音無桜
風のない午前の柔らかな日差し満開の桜の下に音もなく花びらが一枚ずつ落ちるそこにいるのは二種類の鳥と何種類かの虫と人間がひとりあちらこちらの校舎ではそろそろ入学式が終わる頃ここが神様の庭であることを思い出した僕は舞い落ちる花びらを追いかけ始めるお賽銭の代わりにしようと手ぶらでふらりと訪れただけの僕に持ち合わせなどあるはずもなく蝶を追う猫のようにあっちで一枚ひらひら風がそよいで二枚ちらちら結局は飽きる早さも猫並みに落ちてる花びらを一枚拾う大丈夫 神様はこれくらいじゃガタガタ言わないなんて既に正しいお賽銭じゃないことを許してもらっているくせに偉そうに広げた手のひらに薄ピンクの花びらが一枚そっと息を吹きかけて格子の向こうに飛んでいくありがとうあの日からずっと僕は幸せできるならこの花びら一枚分でもあの人を幸せにしてあげられますように風のない午前神様の部屋に舞い込んだ桜の花びらには少し爪あとが付いてお気に召したらクリックプリーズ→