BS2 昭和演劇大全「劇団300 夢坂下って雨が降る」
1982年小劇場で上演された、渡辺えり子さん主宰「劇団300(さんじゅうまる)」のお芝居。劇団300は、渡辺えりさんの他に、もたいまさこさん、豊川悦司さんを輩出した劇団だったかと思います。 渡辺さんが当時書いた戯曲を、何点か読んだことがあって、映像でも、再上演でも、何とか見てみたいと思っていました。特に、岸田戯曲賞をとった「ゲゲゲのゲ」は、面白い上、戯曲を読む限りでは、舞台では難しいだろうに、どうやって表現したんだろう?って思わせるところも多く、気になっています。しかし、DVD発売などもされていないし、TVでも滅多に流れないだろうし…。しかし、今日BSで、初めて300の芝居をみることができました。この「夢坂下って、雨が降る」も、おそらく読んだはずですが、あまり覚えていません(汗)。私が読んだものは、大体異なる空間が、最初は別のものなんだけど、途中で関連して、交差して絡んで終わっていく、という構成が多くて、これもそういったつくりでした。 放映前に、女優の高泉淳子さんと演劇・歌舞伎評論家の渡辺保さんが、紹介と対談をしており、高泉さんは「面白いけど訳がわからなかった、これはTVみている方も、真剣にみず、何かしながらぼんやりみるのがいいかもしれない」と、言い渡辺保さんは「分からないことはなかった」「異なるようにみえたものが、最後全て関連しているのが素晴らしい」「押し入れ内が、開くたびに変化しているなど、小さい劇場なのに、美術も相当こっているから、むしろ細かくみてほしい」と(うろ覚え)別のことを言っていたのが、面白かったです。 一つの舞台で別々のことが起こっていても、違和感がない。考えたら、辻褄があわないようなことでも、「ああそうか」と納得してしまうように、できていて、感覚にぴたりぴたり、と当てはまるところがありました。そうやって訳分からないとは思わず見られたので、舞台上で紳士が「訳がわからなくなってきたところで終わりにします」と、客が分からないと決め付けて、突然終了を告げたのと、あとこの芝居のいわんとしたかったことなどを断定していたのが、ちょっと後味悪くおもいつつ。全体的には、分からないどころか、とても面白かったです。終わり方は、いいと思わないけど、出だしから中盤はとても面白く、こんな芝居をどんどん観られた人たちが羨ましい。話も演出も、美術も、役者さんも、よくって、特に渡辺さんの演出、松野さんの美術、すごい。戯曲の時点で既に立体感があるのが、舞台だとさらに。パズルのようにきれい。 押し入れ内の変化も確かに小さなことまで、凝っている。さっきまで古くさい布団が何枚も入っていたのに、次の瞬間には、片付ける音などもなかったのに何も入ってなくて、代わりにティンカーベル(でかいので、宇宙人かと思った)が入っている…など。舞台上のもたいまさこさんって、初めて見ました。ドラマや映画だとスローな役柄が多いので、早口早動作のもたいさんって新鮮。見た目は、四半世紀前なのに、あまり変わりがないようにみえます。当時から、ちょっとした動作でお客さんが笑う目立つ存在だったのですね。「ゲゲゲのゲ」も、放映前の対談時に、一瞬流れていましたが、見せてほしいです。他の作品もシリーズとして、どんどん流れないでしょうか。戯曲を読んで、他にみたいのは、故如月小春さん作、劇団綺畸「家、世の果ての・・・ 」「ロミオとフリージアのある食卓 」など。「家、世の果ての・・・」は「ゲゲゲのゲ」と並んで、すっごく面白かったので、本気でみたい。