火星大接近を見よう!

  
火星大接近を見よう!
       
  
   2003年8月、火星が地球に大接近します。
もともと火星は2年2ヶ月に一度の割合で地球に接近します。
「2年に一度なら珍しくもない現象では?」と思うかもしれませんが、
今回は少し違います。
その距離が、歴史上類を見ないほど近いのです。
今回の最接近距離は5576万㎞ですが、これだけ近いのは80年前の1924年以来で、今回見逃すと80年後の2082年までないという、まさに100年に一度のものです。しかも、1924年や2082年のときよりも、今回の方が距離が近いのです。
天文学者が計算したところによると、今回よりも近かったのは57000年前(!)、未来を計算しても284年先の2287年まで見つからないという、まさに歴史的現象なのです。
これだけ近いので、普段見ることのできない大きな火星の姿を長い期間楽しむことができます。ちょうど夏休みとも重なるので、時間を見つけて天文台や地元の観測会に足を運んでみてください。 宇宙人

なぜ大接近なの?
太陽系の多くの惑星は、太陽を中心とする円(注)を描いて回っています。太陽にコンパスの針を落とし、大きさの違う円を描いていったような軌道をしているのです。ところが、地球のすぐ外側を回っている火星は、少し潰れた楕円形(卵型のような感じ)の軌道を描いています。したがって、軌道のポイントごとに太陽との距離が変化しますので、結局地球との距離も小接近になったり大接近になったりすることになります。

実際に自分で小接近と大接近を体験してみてください。

(注)…完全に正確な円ではないのですが、この場合は問題ないので円と考えます。
いつごろ見られるの?
さきほども8月と書きましたが、8月27日が最接近。そして、8月31日が衝(注)です。よく「8月27日でないと見られないの?」と心配する人もいますが、流星群などとは違って、火星はずっと見えているので、その心配はありません。8月は夕方東の空から昇って、夜の間中輝きつづけ、明け方頃に西の空に沈んでいきます。ちょうどその頃、明るい星の少ないみずがめ座にいますので、赤く輝く火星は非常に目立つはずです。
だいたい夏休みの始めごろから10月くらいまでがいちばん見やすい時期になります。その後も見ることができますが、地球との距離が遠くなるので、専門的に観測している人でないと、小さくて見にくくなります。
(注)衝(しょう)……太陽-地球-火星が一直線に並ぶこと。一晩中観測できる。
どこで見られるの?
暗い夜空であるほどよく見えるのはもちろんですが、8月には火星は-2.6~-2.9等星くらいの明るさになっており、全天1の明るさのおおいぬ座(冬の星座)のシリウス(-1.4等星)よりも3~4倍も明るいので、カシオペヤ座や北斗七星が見える程度の暗さの夜空であれば、火星は充分はっきりと見えるはずです。
どうやったら見られるの?
夜空に輝く赤い火星は肉眼で見ても充分美しいと思います。しかしできれば皆さんがお持ちの望遠鏡や観測会などで可能な限り倍率を上げて見てください。気流の状態にもよりますが、150~200倍くらいまで上げて観察してみてください。最初はなにがなんだかよくわからないかもしれませんが、次第に細かい模様も見えるようになってきます。
望遠鏡にはいろんなタイプがあります。光の集め方の違いによって、屈折式、反射式、シュミットカセグレン式などがあります。また、望遠鏡の動かし方によって、経緯台式と赤道儀式とがあります。どんなタイプであってもOKです。ただ、口径(星の光の入ってくる入り口の直径)が10cmくらいかそれ以上あると細かい模様が見えやすくなります(注1)。あまり口径が大きいと気流による影響を受けやすくなってちらつきが強くなります(注2)。
(注1)今回の大接近では火星の視直径(火星の見た目の大きさを角度で表した値)は25.11秒にもなりますので、普段は無理ですが今回は口径6cmくらいの小口径の望遠鏡でも模様が見えると思います。
(注2)気流が落ち着いてちらつきがなくなり星がよく見えるとき「シーイングが良い」と言います。シーイングが良ければ、口径20cm以上の場合300倍くらいまで倍率をあげて見ることができます。倍率のめやすは、小口径で口径の大きさ(cm)の15~20倍、口径20cm以上で口径の大きさの15倍程度までです。火星の直径は、地球の約1/2。
火星の重さは・・・  地球の約1/10しかありません。
火星は、金星に次いで地球に最も近づく惑星です。

惑星が太陽と反対側に来たとき、このような惑星の位置のことを
『衝』(しょう)といいます。

火星は、衝の頃に地球に近づくわけです。ところが火星の軌道をよく見て下さい。

まん丸ではなく、楕円という少しつぶれた円になっているのがわかりますか?
このため火星には、太陽に最も近づく所と、太陽から最も離れる所ができます。

それぞれ、『近日点』(きんじつてん)、『遠日点』(えんじつてん)と呼んでい
ます。

今年のように近日点近くで衝になると、火星と地球の間の距離が特に小さくなり、
『大接近』というわけです。

反対に遠日点近くで衝になる1980年の時などは『小接近』と呼んでいます。

今年の大接近ほど火星が地球に近づいたのは1924年以来であり、今後は2208年ま
でこれほどの接近はありません。

わずかの差ですが、今年は、過去7万3千年で、最も火星が近づくという計算結果も
あるほどです。(関連する情報)

2年前の4月1日から今年8月27日までの地球と火星の動きを再現してみましょう。


このように、2年前の2001年6月22日、そして今年の8月27日に接近することがわか
ります。約2年2ヶ月ごとに衝になりますが、衝になる軌道上の位置はこのようにず
れていきます。


火星人や運河をめぐる謎も、結局、宇宙船を火星に送ってみなければわかりません。

初めて成功した火星探査機は、1964年にアメリカが打ち上げたマリナー4号です。

翌年7月14日には火星から9844キロの所を通り、そのテレビカメラは初めて火星の
近接撮影を行いました。

何と、そこには月と同じような沢山のクレータがあったのです!

その後もこうした探査機が打ち上げられ、火星の調査が進められていきました。

こうして得られた数多くの写真に、はたして運河らしきものは写っていたでしょうか?

1974年、アメリカ、コーネル大学のカール・セーガンとポール・フォックスはロー
ウェルの描いた火星の地図と、マリナー9号による火星の写真を比較しました。

マリナーの写真では、ローウェルの使った望遠鏡より1千倍も細かい部分が見えて
いるはずです。

運河らしき地形が見当りません。風によって運ばれる砂ぼこりの模様を、直線模様
として結びつけてしまったのではないでしょうか。


1976年7月20日、アメリカのバイキング1号着陸船が火星に無事着陸しました。

火星の周りを回るバイキング1号軌道周回船は、着陸船からのデーターを地球に中継
するほか、上空から火星の写真撮影や赤外線観測などを行いました。遅れて到着した
バイキング2号とともに詳しい火星の調査が始まったのです。

軌道上から慎重に調べ、比較的平らで、着陸に安全だと思われた場所でも着陸し
てみると、大きな石がごろごろしています。

火星のこの赤い色は、土に含まれている鉄の酸化物、つまりさびの色です。

そして、淡いピンク色の空。これも赤い色の細かい塵が、風によって空高く吹き上
げられているためです。大気のほどんどが二酸化炭素であることもわかりました。

バイキング軌道周回船やその後の探査機により、大昔の、河の流れたような跡が
あちこちに見つかりました。

このクレーターは、横浜市並みの大きさです。クレーターのすぐ内側をよく見て
ください。雪の塊におおわれたところ(矢印出る)や、雪の塊が一部とけていると
ころ、そして、すっかりとけて、雪解け水が流れた ような跡が見られます。

海や湖の底で、砂や小石が降り積ってできたような地形も、火星のあちこちで見
つかっています。


さて、今年の火星、横浜の空でも探してみましょう。火星は夏が来るまでは、夜中、
あるいはもっと遅くに昇ってきます。

夏休みが始まる頃、明け方の南の空に見えています。夏休みが終る大接近の頃には、
真夜中近く、南の空に、赤く明るい姿を見せているでしょう。

星座を背景に、なぜ火星がこのような動きをするのでしょうか。

外側を回っている火星を、地球が追い抜いていくため、火星が逆もどりして見え
たのです。この図からわかるように、地球から火星までの距離は大きく変化してい
ます。

夏休みの間、100倍の倍率で火星を見ると、肉眼で見た月の大きさ以上に
見えています。表面のかすかな模様がわかるでしょう。


1997年7月5日に火星に到着したマーズパスファインダー。着陸したのはバイキング1号
着陸地点から約600kmの地点です。

着陸地点から撮影された、まわりの景色です。

『ソジャーナー』と名づけられた小型の探検車が周囲の岩や土などを調べました。

この、アレス渓谷は、昔大量の水が流れていたとされる場所のひとつです。水で運
ばれたのでしょうか。ごらんのように、多くの岩石がころがっています。

カール・セーガン・メモリアルステーションと名づけられた着陸船です。

ソジャーナーが火星に降りるために使われたスロープが見えます。

着陸するときのショックをやわらげるため、エアバッグが初めて使われました。

しぼんだエアバッグが広がっています。高く伸びているのは、カメラのマストです。

現在、日本の火星探査機『のぞみ』が火星に向かっています。

今年はヨーロッパ宇宙機関とアメリカが、それぞれ火星探査機を打ち上げ、火星の
水の存在や気象などの調査を進めます。(最新情報)


アメリカのケープカナベラル。今年の5月と6月に、それぞれ同じ探査機が出発し
火星へ向かいます。

1997年に火星に着陸した『マーズ・パスファインダー』と同じようにエアバッグを
使って着陸します。

パノラマカメラによって周囲の様子を調べます。赤外線で周囲を調べる装置もあ
り、鉱物の種類を識別します。機械の腕もあり、岩石や土を調べます。岩石の表面
を削る装置や顕微鏡も用意されました。


みなさんの子孫が将来火星を訪れる頃、水素ガスを満した飛行船や大きな翼を持つ
グライダーが使われているかもしれません。

宇宙は、私たち人類にとって、もはや空想や研究だけの対象ではありません。

皆さんと、皆さんの子孫が、宇宙の可能性を切り開いていくことでしょう。




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