つき指の読書日記 by 大月清司
生物と無生物のあいだ楽天ブックス
人間は生物で、いずれは死に至る、霊長類の進化した存在であると、いつも意識にのぼらせるようにしている。
母には死の間際、老いるとは大変なことだと、諭すように言い聞かされていた。誰しも老化からは逃れられないのだと、それも頭の隅に置いている。
このところの生物学の領域、学問的解明が一気に拡大している。生物とはどのような仕組みになっているか、それが分子レベルまでの複雑、多様な動的なシステムとしてである。二重らせん構造での自己複製からはじまり、そこでのDNAの働き、遺伝子情報の解読、タンパク質の多様さとその複合的な維持、連携、連続性までまだまだ研究は尽きない分野である。
その最前線で研究活動をし、プリオン説などで講談社出版文化賞科学出版賞、科学ジャーナリスト賞を受賞した、青山学院大教授、生命分子論専攻の福岡伸一『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書 2007年刊)を読んだ。当時は新書部門のベストセラーの一位をキープした本である。同社のPR誌「本」で連載されたもので、科学者の運不運を数々のエピソードと、アメリカの風景を上質な文章で飾った、知的でスリリングな書物である。物質として細分化して、その本質を極める、西洋の科学的手法ではけしてわかり得なかった、生命体の豊かさ、多様性がよくわかる。エピソードに野口英世も登場し、新発見などひとつもなかったことにもふれる。また日本の大学のマイナスな世界、その実力が正当に評価されない閉鎖性、序列意識など、暗に批判もしている。専門外の教養が通底する、優れた、読みやすい科学書で、迷わずに手にしてもらいたいと、そう思った。
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