国富消尽楽天ブックス
いまアメリカは11月の大統領選挙に向け、民主、共和両党はその予備選が佳境に入っている。先にふれたように、米国自体の選挙での政策は国内問題、きわめて内向きの政策、公約が主で、自国の安全保障以外はそう外交問題が大きく据えられることはないし、選挙民の関心もきわめて薄い。しかし逆に、日本にとってはアメリカとの関係が自国の政策に、経済や構造改革など国内問題、更に外交、安全保障、すべてに大きな影響を好むと好まざるとに拘わらず受けざるを得ない。日米同盟の強いバックがあることが当然の前提としている、それをどう批判しようとも。現実的にこの覇権国のユニラテラリズムは、いろいろ経済、財政他、困難な問題が生じても、大局的には揺るぎないものである、少なくても今世紀前半は。
近刊の本を2冊、いつものルートで購った。
岡崎久彦・中西輝政『国家の叡智』(ビジネス社)は、前安倍政権の外交、国際政治の共に強力なブレーンであり、その政治的リーダーシップに期待し、その問題にどう取り組めばよいのかを論じ合った本である。日米同盟をより強固に、集団自衛権の行使は不可欠で、憲法改正も政治日程に入り、その戦後の負の遺産を清算すべきと説く。中国の軍事大国化や北朝鮮の核脅威に対抗するためにも、非核3原則ではなく、少なくても一時的な持ち込み、領海内通過を容認すべきだと訴える。文明論的見地からも、日本はアジア的ではないし、克服すべき問題はあっても、この同盟を礎にソフト面でも世界を席巻していくと予想する。保守主義の主流の考えであり、問題を先送りしない論理の整合性を示している。強力な対抗馬は西尾幹二のグループになった。
吉川元忠・関岡英之『国富消尽』(PHP研究所)は、アメリカから押しつけられる、彼らの利益にかなう「改革」路線の欺瞞を先に(昨年3月の「ああ読書、また読書 03202007」)紹介したように、口を極めて非難、批判した本である。保守主義の大家・西尾幹二も「狂気」だと斬りつけ、刺客候補を立てられた反郵政改革派の自民党議員の選挙応援までした。ワンフレーズポリティックスの小泉劇場である。『マネー敗戦』(文春新書)で著名な吉川氏は本書が遺作になった。この「改革」の歪み、これはその政策を選挙で日本人が拒否することでしか、現実的には対応できないのではないか。民意である。同じ民主主義、自由主義の国家であるので、その選択は理解される。5年前、その改革路線の歪みを、韓国では盧武鉉の日本の社民党みたいな、反米反日政権を国民が選択した。が、それで米韓同盟が一時的に弱体化はしても、破綻はしなかった。ただ韓国経済は冷え切るばかりであった。もっと言えば、共和党のブッシュだから、民主党のクリントンのような悪意むき出しの対応にならなかった部分が多々あった。ただ、アメリカのいうスタンダードは、すべてがすべて、自国に都合の良い面ばかりであるのはわかる。旧き良き時代の日本を懐かしむ映画「3丁目の夕日」が観客を集めるのは、過剰な競争社会が、アングロサクソン流のマネーゲームが、日本人本来の倫理観に合わないからかもしれない。本書は推薦できる。
30年ほど前か、電気炊飯ジャーが爆発的に売れたことがあった。秋葉原の免税店で、台湾からの観光客が競って、親戚、知人の分まで購入したからである。いまもドラッグストアーで日本製の薬品を同じように大量に買い求める。電化製品もメード・イン・ジャパンかどうかを必ず確かめ買う。高所得者層の中国人も、食料品は当地では高価格にもかかわらず、日本産地の生鮮野菜、果物の売上がうなぎ登りだそうである。
有害な有機農薬が混入した中国製の冷凍食品が大問題になっている。薬を含め中国製の食品で、自国での死亡事故、事件が年に1万件ほどあるという報道もある。加地伸行阪大名誉教授が指摘したが、現在もなお魯迅『阿Q正伝』で描かれた人々が大多数の国だそうだ。表層の近代都市、近代建築の裏側はこの阿Qで、今も昔もまったく変化していないという。
渡辺利夫『新世紀アジアの構想』(ちくま新書 1995年刊)は、通貨危機以前の経済セクターとしての東アジアの発展はどうしてなされたのかを、経済法則から説明した名著である。開発主義(開発独裁)がスムースに資金が回転し、その実態、仕組みがわかりやすく論じられている。最終章では日本のODAにふれ、アメリカのようにデモクラシーと人権、自由を、フランスのように自国の文化普及をその目的、手段とはせず、あくまでも相手国の要請、自助努力が可能なプランへ使われていることを前向きに評価している。学者臭さがないのが本書の魅力でもある。
関岡英之『なんじ自身のために泣け』(河出書房新社 2002年刊 絶版)は、前回も登場の著者だが、本書で第7回『蓮如賞』受賞している。自身が高校生時代から、アジアや中近東を旅行し、そこで欧米の近代的価値観と異なる伝統、人生観、価値を発見し、この近代化の限界を見据え、複眼的にこの文明を体験的に語った本である。進歩とは何か、経済発展とは何か、彼らの世界が頑なに拒む西欧文明、それに肉薄しているところが本書の最大の魅力である。氏は目下、大学で教鞭を執っている。これからも注目していきたい。