さらば青春(3)前のページ | ホームに戻る | 次のページ さらば青春(3) さらば青春(3) 5年ぶりの再会でした。 お互いの名前を呼んで、映画のような感動のシーンを期待していたのですが、ごめんなさい。 じつにあっさりしていました。 「あら、着いたの。まあ、あがったら。」 拍子抜けするような二人の再会。 こんなにも間が空いていて懐かしい気持ちがあるだろうに、態度はさりげなく、普段から会話をしているかのような少しぶっきらぼうな態度。 いつもの態度かな。いやいや、そんなことはなかった。 やはり、5年の月日が互いを大人にしていましたね。 話したいことはいっぱいあるのに、なぜか話が他人行儀。 絶対に聞きたかったことがあります。それは、あの3年前のことです。 涙に暮れたことや、事故にあったことなどは言いませんでした。 「3年前に家を訪ねたときに、会ってくれなかったね。どうして?」 返事は、 「そんなこともあったわねえ。忘れなさいよ。」 見事にはぐらかされました。 そんなあ。そんな一言で済まされるのか?え~! どれだけ辛い思いをしたか分かってんの? でも、僕は非難の言葉は一言もいいません。 どうやら言いたくない理由がありそうです。辛いことがあったんでしょう。 今、ここに昔の元気なひかるさんがいるだけで十分です。 そして、二人きりの時間と空間がある。感激に浸っていました。 これから数日の予定はというと、明日は仕事があるので昼間はいないので、僕だけがスキーに行くことになりました。あさってには実家に帰るということで少しあわただしい。 でも、今夜は二人きりで過ごせるのですから、幸せ~。 ひかるさんの借家には夕方に到着したので、すぐに夕食です。 「手伝ってよ。風呂掃除。」 「はいはい。」 「ちゃんと、火がつくかな?」 「なに?どういうこと?」 「 だって、ここんところ、風呂沸かしたことないもん。」 「じゃあ、シャワーだけ?」 「そうだよ、壊れていたし、一人じゃ沸かすのがもったいないから。普段はシャワーで時々銭湯。」 まあ、一人住まいはこんなもんですよね。面倒くさいし、近くに銭湯があるから、沸かしたことない。まあ、しゃあないわ。 でも、嬉しいですねえ。普段使わない風呂をせっせと用意してくれているんだから。ちょっと感激。 気持ちのよい風呂でした。 食事は結構奮発していました。なにせ大飯食いの僕が行くわけですから、 彼女もそれなりに準備してくれていました。 食事しながらもいろんなことを話した。職場のことが主だったけど笑い話や愚痴も聞いた。 でも二人のこれからのことには話が進まない。難しい壁が多すぎる。 食事の前後には女性には難しい修理やら、こまごましたことを直したりしたんだけど、あまり覚えていない。 食事後の時間がどのように過ぎたかも忘れてしまった。ひたすら話をしたと思う。 僕はどちらかというと発言が多い方なんですが、彼女にはかなわない。 はいはい、何でも聞きまっせ。 話を聞くのが楽しい女性と相対すると、つい顔が緩んでしまいますね。 時間が経つのが早い。もう12時近くになってしまった。そろそろ明日に向けて、寝なければ。 (2007.11.06 01:14:19) なんせ明日はあこがれの妙高高原で滑ります。初めてなんですよ。そこは。 彼女も明日は仕事。というわけで、ねんねの時間。こたつを退けて蒲団が二つ並びます。 電気が消えました。眠いけど、このまま寝てはいけない。寝たらあかん。 僕の手は彼女に向かって伸びています。ようやく彼女の手を探しあてて、握りました。 小さい手でした。気持ちが伝わってきます。顔を近づけました。そして、・・・・・・ 彼女の顔が暗闇の中でおぼろげに見えます。お互いにじっと見つめています。 彼女の目に涙があふれています。 「私は二人姉妹の姉だよ。家には親がいるし、面倒見なきゃいけない。妹は私をあてにして、外に出たし、どうしたらいいの。やっと正採用になったのに。また、異動試験受けなくちゃいけない。合格できるのかなあ?どうして私みたいな女を好きになったのよ。」 「好きになった理由なんかない。素晴らしい女性に巡り会ったから。僕には最高の女性だから。」 でも、ひかるを奪って連れ去るのはあまりにも罪が深い。 僕の目からも涙があふれた。 どうしたらいいんだ。この人を奪ってこの人が幸せになるのか。自分が好きになったからという、身勝手な気持ちで彼女の人生を変えてしまっていいのか。 この人を幸せにする自信はあるが、それが彼女にとっても幸せなのか。 残された両親のことも考えると結論は出ない。 互いの顔を見つめたままで時間が過ぎていく。いつまでも、いつまでも・・・ そして、意識が消えた。 前のページ | ホームに戻る | 次のページ ジャンル別一覧
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