第一話4 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 11:16:16.72 ID:xJFHykxJ01/6 「こちらチャーリー。前方、異常なし」 川 ゚ -゚)「こちらブラボー。後方、異常なし」 機械的なやり取りのあと、私は静かに無線を切る。 急速に流れていく景色。 どこまでも広がる蒼。 機体の奏でる振動が心地よい。 目標地点まではまだしばらく時間がある。 私は操縦をオートパイロットに切り替えると、背もたれに寄りかかり空を見上げた。 キャノピー越しに見える空は、薄い蒼。 蒼穹の色。 私の一番好きな色。 私の一番好きな場所。 5 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 11:22:35.07 ID:xJFHykxJ0 「……ザザ……前方に敵機、迎撃する」 川 ゚ -゚)「了解」 無線が入ると同時に、操縦モードを手動に切り替える。 敵機を目視。 前方に2機。 まだ距離がある。 敵の動きをじっと待つ。 片方が右へ。 もう一方は上昇。 前方の僚機が右へ進路をとる。 やれやれ。 難しい敵を押し付けて。 私は上昇した敵に向かい進路をとる。 体にかかるGが心地よい。 6 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 11:24:10.59 ID:xJFHykxJ0 上昇した敵機が、上昇中のこちらに向けて下降する。 距離が縮まる。 敵機の機首から閃光。 撃ってきた。 しかし、遠い。 そんな距離ではあたらない。 私はフラップを踏み、減速。 機首を下に向け、被弾した振りをして、きりもみしながら落ちていく。 視界が回る。 世界が回る。 そこで機首を持ち上げ、上昇。 急激な高度変化に、機体が悲鳴を上げる。 いい子だから我慢して。 7 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 11:25:28.37 ID:xJFHykxJ0 機体の悲鳴が止まる。 いい子だ。 きりもみしながら上昇。 周囲を索敵。 いた。 右下方。 私の僚機の方へ向かっている。 馬鹿な奴だ。 私は落ちてなどいない。 フラップを立て続けに踏み、急減速。 機首を下へ。 そのまま、敵機に向かって急降下。 距離が縮まったところでトリガーを数度引く。 私の愛機から出た火線がまっすぐに敵機へ。 命中。 敵機は煙を出して落ちていく。 8 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 11:27:36.53 ID:xJFHykxJ0 「……ザザ……ブラボー……応援を……」 川 ゚ -゚)「了解。すぐに行く」 「はや……う……ガガ………ピ――――――」 視界の先で、僚機が爆発。 すまない。 一足遅かった。 それにしても、あいつを落とすとはなかなかだ。 久しぶりに歯ごたえのありそうな相手。 そう思った矢先、敵機は旋回して空域を離脱していく。 川 ゚ -゚)「たいした引き際だ。やるな」 敵機が地平線の先に消えた。 私は背面飛行し、地上に堕ちた僚機の残骸を見つめながら帰路についた。 9 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 11:35:25.29 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「クー少尉、帰還した」 規定のセリフをつぶやいて、私は愛機を降りた。 足には、滑走路の硬い地面の感触。 この感触を味わうたびに、地上に戻ってきたことを後悔する。 大地から伝わる重力。 地上に私を縛り付ける呪縛。 10 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 11:36:48.36 ID:xJFHykxJ0 ( ´ー`)「お帰り。今回も一人かい?」 川 ゚ -゚)「……僚機は名誉の戦死を遂げられた」 ( ´ー`)「お前が殺したんだろ?」 川 ゚ -゚)「……」 ( ´ー`)「やだねぇ……冗談だよ」 川 ゚ -゚)「……」 私は彼に背を向けて、基地本部へ報告に向かう。 ( ´ー`)「おー、やだやだ。これだから『パロン』は……」 同僚のいやみを聞き流し、私は滑走路を進む。 12 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 11:38:55.79 ID:xJFHykxJ0 ミ,,゚Д゚彡「うむ。ご苦労」 川 ゚ -゚)「それでは失礼します」 本部で上官に規定通りの簡単な報告を済まして、私は格納庫へ向かう。 本部の閑散とした廊下を抜け、外に出る。 格納庫は、本部棟から目と鼻の先。 _ ( ゚∀゚)「よう!今日も派手に使ってくれたね!」 格納庫内では、愛機が整備兵に点検を受けていた。 にこやかな顔をした整備兵が私に話しかける。 川 ゚ -゚)「……すまん」 _ ( ゚∀゚)「いいってことよ!これが俺の仕事!」 そう言って、彼はまた整備に没頭する。 私は格納庫の床に座り、静かにその様子を眺め続けた。 13 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 11:39:42.45 ID:xJFHykxJ0 _ ( ゚∀゚)「今月の撃墜数12!この基地じゃ独壇場だな!」 川 ゚ -゚)「……」 整備が終わったらしく、後片付けしながら彼は言う。 _ ( ゚∀゚)「この調子じゃ、VIPに配属されるのも時間の問題だな!」 川 ゚ -゚)「……」 _ ( ゚∀゚)「そん時は俺も連れってってくれよ!お前の機体、気に入ってんだからさ!」 一人でべらべらとまくし立てて、彼は格納庫の外に消えた。 楽な奴でいい。 私はそう思った。 16 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 11:46:38.27 ID:xJFHykxJ0 ミ,,゚Д゚彡「クー少尉、貴官の『VIP』への配属が決定した!」 川 ゚ -゚)「……はっ」 ミ,,゚Д゚彡「整備兵の長岡とともに、明後日に移動だ。おめでとう!以上」 川 ゚ -゚)「……失礼します」 私は受け取った辞令を手に、上官室を出た。 同僚の冷たい視線をから逃げるように格納庫へ向かう。 格納庫内では、いつものようにあいつが私の愛機の整備をしていた。 _ ( ゚∀゚)「よう!『VIP』への配属おめでとう!って言っても俺もだけど!あははは!」 川 ゚ -゚)「……」 相変わらず一人でしゃべるしゃべる。 私にとっても、それが楽でいいのだが。 18 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 11:52:46.45 ID:xJFHykxJ0 _ ( ゚∀゚)「ニーソク社私設軍エリート飛行部隊『VIP』! いいね!いいね!! 『VIP』は最前線基地に配備されているから、お前の撃墜数はもっと上がるぜ!」 川 ゚ -゚)「……」 _ ( ゚∀゚)「飛行機械もいっぱいあるんだろ!?楽しみだ!!」 川 ゚ -゚)「……」 彼のようにまっすぐに感情を表に出せたら。 私はつくづくそう思う。 ジャンル別一覧
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