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LOYAL STRAIT FLASH ♪

LOYAL STRAIT FLASH ♪

第二話

3 : ◆L2jfNrixB. :2006/09/10(日) 21:04:17.65 ID:jlydZs2k0
意外だった。彼は部活などに所属するタイプに見えなかったからだ。僕はなおさら好奇心をくすぐられた。

(´・ω・`)「、やあ、同じクラスのドクオくんだよね?同じ部活だね。よろしく」

窓外を見つめる彼に僕は声をかけてみた。

彼は少し驚いたようにこちらを向き、長い前髪の向こうから僕の眼を見た。

('A`)「ああ、こちらこそよろしく」

数回言葉を交わし、アドレスを交換した。



4 : ◆L2jfNrixB. :2006/09/10(日) 21:04:58.19 ID:jlydZs2k0

それから僕はよく彼に話しかけた。部活でもよく話しかけ、ブーンと三人で昼食をとったりもした。

が、彼の対応は「険悪にならない程度」であった。

ドクオは三人でいる時間より一人で窓の外を眺めている時間のほうが生活のウェイトを占めていた。


ある日、僕は風邪を引いて一日だけ学校を休んだことがあった。

微熱だったので、学校に行こうかと思ったが大事をとって休むことにした。

――昔の僕だったらきっとやすんでたんだろうな。

最近、学校に行くのが楽しみになっているに自分に気づいていた。

小中学校の9年間で感じえなかった楽しさ。

きっとブーンのおかげだな。

軽い頭痛のさなか、僕はそんなことを思った。



5 : ◆L2jfNrixB. :2006/09/10(日) 21:05:50.17 ID:jlydZs2k0

1日ぶりに学校に顔を出す。

クラスメートたちがつぎつぎに

「風邪大丈夫?」 「具合はどう?」 「無理スンナ」

と僕を気遣ってくれた。僕はそれらに「うん、心配ない」と、答えた。


自席につくと、珍しくドクオからこちらにやってきた。




6 : ◆L2jfNrixB. :2006/09/10(日) 21:06:23.59 ID:jlydZs2k0
('A`)「あのさ・・・風邪・・・大丈夫?」

びっくりした。まさかドクオから話しかけてくるとは。

(´・ω・`)「ああ、うん。だいじょうぶだよ、ありがとね」

('A`)「そっか、よかった。」

ど微笑み、また彼は窓の外に眼をやった。そしてドクオは長い後ろ髪を掻き揚げた。彼は照れるとそうする癖があるようだ。

(´・ω・`)「そういえば、ブーンは?」

('A`)「ああ・・・昨日から忌引きらしいよ」

と、いうことはドクオは昨日はずっと一人だったのだろう。すこし気の毒におもった。

(´・ω・`)「そうか、そうだね。ブーンが休む理由に風邪はないよねw」

('A`)「たしかにw」

ふたりで笑った。



7 : ◆L2jfNrixB. :2006/09/10(日) 21:07:09.42 ID:jlydZs2k0






それから僕らは次第に打ち解け、僕ら三人は親密な仲になっていった。

気づけばもう、吐く息が白くなる季節だった。




8 : ◆L2jfNrixB. :2006/09/10(日) 21:07:41.69 ID:jlydZs2k0


この学校の弓道場は体育館うらに在り、冬はとても寒い。

('A`)「寒い日は弓道たるいな・・・」

ドクオがそうぼやきながら矢筒から矢を取り、ほとんど誰もいない射場に立った。


(´・ω・`)「こんな寒い日は賭けでもやろうか」

('A`)「いいね、俄然やる気でてきた」


僕らはたまにこうしてどちらがより的の中心く近に当たるかを競い、ジュースのおごりを賭けた。

ドクオは射位に立ち、弓をゆっくりとおでこの位置まで射ち起こす。きりきりと音を立て引き分ける。

矢はドクオの唇の辺りまで下がってきて軽くほほに触れる。

――数秒の静寂

ヒュパッっという快い音とともに勢い良く矢が発射された。

28mはなれた的にスパン!と音を立て、中心から少し右上にずれたところに刺さった。



9 : ◆L2jfNrixB. :2006/09/10(日) 21:08:34.63 ID:jlydZs2k0

(´・ω・`)「アッー!クソ、ドクオやるね」

('A`)「今日調子いいわ、俺」


ドクオが少し照れくさそうに後ろ髪を掻き揚げた。



(´・ω・`)「さて僕のターンだ」

僕も矢筒から矢を取り、先ほど彼が当てた的を狙う。

ヒュパッと軽快な音を立て、矢が飛んでいくが、惜しくもはずしてしまった。

(´・ω・`)「あれれー?」

('A`)「今日はショボンのおごりだな」




11 : ◆L2jfNrixB. :2006/09/10(日) 21:10:23.22 ID:jlydZs2k0

――ガララ・・・

古くなって重くなった引き戸を開け、誰かが射場に入ってきた。


ξ゚△゚)ξ「あら、あんたたちまたジュース賭けてやってるの?」

ツンだ。弓道部に所属する校内でもうわさの美人。

(´・ω・`)「まぁねー、負けちゃったけど」

ξ゚△゚)ξ「じゃ、私も混ぜなさいよ」

というと、彼女は矢を取り、僕らと同じ的に狙いを定めた。

僕の心に芽生える希望。あれで僕より的から遠かったら・・・僕のおごりはなくなる。あまよくば僕もおごってもらえる・・・!

スパン!

僕の淡い希望は砕かれた。

('A`)(´・ω・`)「あ」

矢はきれいに的の中心へ吸い込まれていった。




13 : ◆L2jfNrixB. :2006/09/10(日) 21:13:35.78 ID:jlydZs2k0
僕は二人に奢ることとなった。今思い出しても悔しい。

(´・ω・`)「ツンにおごらなきゃいけないのはすげー良くわかる。真ん中に当てたからよー
      でもよーなんでドクオにまでおごらなきゃいけないんだよォ!わけわかんねーよ!クソックソッ!」

自販機を殴ってみる。結果手が痛くなった。

その様子を見て二人がわらって

('∀`)「負けは負けだぜ」

ξ゚△゚)ξ「ご馳走さま~」

といってきた。

はぁ、と僕はため息をつき軽くなった財布をポケットにしまった。



僕は満たされていた。中学のとき、いくら遊んでも、いくら友人と話しても満たされていなかった僕。

だけど、15年間満たされることのなかった僕の心はそのとき、確かに満たされていた。




14 : ◆L2jfNrixB. :2006/09/10(日) 21:14:30.84 ID:jlydZs2k0
・・・すこし寝ていたみたいだ。

僕は自販の横のベンチで自販にもたれかかっていた。

軽い頭痛。すぐ収まるだろう。

僕は重力に負けそうなまぶたを懸命に持ち上げ、また歩き出した。


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