三十八章三三十八章 人 < 後編 > 川 ゚ -゚)「行くぞ!!」 ドクオから離れたクーは、待ち構える二人の元に駆けた。 速い。距離は、あっというまに消失する。 それに対して、すっと弟者が前に出た。 兄者も前に出ようとしたが、弟者はそれを手で制す。 (´<_` )「来るが良い」 言葉と同時。 弟者の姿が下方へと流れる。 その一瞬の後、横薙ぎにされた刀の刃が、しゃがんだ弟者の髪の毛を切り飛ばして抜けた。 (´<_` )「ふっ!」 しゃがんだ状態から回転するようにして、地面と水平に足を横薙ぎにする。 それは見事に、クーの足を捉えた。 川 ゚ -゚)「ぐッ……!」 ぐらり、と彼女の体勢が崩れる。 弟者は追撃として、倒れゆく彼女の脇腹を拳で突き上げようとして――― (´<_` )「!?」 何も捉えず、上方へ抜ける。 突如。その拳と腕に深い一閃が刻まれ、弾けるように血が噴いた。 見れば、クーの左手が振るわれている。 握られた青い刀には、血糊。 (´<_` )「“フリ”か」 川 ゚ -゚)「その通りだな」 崩れていた筈の彼女の体勢が、一瞬で整えられる。 対する弟者もすぐさま立ち上がり、彼女に相対した。 眼にも止まらぬ斬撃が、連続で空を刻んだ。 斬り刻まれた空は甲高い叫び声をあげ、やがて風切り音は途切れぬ一つの音となる。 しかし響くのは、いつまで経っても風の切れる音のみ。肉を刻む音は混じらない。 弟者はほぼ完璧に刀の軌道を読んで、全ての斬撃をいなし、かわしていた。 もはや舞うように、無駄のない動きで―――しかも隙があれば、反撃すら試みている。 洗練され尽くした運動能力と戦闘経験は、無能である筈の彼をこうまでも“異能”にしていた。 だがやがて、刀の青い軌跡の中に紅が混じった。 刀をいなしている弟者の掌が、少しずつ切り刻まれているのだ。 紅は少しずつ増え、やがて床に小さな血溜まりを作る。 だがそれは、痛覚というものが存在しない弟者にとっては、何の影響もない。 そう、痛覚が存在しない。 だから彼は突然―――何の躊躇もなく、彼女の斬撃の軌道に自分の腕を差し出した。 血飛沫が舞い、刀は止まる。 川;゚ -゚)「ッ!?」 想いもしなかった事象から、彼女に生じる一瞬の停滞。 その一瞬の内に弟者は刀を跳ね上げ、彼女の手首を握り締めた。 (´<_` )「……捕まえた」 手首を思い切り引っ張り、それと入れ違えるようにして膝を突き出す。 膝は吸い込まれるように彼女の腹を抉り、鈍い音を経てた。 川;゚ -゚)「がっ!」 呻きと共に、口から血の塊が吐き出される。 しかし痛覚どころか感情すらない弟者に、容赦というものは存在しなかった。 彼女に生まれた隙に、弟者は更に拳を撃ち込む。 それは彼女の頬を強烈に捉え、更に血塊を吐き出させた。 その拳で脳が揺さぶられたのか、彼女の身体がぐらりと揺れる。 弟者は更に攻撃を加えようとして――― (´<_` )「!」 軽いステップを踏んで、クーから離れる。 直後、轟音。彼が立っていた箇所の床を突き破って、無数の巨大な何かが現れた。 (´<_` )「これは……」 現れたそれは、鋭く尖った頂点を持つ巨大な氷筍だ。 あと一瞬遅ければ、弟者の身体は貫かれていただろう。 (´<_` )「……本気、か」 川メ゚ -゚)「あぁ」 口の中に残っていた血液を床に吐き捨てて、クーは弟者を睨みつける。 弟者はその眼光に―――背筋が凍りつくかのような感覚を覚えた。 彼女の瞳に宿っていたのは、余りにも冷酷な殺意。 見えない圧力に軋む身体を無理矢理に動かして、弟者は構える。 川メ゚ -゚)「この“力”は強力である分、使うと疲れやすくてな。 こんなところでは、出来る事ならあまり使いたくはなかったんだが……。 しかしお前は私が思っていたより強かった―――」 刀の刃の先端を、床に置く。 握る手には力を込め、そして一つ、深く息を吐いた。 川メ゚ -゚)「だから出し惜しみはしない。全力でいかせてもらう!!」 刀を、下から上へ振り上げる。 床に深く刀の跡が付けられ、刀の青い軌跡は上空へ抜け――― そして一瞬。 振られた刀の延長線上―――クーと弟者を繋ぐ直線の床から、巨大な氷筍が次々と現れた。 (´<_` )「!!」 迫りくる氷筍に、弟者は身体を思い切り横に投げ出す。 それでも少し間に合わず、顔を出した氷筍に右足が深く抉られた。 (´<_` )「ぐっ……!」 それによって、弟者の体勢が崩れる。 その一瞬の間に、クーは床を蹴った。 川メ゚ -゚)「散れ!!」 一瞬で弟者との距離を詰め、青い右腕を引き絞る。 弟者の体勢は整えられていない。感情のない瞳が、細められた。 しかし。 振るわれた異形の腕は、またしても弟者を捉えられない。 異形の腕は何もない空間を引き裂いて、抜けるのみ。 一瞬の間に、弟者は眼の前から掻き消えていた。 川;゚ -゚)「!? 何!?」 視線を前に飛ばして、クーは舌打ちする。 少し離れた位置に轟音と共に着地したのは兄者―――その腕の中には、弟者だ。 その異形の足の機動性を以てして、兄者は弟者を運んだのだ。 川#゚ -゚)「兄者……!!」 ( ´_ゝ`)「弟者だけで事が済むかと思ったが、流石はクー。そう簡単に終わってはくれないか」 弟者を降ろし、兄者はクーに相対する。 そしてその足が後ろに引かれると――― ( ´_ゝ`)「ならば私が終わらせよう!!」 振るわれた。 同時に発生する、疾い不可視の刃。 川メ゚ -゚)「ッ!!」 右腕を前に突き出す。 僅かに力を込めると、その空間が凍りついた。 不可視の刃と凍りついた空間は衝突し、共に破砕する。 それとほぼ同時に、クーは思い切り後ろに跳んだ。 直後。クーの目の前に何かが凄まじい速度で墜落してくる。 その何かは床に衝突し、爆音と共に砕いた床を巻き上げた。 ( ´_ゝ`)「ほぅ、避けるか」 墜落してきたそれは、兄者だ。 クーは間髪置かずに刀を振るうが、しかしそれも兄者を捉えられない。 兄者はまたも遠く離れ、刀は虚しく空を斬りつけるのみ。 ( ´_ゝ`)「遅いな、クー。欠伸が出そうだ」 川メ゚ -゚)「なら勝手に出すが良い。その喉を掻っ切ってやろう」 ( ´_ゝ`)「のろい割に、口だけは達者だな。 どうせお前の遅さじゃ、私の喉は掻っ切れまいよ」 川メ゚ -゚)「試してみれば良いじゃないか。どうせ試す度胸もないのだろうが、な。 それに、確かにお前は速いが―――それがどうしたというのだ? お前はその速さで、何をした? 逃げているだけじゃないか。それで何を誇っている、凡愚め」 どこまでも嘲っているような笑みを、口に浮かべた。 しかし実のところ、クーの内心にあるのは必死の懇願であった。 兄者の速さは実際脅威で、その速さを以てすれば、クーは兄者にダメージすら与えられない。 そして彼が放つ風の刃でじわじわと消耗させられ、いずれは敗北するだろう。 だから彼を、近付かせねばならない。 『逃げながら徐々に削って行く』という戦い方を、彼から奪わねばならない。 だからここで彼に、この意思を悟られてしまえば……クーの戦闘は、苦しいものになる。 だが幸いにも――― ( ´_ゝ`)「……貴様」 彼は、乗ってきた。 内心の歓喜を嘲弄の笑みに変えて、クーは更に言い募る。 川メ゚ -゚)「頭に来たか? 腹を立てたか? なら、来てみろ。すぐにでも、その不健康そうな色の肌を切り刻んでやる。 それとも、またその足で逃げるか? 良いだろう、逃がしてやるよ。 どこまでも逃げるが良いさ、臆病な兄者。所詮お前は、私にとっては通過点に過ぎん」 ( ´_ゝ`)「本当に、口だけはよく動くな。 ……良いだろう。そこまで望むなら、殺してやろうじゃないか」 ふっと、風が踊る。 風は兄者に纏わりつくように集まり、そして小さな旋風となった。 ( ´_ゝ`)「逃げる事も許さん。叩き潰してやろう」 瞬間。兄者の足元の床が爆ぜ、そして彼の姿が掻き消える。 それとほぼ同時に、クーは眼の前の空間に向かって異形の腕を振るった。 空を切る筈であったその腕は、金属音を経てて止まる。 腕が捉えた物は、振るわれた兄者の足だ。 ( ´_ゝ`)「ほぅ。捉えられたか」 少しだけ驚いたかのように、片方の眉が上がる。 その表情が、突如上へと流れた。 跳んだ兄者を追うように、その足元から氷筍が迫り出してくる。 兄者は中空で足を振るい、襲いかかってきた氷筍を蹴り砕いた。 川;゚ -゚)「ッ……逃がすか!」 クーは更に、右腕の周囲に氷塊を作成。放つ。 兄者はしかしそれすらも蹴って粉砕すると――― ( ´_ゝ`)「逃げないさ」 中空からクーに向けて、風の刃を放った。 クーは舌打ちすると、襲い来る不可視の刃を右腕で粉砕。 続いて、再度氷塊を作成―――ただしその数は先ほどとは比べ物にならない。 少なくとも、足の一振りでどうこうなる数ではない。 川メ゚ -゚)「着地する前に勝負を付けさせてもらおう!」 叫んで、放つ。 作成された氷塊群は容赦なく兄者に襲いかかって――― ( ´_ゝ`)「無駄だ」 ご、という音が響いた。 直後、兄者に襲いかかっていた氷塊が何かに弾き飛ばされ、ばらばらと床に落ちてくる。 川;゚ -゚)「な―――」 ( ´_ゝ`)「私の“力”は風を操る事だぞ」 言いつつ、着地。 そして軽く腕を前に突き出すと――― 川;゚ -゚)「ッ!!」 クーの身体を、密度の高い風の波が打った。 その強さに、クーは数歩、後退る。 ( ´_ゝ`)「跳んだり走ったり、風の刃を生み出すだけが能じゃないさ」 川メ゚ -゚)「……なるほどな」 ( ´_ゝ`)「さぁ、行くぞ。逃げてみろ、生きてみろ。それが出来るというのならな」 そして、消えた。 巻き上げられた床の破片と爆音が、彼が床を蹴ったのだという事を後から認識させる。 同時、彼女は横に跳んだ。 その一瞬の後、彼女の脇腹を掠めるようにして、草色の異形の足が空間を薙いでいく。 直撃は、避けた。―――筈だった。 しかし彼女は吹き飛ばされ、堅い床に強かに身体を打ちつける。 見えぬ圧力に弾き飛ばされ、意味が分からないと言いたげな表情を浮かべる彼女に、兄者は言い放った。 ( ´_ゝ`)「私の“力”は風。言ったばかりの筈だが?」 川;゚ -゚)「……なるほどな。無駄な“力”だな」 ( ´_ゝ`)「その無駄な“力”に押されてるのは誰なんだろうな?」 クーが立ち上がるのとほぼ同時、兄者は地を蹴る。 距離は一瞬にして消滅。兄者の右足が跳ね上がり、クーの右腕が空を薙いだ。 激突。鈍く低く、部屋の空気を震わせる壮絶な金属音。 純粋な力の衝突は、一瞬の停滞の後に弾け飛んだ。 クーは右半身を大きく後ろに飛ばし、兄者も彼女と同じ体勢になる。 互いに生まれた隙を、互いに逃そうとする筈がない。 クーは左手の刀を斜めに斬り上げ、兄者はそれに風の刃で対抗した。 川#゚ -゚)「はぁっ!」 咆哮。軽い音を残して、風の刃は粉砕。緩やかな風となって霧散する。 しかし太刀筋は大きくズラされ、斬り上げた刀は兄者の前髪を斬り飛ばして上方へ抜けた。 ( ´,_ゝ`)「残念」 川#゚ -゚)「まだだッ!!」 踏み込み。そのまま手首を捻り、刀を唐竹割りに振り下ろす。 片腕による斬撃は、しかし十二分の速度と太刀筋を以てして、兄者に喰らいつこうと牙を剥いた。 が、しかし。 ぐらりと兄者の身体が後方に傾いたかと思えば、彼の身体がぐるりと天地逆転した。 結果、跳ね上がった足は振り下ろされた刀を直撃する。 川;゚ -゚)「ッ!?」 極限まで鍛えられた刀は、折れる事はしなかった。 しかし刀を通じて、手に痺れるような痛みが走る。 それによって、思わず刀を握る拳から力が抜けてしまい――― そして、刀がするりと手を抜け出していく。 刀は空を鋭く貫いて、そして硬い音を立てて天井に突き刺さった。 クーは舌打ちし、兄者は嘲弄の笑みを浮かべる。 そして、猛攻が始まった。 まるで、空間を引き千切るかのような勢いで横薙ぎにされる足。 クーは体勢を低くして、間一髪でそれを回避。風で、クーの長髪が激しくはためいた。 攻撃を加える為に接近しようとして―――僥倖。そして舌打ち。 たった今攻撃を回避したばかりの筈なのに、彼女の目の前には膝が迫っていたのだ。 川;゚ -゚)「チィッ!」 まるで彼女の胸部に吸い込まれるかのように伸びた膝を、クーは右腕で防御。 しかし右腕を越えてなお伝わってきた衝撃は、彼女の呼吸を一瞬、途切れさせる。 川;゚ -゚)「――――――ッ!」 その隙に迫ろうとする兄者に向けて、右腕を構えた。 即座にその掌に冷気が集束。複数の鋭利な氷の槍へと姿を変え、兄者に放たれていく。 ( ´_ゝ`)「ふん」 しかし兄者は、床を蹴る右足の一歩で完全に接近の勢いを殺し、後退。 放たれた氷槍は兄者に掠る事もなく、全て床に食い込んで止まった。 クーはすぐに呼吸を整え、兄者を見る。 後退していた兄者は、しかし床に左足が着くと、その一歩で更に床を蹴った。 ―――後退していた影が、あっと言う間に眼前まで迫る。 ( ´,_ゝ`)「どうやら余裕がないようだが?」 嗤いながら、直進の勢いを乗せた前蹴りを放った。 横に跳んで回避するが、しかし一瞬遅かったようだ。 僅かに掠った爪先が脇腹を抉り、内臓にダメージを残して血をぶちまけていく。 川;゚ -゚)(速い。隙が、見付からない……!) 後退しながら、いや、と脳内で否定。 隙は見付けている。しかし、それを叩く前に、兄者の速さはその隙を埋めてしまうのだ。 ならば――― 川メ゚ -゚)(……作るしかないか) 叩ける隙がないなら、作るしかない。 彼の速さを以てしても埋められない隙を。 方法はいくつかある。 何が有効かは分からない。―――虱潰しに試していくしかない。 そしてもし隙が生まれたのなら、そこにありったけの攻撃をぶち込まねばならない。 一度突いた隙は警戒され、もう中々現われてはくれない。つまり、同じ方法で隙を作るという方法は取れない。 だから、隙を突くならば、それは致命傷を与え得る攻撃でなければならない。 川メ゚ -゚)(まず―――) 接近してくる兄者に、クーは更に後退した。 出来るだけ、速く。出来るだけ、長く逃げられるよう。 ( ´,_ゝ`)「! 逃げるか、クー! 良いだろう、逃げろ逃げろ!! しかし何時まで逃げられるかな!? 私から逃げるには、いささか遅すぎるな!!」 笑みを深めて、一際強く強く床を蹴りつける兄者。 それに対して、クーは――― 川メ゚ -゚)「確かに逃げられないな。ならば、向かって行こうか」 後退する足を、その一歩で止める。 そして次の足は後ろでなく―――前へ。 瞳は兄者の胸を睨みつけ、そこを食い荒らす為の異形の右腕は、既に引き絞ってある。 (;´_ゝ`)「ッ!?」 兄者の嘲笑が、驚愕と戦慄に取って代わった。 大きく踏み出していた為に、足は床に付いていない。―――後退は、出来ない。 対するクーは、床をしっかりと足裏で踏み締め、距離を詰めていく。 そして引き絞った右腕を撃ち伸ばそうとして――― (;´_ゝ`)「お……おぉおおぉぉぁぁあああぁっ!!」 川;゚ -゚)「ッ!?」 突如、兄者の身体が左に吹き飛んだ。 まるで何かに殴り飛ばされたかのように。 クーの振るった右腕は脇腹を抉り取り、血煙を巻き上げて抜ける。 クーの瞳が驚愕に見開かれた。 そんな。兄者の足は、床に着いていなかった筈……と。 直後。巻き上げられた血煙が横に流れ――― そして彼女の頬を打っていった小さな衝撃に、彼女ははっと息を呑んだ。 川;゚ -゚)「……風、だと?」 (;´,_ゝ`)「あぁ」 吹き飛んだ先、兄者はゆっくりと立ち上がる。 手で抑えた脇腹からは血が溢れ、指の間にも紅の筋が見えた。 (;´,_ゝ`)「避けようがなかったからな。仕方なく、自分の身体を吹き飛ばした。 ダメージは少なくないが……背に腹は変えられまい。命を捨てるには、まだ惜しいからな」 咳をすると、少量の血が口から吐き出された。 それでも、兄者は笑う。まだ、自分の優位を確信しているようだ。 ( ´,_ゝ`)「しかし、惜しかったなぁ? ここで仕留められていれば、まだ勝機もあったろうに。 悔しいか? 悔しいだろうなぁ。数少ないチャンスを、逃してしまったのだからな」 川メ゚ -゚)「あぁ、悔しいな。 だがチャンスは、自分から作るさ―――数が少ないなら、増やしてやるまでだ」 言いつつ、彼女は兄者に右腕を向ける。 兄者はそのアクションに警戒し、足を構えた。 川メ゚ -゚)(次は―――) 力を入れる。 すると、伸ばした右腕の前に、小さな水の球体が発生した。 ( ´_ゝ`)「……何だ?」 不審げに眉根を寄せる兄者。 それに対し、クーが発生させた水の球はというと ( ´_ゝ`)「大きくなっている?」 徐々に徐々に、そのサイズを成長させていた。 川メ゚ -゚)「その通りだが」 ( ´_ゝ`)「何を考えている。氷ならまだしも、水の球などで……」 川メ゚ -゚)「さぁな、お楽しみだ。 だが兄者、水を舐めてると痛い目を見るぞ? まぁ元より、痛い目を見せてやるつもりなのだがな」 会話をする内にも、水の球はどんどんと肥大していく。 そしてやがて、そのサイズが彼女の背丈を越し――― 川 ゚ -゚)「とくと味わえ」 それが、放たれた。 ( ´_ゝ`)「ふん。何を考えているかは知らんが……水程度で何が出来る」 対する兄者は、足を一振り。 その軽いアクションによって、風の刃が発生。 硬度も何もない水の球は、ド真ん中から断裂。 凄まじい勢いで水をぶち撒け、それは水のカーテンを空間に生み出した。 しかしその即席の滝を、複数の何かがぶち破って兄者に飛来する。 ( ´_ゝ`)「ぬっ!?」 飛んできたそれらを、兄者はその足を以てして回避し、そして粉砕。 しかし尚も、滝を突き破って飛来するそれは続いた。 ( ´_ゝ`)「なるほど、これが本命か!」 飛来してきたそれは、鋭利な氷の刃だ。 無数に飛来するそれらを、兄者は次々と捌いていく。 ( ´,_ゝ`)「だが、これもダメだったようだな!」 川メ゚ -゚)「そうかな?」 ふっと、クーは両腕を広げた。 それと同時、床にぶち撒けられた水が、兄者を包む濃霧と化す。 ( ´_ゝ`)「……また目晦ましか! くだらない!」 兄者は旋風を起こし、霧を散らそうと試みた。 しかしその霧は、まるで兄者に纏わりつくかのように蠢いて離れない。 兄者は舌打ちをすると、目の前の白い空間を睨みつける。 ( ´_ゝ`)「……ただの霧じゃない、か?」 異常なほど濃密な霧は視界をほぼ完全に埋め尽くし、クーの姿を彼の眼から隠していた。 軽く駆けてみる。が、やはり視界は変わらない。 風を起こしても跳んでみても、霧は白く厚く、彼の世界を染め上げていた。 ( ´_ゝ`)「ふむ」 呟いて、彼は足を止めた。 クーの考えている事は明確だ。 霧で視界を遮り、死角から攻撃を仕掛けること。 ならば、むやみやたらと動き回るのは得策ではない。 疲れてしまえば、そこを突かれてしまう。 ならば極力動かないようにして、攻撃を仕掛けてきた際の回避の為に、体力は残しておくべきだ。 それに、動かなくとも、攻撃を回避する自信はある。 この両足を以てすれば、クーの攻撃を視覚してからでも十分に回避出来るのだから。 そして攻撃を回避すれば、こちらのターンだ。 攻撃の方向から、奴の場所は概ね特定出来る。 そこをまるごと、この霧ごと吹き飛ばしてしまえば良い。 ( ´_ゝ`)「慌てる必要はないな。……来るが良い」 そして攻め来た時が、お前の最期だ。 ―――足に力を入れる事もなく、そこに佇む。 眼はどこを見るでもなく、出来る限りの広域をぼんやりと捉えていた。 無気力なその姿は、「かかってこい」という意思表示だ。 奇妙なほどの静寂が訪れる。 数分が経過しても、その静寂は破られない。 濃霧の中に動きも見られず、流石に兄者も眉根を寄せた。 ( ´_ゝ`)「随分と焦らすな。集中力が途切れたところを狙うつもりか? つくづく卑怯者だな、クー。やることが姑息だぞ」 分かってはいたが、返って来る音はない。 ただ霧だけが、ゆらゆらと不気味に蠢いただけだった。 ゆらりゆらり、流れて行く細かい水の粒。 その流れはまるで、自分の周囲に集まって来るかのようだった。 いや、それは「ようだった」ではなく――― ( ´_ゝ`)「霧が、集束している?」 突然。まるでその言葉が引き金になったかのように。 霧の流れが高速になり、兄者に集束。そして―――彼の両足が、凍結した。 (;´_ゝ`)「!? 何!?」 慌てて動こうとするが、出来ない。 兄者の両足を包んだ分厚い氷は床とも繋がり、兄者の移動の一切を制止していた。 (;´_ゝ`)「くそ、小賢しい……! こんなもの、すぐに破壊してくれる!」 両足に力を込める。だが、やはり動く事は出来ない。 力を抜いて伸ばしきっていた足は僅かに曲げる事すら出来ず、力を込める事も許されない。 両足を、完全に封じてられていた。 「姑息な手でも何でも、勝てれば良いのさ。兄者。 卑怯者とでも、何とでも呼ぶが良い。それでも私は前へ進む」 (;´_ゝ`)「―――チィッ!!」 手を足に向け、小規模の風の刃を発生させる。 しかしそれでも厚く硬い氷には細いヒビ程度しか入らず、風の刃は耳障りな音を経てて砕けた。 舌打ちして、もう一度手を足に向けるが――― 川メ゚ -゚)「させるものか」 いつの間に接近していたのか。 若干薄くなった霧のすぐ向こう側に、クーの影が浮かび上がった。 その手には、先ほど弾き飛ばされた刀も握られている。 (;´_ゝ`)「クソッ!!」 足に向けていた手を、影に向けた。 そして連続で風の刃が霧を切り裂いていくが―――影は風の刃を難なく砕いていく。 全ての風の刃が粉砕されると、クーは兄者に暇を与えず、霧の壁を破って接近。 未だ行動を取れない兄者の頭蓋狙って、右腕を撃ち伸ばす。 だが。 「させるか」 声。同時に霧の中から腕が飛び出て、伸び行くクーの右腕の二の腕を掴んだ。 そして間髪置かずして足が払われ、彼女の身体は右腕を掴まれたまま倒れ込む。 川;゚ -゚)「ッ!?」 驚愕に息を呑みながらも、彼女はすぐに体勢を立て直して跳び退る。 直後、彼女の身体があった空間を、斬撃のような回し蹴りが薙いでいった。 (´<_` )「……良かった、間に合った」 川;゚ -゚)「弟者か……!」 クーと兄者の間、丁度兄者を護るような位置で構える弟者。 先程の戦闘で、血を幾分か失ってしまったのか、その肌はまるで周囲の霧のように白い。 だが表情に苦痛の色はない。 身体も、軋む事なく稼働している。 死ぬほどのダメージを与えぬ限り、彼はずっと最初の状態のまま戦えるのだ。 (´<_` )「焦ったよ。霧で、何も見えなくなってしまったのだからな。 ずっと、音だけを頼りに霧の中を奔走していた」 川;゚ -゚)「そのまま走っていれば良かったものを……」 (´<_` )「それは無理だ。兄者を失ってしまっては、私は何も出来なくなってしまう」 そこで弟者は、クーに視線を定めたまま、背後の兄者に言葉を飛ばす。 (´<_` )「さっさとその氷をどうにかしてくれ、兄者。 ここは私が受け持つが……きっと長くは持たないぞ」 (;´_ゝ`)「……すまない、弟者。感謝する」 (´<_` )「感謝なぞいらん。急げ」 短く残し、そして弟者は駆けた。 クーは刀を弟者に向け、待ち構える。 川メ゚ -゚)「兄者が動けるようになる前に、潰させてもらう。 ―――悪く思うな、弟者」 (´<_` )「相手の心配をするとは、余裕だな」 駆ける足、次の一歩を踏み込みにして正拳を放った。 クーはその拳を刀の腹で受け、そして横へと流す。 すかさずクーは刀を翻そうとしたが―――脇腹に走った鈍痛が、それを拒んだ。 川;゚ -゚)「ぐっ!?」 脇腹に突き刺さっていたのは、弟者の肘。 拳を流された弟者は、咄嗟に肘を曲げて、クーの脇腹を穿ったのだ。 クーの動きが、ほんの僅かに鈍る。 その間に、弟者は畳みかけるように攻撃を繰り出した。 (´<_` )「―――ッ!」 アッパーカットの形で拳を跳ね上げる。 クーは上半身を反らす形でその拳を回避―――直後に、その腹を逆の拳が抉った。 呻きを漏らして、僅かに身体をくの字に折り曲げたクー。 その背を、弟者の後ろ回し蹴りが蹴りつける。 川;゚ -゚)「が……はっ!」 体内から空気が抜け出すような感覚。 しかし実際、口端から滴り落ちたのは空気ではなく、血液であった。 川;゚ -゚)「―――チィッ!」 身体を反らせたような状態から、旋回するようにして刀を振るう。 遠心力と速度を身に付け、空気を裂いて迫る刃は、縦に構えられた弟者の腕に深い線を刻んだ。 (´<_` )「無駄だな。私に痛みはない。 致命傷となる傷以外、私には意味がないよ」 弟者の言葉を聞きつつも、クーは更に刀を横薙ぎにする。 弟者はやはり、それを腕で防御。青白い肌が裂け、紅い奔流が滴り落ちた。 しかし弟者に動揺はない。 出血など、まるで気にしていないようだ。 川メ゚ -゚)(痛みがないとは言え、奴も人間。 生存するのに必要最低限の血液が流れ出れば死ぬ筈だ。 問題は―――) 鈍い音が響き、突如、彼女の身体が腹からくの字に折れ曲がる。 抉るような弟者の拳が、彼女の腹を捉えていた。 苦痛に一瞬、意識にモザイクがかかり、それを跳ね飛ばす。 喉の奥から這い上がってきた呻きを血液と共に吐き出して、彼女は更に刀を振るった。 川メ゚ -゚)(それまで私が耐えられるかどうかだ) 血液を枯らすのが先か、命が果てるのが先か。 妙に冷たい頭で、そう思考した。 その時。 (´<_` )「―――刀に頼り過ぎだな」 刀を振るった腕が、ぴたりと停止した。 見れば、弟者が合わせた両手の間に、己の青い刀が挟み込まれている。 川;゚ -゚)「何だt―――」 言葉は最後まで続かない。 弟者が刀を捕らえたまま、クーの脇腹に膝をぶち込んだからだ。 体勢が少し前に崩れたところで、その顎を蹴り上げる形で逆の膝が跳ね上がる。 膝は見事にヒットし―――しかしそこで仰け反る事は許されない。 後ろに傾きかけた彼女の頭を、弟者は掴み、そして頭突きを喰らわせた。 クーは連続で襲い来る苦痛に、思わず膝を折りかけた。 しかし歯を食い縛って立ち直そうとして―――次の瞬間には、地面に倒れていた。 くるぶしに鈍痛が走っている。足を払われたのだ。 倒れた彼女に、弟者は踵を振り上げ、そして落とす。 彼女はそれを、転がる事で何とか回避。 (´<_` )「やたらしぶとい。さっさと死ね」 川;゚ -゚)「……クソッ!」 数回転の後、立ち上がろうと試みた。 しかし弟者の前蹴りが肩を捉え、吹き飛ぶ。立ち上がれない。 舌打ちして、倒れた状態のまま刀を振るおうとする。 しかし刃を踏みつけられ、振るう事さえ許されなかった。 川;゚ -゚)「速―――」 言葉は最後まで続かず、呻きとなる。 弟者が、彼女の脇腹を蹴り飛ばした為だ。 彼女は数度転がった後、腹を抑えて苦しげに咳込んだ。 口から出る物は詰まった呼吸と、そして血液だ。 やがて咳は止み、クーは弟者を睨みつける。 苦痛に耐える為に食い縛った歯からは、低い呻きと血が滲み出ていた。 (´<_` )「速くもなるさ。お前と違って、私には余裕はないのだからな」 川;゚ -゚)「何……だと?」 (´<_` )「痛みはないが、出血量くらいは分かるさ。 もうあまり、私は血を流せない。出血許容量が半分を切った。 だから血を流す前に、血を流させる存在を消さねばならないのさ」 言って、弟者は倒れたクーに歩み寄ろうとする。 川;゚ -゚)「くっ!」 クーは倒れた状態のまま、右腕で床を軽く叩く。 すると弟者の足元の床が爆ぜて、幾本もの氷筍が顔を出した。 弟者は軽く後退のステップを踏んで回避。 しかし氷筍は弟者を追うようにして、次々と床から生え出てくる。 (´<_` )「……ち。鬱陶しい」 弟者が離れていくその間に、クーは立ち上がって体勢を立て直していた。 彼女が右腕を軽く振るう。 すると無数に乱立していた氷筍が、一斉に溶解し水となった。 (´<_` )「む―――?」 弟者が眉根を寄せた、その瞬間。 それらの水が、一瞬で凍結する。 (´<_` )「!!」 咄嗟に、跳び上がって回避しようと試みた。 だが 川メ゚ -゚)「逃がすか!」 クーが右腕を軽く上げると、弟者の足を追って水が伸び上がる。 それは弟者の足に絡み付き―――そして、それも凍りついた。 (´<_` )「ちィ―――」 川メ゚ -゚)「終わらせてもらうぞ!!」 動けぬ弟者に向けて、右腕を構えて駆ける。 そして頭を粉砕せんと、異形を振り上げて――― 背後から、硬い破砕音。 それとほぼ同時に響く、風切り音。 そして、一瞬。 川;゚ -゚)「がっ……!!」 クーの背中が斜めに深く切り裂かれ、大量の血が爆ぜた。 彼女は苦痛に表情を歪ませると、ゆっくりと前に倒れ込む。 川; - )「な……に……・?」 熱い呼吸を冷たい床に這わせて、クーは前を見やった。 弟者は冷たい無感情な瞳でクーを見下ろし――― (´<_` )「遅い。危なかったぞ、兄者」 言葉の直後、クーの身体の横を足音が通過していく。 緑色の異形が奏でる足音は、金属質なそれだった。 ( ´_ゝ`)「すまなかった。思った以上に、氷が厚く硬くてな」 (´<_` )「そうか。まぁ、良い。間に合ってくれたのだから。 もう少しでも遅ければ、私は殺されていたろうさ。 この女は、私の予想よりずっと強かった」 ( ´_ゝ`)「あぁ、恐ろしい人間だよ、こいつは。 私達二人を相手にして、生き続ける―――どころか、殺しにかかってきているのだからな」 (´<_` )「……なるほど、やはりこいつは、“管理人”にとっての、最大の危険因子だな。 ここで殺しておかねばなるまい」 ( ´_ゝ`)「あぁ。そのつもりだ」 兄者が、ゆっくりと足を後ろに引く。 そして足に力を込めると、 ( ´,_ゝ`)「善戦したが、これまでだ」 口元を歪めて、言った。 クーはそれを見て、悔しげに歯を噛む。 川; - )「こんなところで―――」 こんなところで、終わるわけには、いかないんだ。 やや色が薄れ、ぼやけた視界の隅に映るのは、妹や仲間達。 姉として、リーダーとして、彼らを護らねばならないのだ。 ファーザーとの約束を、護らねばならないのだ。 ここで死んでは、全てが終わってしまう。 今までの自分達の全てが、崩れて消えて、意味を失ってしまう。 死んではならない――― 生きねば、ならない。 勝たねばならない! ( ´,_ゝ`)「死ね、クー」 引かれた足が、残像と音を残して振り抜かれた。 一瞬。発生する、サイズも速度も威力も特大の、風の刃。 それは倒れたクーの身体を微塵に引き裂こうとして――― 川# - )「ォ―――アァァアアアァアァッ!!」 咆哮と同時。彼女の前に突如現れた巨大な氷の壁に阻まれ、壁ともども砕け散った。 ( ´_ゝ`)「むっ!?」 兄者はその状況に警戒し、再度足を引く。 だが ( ´_ゝ`)「!」 兄者の視界が一瞬で白に埋まった。 兄者は素早く後退。直後、彼が立っていた床に突き刺さったのは、鋭く尖った雹だった。 ( ´_ゝ`)「……何だと」 彼の世界の色は白。 吹き荒れるは突如発生した雹の嵐。 ( ´_ゝ`)「―――いや、どうせまた、眼晦ましの小細工か。くだらない事を」 右手を前に突き出し、“力”を込める。 間もなく連続して発生したのは、風の塊。 それらは雹の嵐を吹き飛ばし――― ( ´_ゝ`)「む?」 その先に、クーの姿はなかった。 ( ´_ゝ`)「どこに―――」 その時。背中を走った刺すような寒気に、声が喉に詰まる。 背後から、何かが見ている。いや、距離を詰めてきている。 分かっていても、振り返れない。 鋭すぎて、そして冷たすぎる背後の存在は、恐怖そのものであった。 来ている。 狙っているのは心臓。背中から、心臓を破壊しにかかるつもりだ。 しかしもう間に合わない。振り返る時間も、逃げ出す時間も与えられていない。 死ぬ――― (´<_` )「兄者!!」 声と同時。左肩を引っ張られて、身体が左に流れる。 一瞬。凄まじい速度で青の異形が、兄者の右肩を深く噛み千切って前へと抜けた。 (;´_ゝ`)「づッ……!」 痛みに表情を歪ませる兄者。 しかしその苦痛のおかげで、恐怖が幾分か薄れたようだ。 軋む脚を動かして、全力でその場から離脱する。 直後に、立っていた床が氷筍によって破壊された。 すぐに弟者もクーから離れ、兄者に並ぶ。 感情のないその瞳は鋭く細められ、全身の筋肉は既に撓められていた。 (´<_` )「……まだ動けたのか? 背中の傷からの出血は、重大なものだった筈だが」 言って、それから気付いた。 クーの足元に、血溜りがない―――あれだけの傷が、血を吐くのを辞めている。 川#゚ -゚)「動けなくとも、私は動かねばならないんだよ。 感情のない貴様には、分からないだろうな」 彼女の背中に走る深い傷痕。 そこから溢れ出ていた血液は既に、凝固していた。 ……いや、違う。 (´<_` )「……なるほど。傷口付近の血液を凍結させたのか」 川#゚ -゚)「…………………」 (´<_` )「考えたじゃないか。しかし、良いのか? 傷口を凍結させれば、確かに出血は止まる。 だが、そこは―――」 川#゚ -゚)「時間をかければ壊死するだろう。そんな事は分かっている。 分かっている上で、こうしているんだ。今、戦い続ける為に。 私は今ここで、こんなところで足を止めるわけにはいかないんだよ」 (´<_` )「……大した強さだな」 荒い息を吐くクーを見て、弟者は不思議な感覚を覚えた。 むず痒い、何かが疼くような感覚。 そして、妙な寂寥感と空虚感―――まるで自分の中に、隙間があるかのような。 この感覚を、弟者は知っている。 そしてどうにか、隙間を埋められないものかと思考している。 決して埋められない隙間を。自分には、埋め方の分からない隙間を。 抜け落ちた『感情』というピースが作り出した、どこまでも大きな隙間を。 気付けば弟者は、その薄い唇から言葉を吐き出していた。 (´<_` )「クー。お前は何故、そんなに戦える?」 川#゚ -゚)「……?」 ( ´_ゝ`)「弟者?」 (´<_` )「戦う必要なんてない。戦う意味すらない。 だというのに、自身の身を痛めつけてまで戦う理由は何だ? 何が、何の力が、お前を動かしている?」 川#゚ -゚)「復讐だ。お前達が、一番よく知っているだろう」 (´<_` )「それが分からないというのだよ。何の意味も、メリットもないじゃないか。 復讐したところでどうなる? ファーザーは返ってこないし、ホームだって戻らない。 どころか、復讐の為の戦いで、自身の命や仲間を失いかねないじゃないか」 ( ´_ゝ`)「……おい、弟者。お前は何を―――」 (´<_` )「異能者の闘争を無視して、平和に暮らそうとは思わないのか? そうすればお前も仲間も、命は危険に晒されない。人としての、新たな未来も築けるだろう。 ファーザーもそれを望んでいる、とは思わないのか? お前がそうまでして戦い続ける理由は、そこにあるのか?」 なかった筈の熱意すら感じられる、弟者の問い。 それに対して、クーは 川#゚ -゚)「くだらない。 関係ないんだよ、そんな理屈は」 斬り捨てた。 (´<_` )「……何?」 川#゚ -゚)「分かってるさ、そんな事はな。 あぁ、この戦いで得られるものなどないだろうな。失われていくものばかりだ。 しかしな、それでも、この戦いに背を向ける事は出来ないんだよ」 川#゚ -゚)「そんな事をして、これからの生を過ごしたところで―――それはただの、命の浪費だ。 私は死ぬまで『私』として生きる事は出来ないだろうし、満足のいく人生などは作れない。 ブーンの言葉を借りるとすれば、それは『死んでいるのと同じ』だ」 (´<_` )「……意味が分からない。そんな事―――」 川#゚ -゚)「分からないだろうさ。意味なんてない。 敢えて言うならば、これは『意地』『けじめ』……感情のないお前には、分からぬ事だ。 何せ私でさえ、それの意味がよく分からないのだからな」 そして、動き出した。 右腕を突き出す。 同時に無数の氷塊がそこに発生。弾丸の如く発射された。 そして間髪置かず、クーは走り出す。 (´<_` )「…………………」 納得のいかない表情のまま、弟者は襲い来る氷塊の弾幕を横に回避。 直後、走り寄って来たクーを見て――― 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
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