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晴耕雨読さんの記事にトラックバックをかけたところ,お返しのトラックバックを頂いた.「 相互信頼こそが、長期的に考えればもっとも安定的な生き残り戦略 」だという記事である.この出典をたどってみたが,うまく到達できない.その昔,www とはWorld Wide Waiting だと冗談で言っていたが,わがやのパソコンは今もそのwaiting を律儀に実践しているので,たどる作業は苦手です.
おりしもアルバイシンの丘さんのブログでリチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」が話題になった.今日はそのあたりの事を書いてみます.テーマは「なぜウソをついてはいけないか?」 社会契約論というものがある.社会は約束によってできている.少なくとも人間社会はタテマエ上そうだろう.しかし一般に動物が集まって社会をつくるとき,「こうしましょう」と約束をするわけではない.基本的には利己的な個体が,利己的な動機で集まったものが動物(たぶん人間も)の社会である.同様に,利己的な遺伝子が集まって,生物体という「協調的な全体」を形づくっている.いずれにせよ,利己的な主体が集まって,なぜ協調的な全体が生じるのかという問題が生じる. じつは,この問題を扱った良質の論評がある.マット・リドレー「徳の起源」(翔泳社,2000年)である.リドレーは集団遺伝学者(だと思う).前著「赤の女王」とともに,たいへん示唆的な内容になっている.が,ここでは時間を少しさかのぼる. 利己的な主体が集まったとき,最良の方法が「ウソをつかない」こと,つまり「イワンの馬鹿」戦略だとしたら,なぜ皆その戦略を採用しないのだろう.何もしなくても皆が正直者になるのだとすれば,「ウソをついてはいけない」などというルールも教育も必要でなくなるわけだけど・・・ 私が知っているのは,晴耕雨読さんと同じ,「しっぺ返し戦略」こそ最強の戦略という話で,これはパウンドストーン「囚人のジレンマ」(青土社,1995年)という本で読んだ.この出版以後も,同じような実験がさまざまに行われたことだろうから,そういう実験の1つで「イワンの馬鹿」戦略が「最も安定」という結果が出たのかもしれない.ただし,「最も安定」と「最強」とがイコールなのかどうかは,私は知りません. 人間はウソをつくことによって進化してきた,と私は考えている.それはウソをつくことが有利であった(より大きな reproductive success に結びついていた)からだ.少なくとも短期的には,「ウソつき」戦略は有利だった.だからこそウソをつく能力も性向も,人間の遺伝子に組み込まれている.正直者こそ「長期的には安定」という実験結果?は,この現実と矛盾している. そもそも,構成員の全員が正直者であるというような共同体は,実現可能なのだろうか? 「長期的な安定」が実現するには,短期的な不利をしのぎ切ることが必要になる.生物学者がいつも言うとおり,明後日(あさって)は明るいかもしれない.しかし今日を生き残らねば明日はない.明日がなければ,もちろん明後日はない. なぜウソをついてはいけないか? その答は生物学やゲーム理論の中にはないと思う.最も単純な答こそが,たぶん正解なのだろう.社会(共同体)は約束によってできている.そして,ウソを放置すれば共同体そのものが成り立たなくなる.だからウソを野放しにしないように,人為的なルールが必要なのだ. 「人を殺してはいけない」というルールも,たぶん同じような理由によっているのだろう.しかし話が長くなるので,今回はここで終ります.
この問題,大変面白い.私も早雲さんの記事を見たときは首を傾げました.私の無責任な直感(直勘)では記事中の『最も安定」と「最強」とがイコールなのかどうか』というあたりにヒントがありそうな気がしています.考えてみれば,みんな正直だったら安定するのは当たり前ではないでしょうか.しかし,大自然はそうとは限りません.つまり,シミュレーション自体,自然とは無関係の人工物世界で遊んだだけの結果ではないか,と思えるのです.今のところ.
もう少し書く材料が増えたら記事にしてみたいのですけどね.(November 16, 2007 16:41:10)
コメントありがとうございます.「イワンの馬鹿」戦略のお話は出典を調べてないので,私は何も知らないくせに感想を述べているだけです.
ゲームの理論の立場からいろいろ行なわれている実験については,ご指摘のような限界はあると思います.(November 16, 2007 23:12:35) │<< 前へ │次へ >> │一覧 │コメントを書く │ 一番上に戻る │ |