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箱庭

箱庭

2012/09/27の記事の続き

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「・・・陛下。これはどういう事でしょう?」

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「何か、不服かね?」

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「私は、満洲国の永続的な繁栄を得るため、より一層の国力増強に力を注ぐものであると思っておりました」

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「満洲国の発展のためには必要不可欠なものだ」

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「貴方は一度放棄した軍事力を、再び取り戻せと仰るのですね?」

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「そうだ。強力な軍隊は強力な経済力の下に宿る。歴史がそれを証明している。これまで経済を磨いて来たのは、強い軍隊を作るため。それ以外の何物でもない」

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「なんと・・・貴方は以前、この工業化計画を全国民のためであると仰いました。各国の軍事力の増強が何を産んだか。それは今次大戦を見れば明らかでしょう。ましてや戦争は終わろうとしているさなか、せっかく手に入れた中立という看板をみすみす下げてしまうなど・・・」

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「だが、国防を委ねた大日本帝国は敗北寸前。これから満洲国は自力で大国の狭間を生き抜いて行かなければならぬ」

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「・・・しかし、この増強予定の兵の数はいかがなものでしょうか。動員兵力50万。我国の人口を考えれば国防力と言うにはいささか過剰な戦力です。周辺国もよい顔はしないでしょう」

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「・・・なるほど、貴様はあくまで国内経済を発展させる事が上策と言うのだな」

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「はい」

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「・・・張景恵よ。貴様は、国家は何故国家たるのかを理解していないようだ」

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「は?」

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「国家とは何か。主権・領土・人民を3要素とするなどという次元ではない、もっと本質的なものだ。国家は、何故国家であると言えるのか。それは、明確な敵と味方が存在するからに他ならない・国家と国家の間にあるのは、弱肉強食の間柄だけだ。昨今の大日本帝国の躍進と没落がそれを端的に表している」

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「陛下・・・?」

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「国家が覇を競うのは、どのようなお題目をつけようとも、国家を構成する人間の闘争本能に従っているに過ぎない。・・・戦争とは全くもって素晴らしきものよ。強いか、弱いか。戦う両者にあるのはそれだけだからな。そして愚かな民はそれを美談として語り継ぐのだ。何とも滑稽な話だと思わんかね、張」

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「言葉が過ぎますぞ! いかな陛下とはいえ、言っていい事と悪い事がございます!」

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「避戦、反戦。実に結構。しかし、それは建前ではないのかね?」

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「違います。今の満洲国民の望みは戦争ではない。国が豊かになる事です」

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「否。国民の意思とは我が意志である。我が意志は避戦にあらず。他国と争い、血を流す事こそ国家の本懐である。朕はその国家の本懐を叶えようとしているに過ぎぬ」

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「愚かな・・・」

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「そうだ。だがそれは人間全てに等しく言えるものだ。そして所詮は愚かな人間の集合体である国家も愚かなものでしかない。軍事力を備えなければ国家は成り立たないのだよ。国防力とは、相手を侵略し、屈服させる力を持っている事で初めて機能する。我国にとって、今回朕が示した兵力でもまだ足りないぐらいだ」

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「・・・詭弁だ。陛下、貴方は自分の欲望を満たすためにこの国と民を利用としているに過ぎない。これまでの貴方とはまるで違う。貴方は詐欺師だ!」

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「・・・・・・」

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「・・・・・・ッ」

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「クッ、クククククク、ハハハハハハハハハハハハハッ!」

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「!?」

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「素晴らしい。朕が見込んだ通りその程度の偽善者か、貴様は」

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「何をッ」

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「戦争を回避する? 軍事力を忌避する? 経済発展が優先されるべき? そんな事は偽善に過ぎぬわ。国家は本望の赴くままに、自分以外の国家を侵略し、破壊し、殺す姿こそ真の国家たる。満洲国の目指すべき姿は、その境地にあるのだよ」

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「それでは、単なる破壊者ではないか! 国民はそんな事を望んではいないぞ!」

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「いいや。いずれ望むようになる。貴様が主導してくれた経済発展のおかげで、国民の多くがその手に富みを得た。ではその次に望むのは? 娯楽よ」

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「娯楽!? 貴方は戦争が娯楽だと言うのか!?」

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「少し違うな。勝ち戦こそ真の娯楽だよ。勝たなければ娯楽としては二流だ。だからこそ、我国は『絶対に勝てる』軍隊を作らなければならないのだ。その限りのない欲望を満たすと同時に、国民の安全とやらを守り、娯楽を提供してやるために!」

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「く、狂っている!」

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「いいや! 我こそが正しいのだ。人間の正体とは同族の血を見る事を至上の喜びとする獣に過ぎん」

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「私は貴方とは違う!」

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「そぅら、いつまで偽善者の仮面を被っているつもりなのだ?」

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「違う。違う違う違う違う違う! 私は、貴方のような獣ではない!」

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「見込み違いであった・・・私は、これ以上貴方に着いて行く事ができません。総理の職を辞めさせていただきます」

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「よいのか?」

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「もちろん。これで、貴方の顔を見る事がなくなるのであれば・・・」

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「人の話は最後まで聞くものだぞ。よいのだな? 貴様が首相職を退いた場合、貴様の身近な人間に危害が及ぶ可能性があるのだがなァ」

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「ッ! 陛下ぁっ!」

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「素晴らしい表情だ、張。その苦渋に歪む顔を見ていれば、朕は心の赴くままに行動できるであろう」

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「・・・私に、一体どうしろと言うのです」

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「それ程敵意を剥き出しにするな。せっかく朕が『味方』と認識してやっているというのに。・・・張、貴様は朕の、いや、満洲国の犬になれ。我国が吠えろと言えば吠え、失態を犯せば泣いて許しを請うがいい」

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「ッ!」

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「どうした。貴様に選択肢などないのだぞ? 首を縦に振らぬか」

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「・・・承知しました、史上最低の屑」

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「・・・・・・フ、フハハハハハハハハハハハハハ!」



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「石原! 石原はいるか!?」

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「ここに」

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「よろしい。早速、貴様が目指す軍を創れ。貴様が計画の主導者となるのだ。よいな?」

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「は、陛下の仰せのままに」

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「それと、だ。情報相、統合参謀長らと協議し、各地にスパイを送り込め。情報が入らないのでは勝てる戦も勝てなくなるからな」

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「承知致しました」

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 1945年、満洲国はその国家方針を一変させ、軍事力の増強に勤しみ始める。すでに第2次世界大戦が終わろうとしている中で、他国にその姿は奇異なものに映ったが、これまで中立を表明していながら国防力らしい国防力を備えていなかった満洲国の異常が正常に戻っただけの話であり、各国は黙認した。同時期に既存の大国に対して満洲国はスパイを大量に派遣し、その計画は他国に露見していたものの、満洲国は貿易で得た膨大な資金を外交関係改善に惜しみなく投入したため、周辺国や大国各国と良好な関係を築く事になる。それが、化けの皮である事を知られずに。

続く。

本文

HoI2集

満洲国AAR



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