カテゴリ:H19 本試
設問(1)(イ)
1.所定の要件を満たす者は、参加人として審判手続に関与することができる(148条1項、3項)。 (1)148条1項の参加可否について検討する。何人も無効審判を請求できるから(123条2項)、専用実施権者丙が参加人適格を有するか問題である。専用実施権は特許権者との信頼の下、設定登録されるのだから信義則上、丙は無効審判請求することができない。よって、148条1項の参加人適格を有しない。 (2)148条3項の参加可否について検討する。丙は独占排他権を有するから(77条2項)無効審判の結果について利害関係を有する。よって、特許権者を補助するため審判に参加することができる(148条3項)。 2.審判長に参加申請書を提出すべきことに留意する(149条1項)。 設問(1)(ロ) 1.審決取消訴訟の提起(178条) (1)審決は確定していないと考えられるので(178条 3項)、丙が訴訟適格を有していれば審決等取消訴訟を提起することができる(178条2項)。 (2)乙が甲の同意を得て特許権の持分を丙に譲渡した場合は(73条1項)、登録が効力発生要件である(98条1項1号)。特許権効力発生後、丙は特許権者の地位を獲得し、審決取消訴訟を提起できる(178条2項)。なお、専用実施権は混同により消滅する。 特許権は甲との共有となるが、丙単独で訴訟提起できると解する。特許権維持のための保存行為と解されるからである。 (3)乙が甲の同意を得ないで譲渡した場合、契約は無効である(73条1項)。よって、丙は専用実施権者であるが、当該無効審判において参加申請をしていたときは、審決取消訴訟を提起することができる(178条2項)。 2.訂正審判の請求(126条1項) (1)丙が特許権者となったときは、訂正審判(126条)を請求することにより無効理由を解消して特許を維持することができる(128条)。 (2)甲と共同でなければ審判請求できないことに留意する(132条3項)。また、訂正要件を満たして(126条1項各号、3項乃至5項)、審決取消訴訟提起から所定の期間内に請求すべきことに留意する(126条2項但書)。 設問(2) 1.まる1の場合 丁は、審決取消訴訟(178条)を提起することができる。 審決取消訴訟の審理対象は、無効審判で審理対象とされたものに限られるので、審判で審理されなかった証拠を新たに提出して審理対象とすることはできないと解される。特許庁における審判審理の専門性を尊重し、対世効を有する特許に関する権利争訟解決の迅速性を担保する制度趣旨だからである。 本問の場合、Yはそれ自体審理判断対象ではなく、すでに判断された証拠を補強する目的であるため審理対象とされる。 2.まる2の場合 審理判断されなかった新たな証拠について、審理することは許されないので審決取消訴訟提起できない。よって、別途無効審判を請求する必要がある。なお、異なる証拠に基づいてするので一事不再理ははたらかないので(167条)審判請求は認められるものと考えられる。 以上 1,254文字 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.03.11 14:03:14
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