高知に自然史博物館を

　日本人は自分の頭で考える機会を奪われている，という話を以前書いた．
http://plaza.rakuten.co.jp/tosana/diary/201012240000/
その中で，「一旦停止」という交通ルールに言及した．交通の状況にかからわず何が何でも一旦停止というルールは不合理である．
　同じことが赤信号についても言える．深夜，人もクルマも何もない交差点で，赤信号でじっと停車していることの不合理は，説明するまでもないと思う．クルマの運転者は自分の判断ではなく，あくまで信号に従うことを求められる，というのが日本のルールである．これまた日本人から「自主性」を奪うルールである．
　しかし交差点に信号機がなかったらどうなるか？　信号機なしの交差点は可能だろうか？

　可能です．それがラウンドアバウト，いわゆるロータリー式交差点だ．たとえばクルマで右折するとき，日本のルールでは交差点の中心のすぐ内側を通って進む．ロータリー式（ラウンドアバウト）の場合は，交差点の中心の外側を通って進む．交差点に進入しようとするクルマは，すでに交差点内にいるクルマがいたら，その進路を邪魔しないように「道を譲る」のがルールである．
　英国の交通事故の半分くらいはラウンドアバウト内で起こっているという話を聞いたことがある．それでも英国人はラウンドアバウトを捨てないだろう．むしろ日本でも，交差点の信号機を取り去って，ラウウンドアバウト式にすることを提案したい．まず少数の交差点で試験的に実施してみてはどうだろうか．

　信号式交差点の1つの欠点を上記したが，その他の欠点として，直進車の絶対優先というルールが挙げられる．右折しようとするクルマは，対向の直進車が途切れるまで待ち続けねばならない．右折車のほうが先に交差点に入っているのに，である．これは不公平である．
　対向の直進車が連なっている場合には，結局は信号が変わるまで待つ．変りぎわに突っ込んでくる直進車もいて危険である．しかし，のろまな右折車がいたら，その後続車は赤信号で止められる．道が狭い場合，右折しようとする1台のクルマが後続車の流れを完全にせき止めてしまうこともある．
　信号機は電気を食うからエコでない．この点は信号機がLEDのものに変えられつつあるので，かなり改善されるかもしれない．しかし信号機を付け替える工事費はどうするのだろう．
　さらに言うならば，田舎から「暗い夜」がなくなっている．星空が見えづらくなり，植物の開花結実や昆虫の行動にも影響するかもしれない．信号機は景観上も良くない．

　ラウンドアバウトの長所は，信号機の欠点の裏返しである．まず信号機そのものが不要となる．よってエコであり景観上も問題が少ない．無意味な信号待ちも不要．直進，右折，左折を問わず，先にラウンドアバウト内に入ったクルマが優先であるから，フェアである．「先に来たものが優先」という原則が守られる．
　もう1つの長所として，ラウンドアバウトは単純な十字路だけでなく，多数の道路が合流している複雑な交差点にも対応できることが指摘される．こういう場合に信号機式だと，複雑な信号機を設置せねばならず，そのぶん信号待ちが長くなる．
　そしてラウンドアバウト式では，問答無用で停止する必要がなくなる．つまり減速だけで良いか一旦停車が必要かの判断は，運転者に委ねられる．自主性が尊重される．

　公平のため，ラウンドアバウトの欠点もあげておこう．日本の場合，2台のクルマが交差点に同時に入ったら，「左側」にいるクルマが優先される．これは合理的なルールである．ところがラウンドアバウトでは，このルールが適用できない．つまり，今からラウンドアバウトに入ろうとするクルマは，すでにラウンドアバウト内にいるクルマの進行を妨げてはいけない．後者は前者の「右側から」進んで来る．つまり「左が優先」の原則が，この時ばかりは「右が優先」となる．ただ，これが混乱を招くかというと，実際はそうでもない．
　ラウンドアバウトのもう1つの欠点は，交差点が処理できるクルマの台数に上限があるということだ．クルマが多いと，ラウンドアバウト内のクルマが連らなってしまって，新たにラウンドアバウトに進入しようとするクルマが立ち往生する可能性もある．これは可能性であって，そういう実例があるかどうか私は知らない．

　そういう訳で，交差点の一部をラウンドアバウト式に変えて，試験的にやってみてはどうだろうか．