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サイエンスZEROでヒトの謎に迫るため,実験で解き明かす心に潜む仕組みを紹介していました。
社会心理学者である北海道大学大学院文学研究科の山岸俊男氏によると,「人とは協力するサルである」といいます。 1.情けは人のためならず 独裁者ゲーム:初めて会った8人のうち,4人が独裁者としてお金900円を渡される。ペアとなる相手にいくらを渡してもいい。 その金額に人の心が表れます。 自分の利益のみを考えれば900円を自分のものにするはずですが,均等に分けた人は3人,相手に300円渡した人は1人だったそうです。 分けられる人の気持ちが配慮されます。 230人のうち半分ずつに分けた人は52.1%だったそうです。 そうした気配りの理由を探るため,実験に工夫をしかけます。 AとBに適当にグループ分けをして,独裁者を選び,ほかのグループの受け手に分ける場合は均等に分ける人は40%,同じグループ受け手には66%が均等に分けます。 これは単なる仲間意識ではなく,グループが手がかりになって,グループ用の心のスイッチが入るそうです。 さらに,独裁者と同じグループだと受け手が知っているか知らないかだけで,独裁者の判断は大きく変わります。 受け手が独裁者と同じグループだと知っていれば独裁者は均等に分けようとします。 こうした利他行動の解明によって,心のうちのほんの一部しか人間は意識していないことが分かります。 2.心は進化の結果である 心は外界の情報を受け取って,何をするかにかかわるプロセスの部分にかかわります。 人の脳の進化の原動力になったものは,大脳の中の大脳新皮質(脳の8割)です。 何のためにこれほど大きくなったのか,その仮説の一つは,集団の大きさに関係しています。 集団の中の複雑になる社会関係(人づきあい)を処理するために新皮質を発達させてきたというものです。 これによって三項関係(相手の目を見て同じモノを見ていると確認できること)が可能になるといいます。 これは毛づくろいをするサルには見られない人間だけがもつ特徴だそうです。 これがないと共通の目的に向かって協力し合うことがないそうです。 こうした協力は進化の重要なキーワードです。 協力行動を示すためのゲーム理論があります。 AとBが500円をもっていて,AはBに500円を渡せば,実験者から500円を足して1000円がBに入ります。 BはAに500円を渡せば,実験者から500円を足して1000円がAに入ります。 AとBそれぞれの立場からすれば,自分のお金を渡さないで相手からお金を得られれば,1500円が入ります。 お互いにお金を渡しあえば(協力行動),1000円が両者に入ります。 実験の結果,1000円を得る行動が多くみられたとのことで,その方が満足度も高かったそうです。 3.人の目を養うためには あるテーマについて討論の後,1000円の謝礼金のうち100円を討論の相手に提供するか,巻き上げるかを判断します。 お互いに提供し合えば,実験者から100円を足して1100円ずつ入ります。 奪い合えば,お互いに900円ずつになります。 そして相手がどのような行動をとるかあらかじめ予想します。 そうすると,的中率と相手への信頼度との間に相関があります。 相手を信頼する人は,とりあえず付き合ってみて,危ない人にだまされながらも,信頼に足る人を見抜く力を養っていくといいます。 日本はアメリカに比べて,人のことは信じられる,あるいは他人の役に立とうと思っていると考える人の割合が低かったそうです。 これまでの日本は安心できる社会でした。 実は,評判が機能している社会では安心できるが,評判が機能しない社会になると途端に他人を信頼できなくなるということを示しています。 グローバル化の中で,日本型の社会が崩れ,他人への信頼が失われつつあるかもしれません。 社会全体の透明性を高めて,仕組みが見えるようにしていれば,多少のリスクを取ろうとする行動が出てくるのではないか。 「人とは協力するサルである」 協力した方が自分のためになるということです。 それこそが進化の結果であり,人間性でもあります。 そのための制度づくりが必要です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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