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感染ルンです。。。

感染ルンです。。。

キヤノン50mmF0.95のボケ

えー、キヤノン50mmF0.95のボケ具合を研究します。





「柿」


Canon 50mm F0.95
Leica MP LHSA Edition Grey Hammertone Finish
Konica IMPRESA50
Copyright (C) 2006 GINJI, All Rights Reserved.




最短距離の1メートルで撮影しました。

光学の理論上、ピントは1点であり、小型カメラの場合レンズとフィルムが平行になる面にピント面が来ます。ですが、どうでしょう。F0.95という大口径で薄っすーいピントは理解できますが、像面湾曲とコマ収差と非点収差が重なり合っているため、ぐにゅーんと像が曲がって柿の左右にピントがありません。よーく見ると面でピントはありそうですが、流れて歪んでぐちゅぐちゅです。

前ボケにあたる1メートル以下ですが、中心部に比べて収差が激しい周辺の状態はクズクズのグールグルです。光量も落ち込んでいます。

中央の次の柿から手前を見てみましょう。若干グルグルが発生しているように思えます。中心にグルグルがひとつできて、ピントを挟んだ箇所は冷静で、そこを過ぎると別の大グルグルがでています。まるで低気圧と台風に挟まれた付近は一時的に晴れ間というようなボケ具合です。

奥のボケはどうでしょう。ボケはかなりきまくっています。ただ、ツァイスのプラナーとは違う方向なボケですね。形がなくなるという点では共通項でしょうが、プラナーが溶けて行く傾向であれば、F0.95の場合は中心方向から外に向かってゆらゆらと地震が起きて物の形が動いている状態をスローシャッターを切っているように崩れている感じです。


次は同じ被写体を1.2メートル程度にピントを合わせたカットです。





「柿」


Canon 50mm F0.95
Leica MP LHSA Edition Grey Hammertone Finish
Konica IMPRESA50
Copyright (C) 2006 GINJI, All Rights Reserved.




ピント面ですが、手前に持って来たときとは違い、割合と横を横断するようにピントがあります。もちろん中央の柿にピントはドキューンと来ています。中央部分には像面湾曲がそれほど発生しない位置なのでしょう。

これは素直にレンズの中央へ被写体を持って来たので、グルグル感は中央から発生しているようです。しかしながら、前ボケはグルグル感が強いですが、奥ボケはそれほど感じません。このことを頭に入れておけば、グルグル感をあまり感じさせない撮影ができそうかな。

奥のボケ感ですが、1メートルに設定したときと大違いに表現されました。先ほどは揺れているようなボケでしたが、今回は溶けている感です。ガウスっぽい感じと言えるのかなー。ただし溶けている中に非点収差がでてくるのか、線が現れて物の主張をしてくれます。

最後に両方の写真に言えることですが、微妙に球面収差が発生するので、ハロが出て優しさを全面に感じます。

このレンズは単純にボケまくるのではないかという印象でしたが、F0.95開放であってもカミソリのような1点シャープ系に決像している部分もあり、集中した視点以外があっという間にボケてくれるということがわかりました。まさに人間の視覚(動画でピント面をレイヤー合成している)を分解して一瞬だけ印象にのこる場所を確保するような強烈なレンズなんだと思います。


なんともまぁー、おんもしろいレンズだこと!(大喜)



次は絞りによるボケ方の違いについてごらんいただきたいと思います。


撮影方法等について。

カメラはライカMP。三脚はハスキー。レリーズはプロンター。露出計はミノルタ。フィルムはインプレッサ50。

撮影距離は1メートル。ピントは中心の棒の表面の赤と白の塗装のコントラスト部分。

時間は夕刻前。日陰での適正露光とした。同じEV値で9枚をちゃっちゃっと短時間で撮影したので、太陽高度変化による露出の違いは無い。念のため撮影前後で計測したけどコンマ1の違いも出なかった。

フィルムスキャナでスキャン。設定は、約600万画素、色調とコントラストとUSMはゼロとした。掲載データは、1/4にリサイズのみ行った。


ということで、どうぞ。





F0.95




F1.4




F2.0




F2.8




F4.0




F5.6




F8.0




F11




F16



どうでしょうか?

掲載サイズを小さくせざるを得ないので、詳しく観察することは難しいかもしれませんので解説を少々入れたいと思います。

まずやってみて驚いたのは、「F0.95とF1.4とあんまり変わらない?むしろF1.4の方がボケてる?」と思ったこと。しかしながら拡大して観察すると明らかにF0.95の方が大きいボケになっています。なぜなのでしょうか。

レンズには収差が発生します。収差は、軸上色収差、倍率色収差、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差(樽型と糸巻き型)の7種類です。この内、絞りを小さくすることによってある程度改善されるのが軸上色収差、球面収差、コマ収差、ある程度軽減できるのが非点収差、像面湾曲、改善されないのが倍率色収差、歪曲収差です。

F0.95は収差のオンパレード、収差の総合百貨店、収差の大見本市みたいなもんです。ただしレンズ構成がガウスタイプ(ダブルガウス)なので、2つの色収差はあまり感じません。わからないだけかもしれませんが(汗)。

したがって、F0.95から1段絞ったF1.4だとしてもかなり収差の改善が進むと思われます。顕著なのは球面収差とコマ収差でしょうか。F0.95は全体的にコントラストが低く、フレアっぽくふわーっとして、白いものは特に滲みが発生しています。恐らく球面収差が全体的に発生し、コマ収差が周囲にあるからでしょう。また非点収差の点の動きみたいなものもぐっと少なくなると思います。画面左上の蔦のボケからの推測ですが、F0.95だと混ざり合った収差のせいで蔦の影がにじんで形を逆に形成しているように思えます。ところがF1.4だとそこが改善されてすっきりするため、形が溶けるようになくなって逆説的にボケが発生しているように感じます。

この傾向はF2.8程度までぐんぐん進むように思えます。最短距離に被写体があれば、F2.8程度でも奥にボケ感を得ることができそうです。

F4.0、F5.6やF8.0まで来ると、被写界深度域が増え、収差も改善されるために、かなりシャープ感が出てきます。ものの存在感が発生してくる絞りです。

F11やF16になると、シャープ感もピントも合ってくるし、手前のボケを見るとコマ収差、非点収差、像面湾曲がかなり少なくなり、ぴたっとした像を結んでいます。

まぁ、F4.0以上の収差の改善感はどんなレンズにも言えることですがねぇ。

それから収差以外のことでの注目は、ビネッティング、周辺光量落ちについてです。F0.95では周囲はもちろん中心部に向かって明らかに暗くなっており、露出不足を招いています。それがF1.4になったとたんに、パァンと霧が晴れたかのように周辺の明るさが出てきます。中央の棒で比べれば、中央の露出が変わっていないことがわかります。F2.0だとかなり解消されます。特に手前を見ると明るさの違いが顕著です。

最初に思った開放のボケについて再考なんですが、収差の乱れによるボケ具合に加えて、口径食から来る像の乱れもF0.95なのにF1.4よりボケていないような感覚を呼んでしまうのかもしれません。

ここまできたらぜひとも機会があれば、同じ世代のキヤノンF1.2、F1.4、F1.5、F1.8、F1.9、F2.0、F2.2、F2.8、F3.5と比べてみたいですね。>つか、作り過ぎだったのでは?

今回の実験撮影結果をざっと観察したぐらいでも、ますます興味が増えるレンズです。基本的に残存収差がひどすぎるから悪いレンズとは言えない訳で、その辺をうまくコントロールしてあげれば、こんなに面白いレンズも存在しないことでしょう。まぁ、開放以外で撮影することは少ないと思いますが(笑)。



続いて、距離とボケに関しての考察です。


撮影方法は前回のテストとほぼ同じです。今回は緑の中でも目立つように、被写体には白い胡蝶蘭の鉢を使いました。ピントについてですが、主に胡蝶蘭の右上の花弁を狙っています。

同時にやったことで、銀治のF0.95はMマウントに改造してあるレンズですから、距離が本当に合うのかもテストしました。つまり、1度二重像でピントを合わせて、メジャーを使ってライカと胡蝶蘭の距離も計測しました。先にその結論を言うと、びっくりする位正確でした。写真を見てもピントが来ていますから、改造は正確だと信じることにしました。

それにしても撮影している姿は、不審者そのもの(笑)。時々人が通りましたが、胡蝶蘭を動かしてはメジャーでカメラからの距離を計りカメラに戻ってシャッターを切るという手順ですからねぇ。

それではご覧ください。





1メートル




1.2メートル




1.7メートル




2メートル




3メートル




4メートル




5メートル




6メートル




7メートル




8メートル




9メートル




10メートル




20メートル(距離計のみ)




無限遠(距離計のみ)




という感じです。縦スクロールだと比べ難いと思うので、ブラウザの別ウィンドを開いて、各画像をタブで開くと良いと思います。



では考察をしましょう。

F0.95の撮影可能最短距離は、基本がLマウント(外爪)なので、1メートルです。その1メートルを見てみましょう。

中央のピントはキリッとあっています。胡蝶蘭のひげっぽい所です。そこと手前の花との差なんて鼻差もないのに、確実にボケが入っています。凄い極薄のピントです。で、球面収差らしきがあるので、フワワンと滲んでいます。

全体的にボケまくっています。特に2メートル以降は形が溶けて色になっています。特に4~5メートル付近が美味しそう。2メートル手前の、特に画面周辺では各種収差が重なり合ってにぎやかです。

被写体を1メートルにして背景がちょっと遠い感じにすると、サンニッパのようなボケの大きさが得られそうです。


1.2メートルです。まだ非常に薄いピントです。20センチの差ですが、物の形が少し浮き出てきます。これも3メートル以上遠い場所のボケ方が奇麗です。


1.7メートルです。突如形が見えてきました。5メートル以上のボケが美味しそうです。グルグルも感じられます。かなり激しかった口径食もちょっとすっきりして見えます。


2メートルです。まだ5メートル以上のボケは大きいです。でも賑やかになってきました。


3メートルです。ボケと形のバランスが均等になっているような感じです。


4メートルです。まだボケには広がりを感じます。


5メートルです。かなり前後の差がなくなってきました。4メートルまでに比べて口径食がちょっとすっきりしました。


6メートルです。依然としてピントの差は感じますが、全体的に形の雰囲気が伝わってきます。


7メートル以上10メートルですが、大口径なんでしょうが、大口径の意味がなくなってきます。しかし無限遠は確実にボケています。当たり前ですが、前ボケが激しくなってきました。


20メートルです。屋根の上のアンテナですが、ピントが来ています。滲んでいるので認識しにくいです。


無限遠です。山の中腹の建物が20メートルのときよりもはっきり見えます。



総括すると、面白そうな描写になるのは5メートルあたりまでで、美味しい描写は3メートルまでと言えそうです。1.7メートルぐらいになるとボケの雰囲気が変化し始めるって感じがします。ピントの薄さとボケの強烈さは撮影していませんが1.5メートルあたりまででしょう。

ということで、やっぱりF0.95らしさが浮き出てくるのは2メートル以下なのです。被写体が2メートル未満で背景が5メートル以上だとかなり溶けてきます。

したがって昨日の写真ですが、トルコキキョウのアレンジまでの距離が1メートルから1.2メートルで、鏡の中に5メートル以上離れた情景が写り込んでいるので溶け方が強烈だったのだと想像できます。

もちろんこの実験通りに毎度スナップができる訳じゃないので、あくまでも参考知識程度なんですがねー。ボケの出具合が多少掴めたことには意味があったと感じています。


写真とは、ある場所に当たった光を時間で切り取る芸術ですから、計算づくより必然的偶然が面白いんです。またいつか素敵な情景に出会えるよう、しばらくF0.95を片手に彷徨うことにします。


<2006年10月12日、13日、31日の記事より>



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