が高い」という言い換えは,どう考えても統計学が言及できる限界を逸脱しています. そういうわけで今回は,「規則を守る」子供について書いてみます.学力テストと関係があるかどうかは,私もよくわかりません. 昔の話です.ある小学校では生徒が廊下を走るので困っていた.業を煮やした校長先生が廊下に天井から植木鉢をたくさん吊り下げた.すると走ったら鉢に頭をぶつけてしまうから,子供は廊下を走らなくなったそうです.こうして「廊下を走らない」という規則はみごとに守られるようになった. これも昔の話です.スキナー箱というものがありました.その箱にネズミを入れる.箱の中にレバーがあって,ランプが点灯しているときにレバーを押すと餌が出る.点灯してないときに押しても何も出ない.餌という「報酬」を「罰」(電気ショックなど)に置きかえたり,いろいろ応用が可能です.とにかく,そういう装置を使って「正しい」行動が増える,または「誤った」行動が減る様子をグラフにする.いわゆる「学習曲線」です. そう,こういうのを「学習」(learning)というんです.こういう研究分野は「動物の行動」(animal behavior)あるいは「心理学」(psychology)と呼ばれました.この「心理学」は当時の教育学に大きな影響を与えたそうです. ある人が当時の状況を「ハメルンの笛吹き」に例えたマンガで揶揄したそうです.「ハメルンの笛吹き」は中世ドイツのお話.ネズミの大発生に悩まされていたハメルンの町に,まだら模様の服を着た男がやって来て笛を吹いて歩いたら,町中のネズミが集まって男について行って,川に飛び込んで大量死した・・・ 楽しく悲しく不思議な,私も大好きな物語です. で,マンガのほうはその逆.先頭で笛を吹いているのはネズミです.後に続く行列は心理学者,教育学者,教師に生徒.みんなネズミについて行って,みんな一緒に川に飛び込み溺れてしまう・・・ 「学習」という生物学用語は,人間を教育する場合の「学習」と同じではありません.ネズミの学習実験で得られた知識は,犬や馬を訓練する場面には応用できるかもしれません.しかし人間を教育する話ではない,と私は思います. 「報酬」と「罰」だけで人間がコントロールできるでしょうか.「報酬」と「罰」だけでコントロールされている「人間」がいたとしたら,私は恐ろしいと思います. 自分の頭で考え,判断し,行動する.そういう人間を育てることこそが「教育」でしょう.それは報酬と罰で規則を守らせる「しつけ」(犬や馬の)とは,ずいぶん違ったものでないでしょうか. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|