第五話69 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 14:32:32.41 ID:xJFHykxJ05/6 ( ^ω^)「それではミーティングを始めるお」 ( ´∀`)「了解モナー」 ( ,,゚Д゚)「早く始めろゴルァ!」 川 ゚ -゚)「……」 基地のミーティング室。 そこにいるのはVIPの幹部。 そして、なぜか私。 あの夜以来、ついにドクオは帰ってこなかった。 76 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:24:18.61 ID:xJFHykxJ0 ( ^ω^)「今日はお客様がいるお!」 ( ,,゚Д゚)「もったいぶるなゴルァ!」 ( ´∀`)「早く紹介するモナー」 川 ゚ -゚)「……」 場違いの空気。 私は、早くここから出たかった。 77 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:24:57.89 ID:xJFHykxJ0 ( ^ω^)「お客様はこの方だお!」 (´・ω・`)ノ「やあ」 ( ,,゚Д゚)「ついに来たかゴルァ!」 ( ´∀`)「ニーソク社社長だモナー」 川 ゚ -゚)「……」 どういうことだ? なぜニーソク社社長がここにいる? 78 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:25:31.41 ID:xJFHykxJ0 (´・ω・`)「少々状況が悪くてね。早急に作戦を実行する」 ( ´∀`)「ついにこの時が来たモナー」 ( ,,゚Д゚)「燃えるぞゴルァ!」 川 ゚ -゚)「……」 どういうことだ? 話がまったく読めない。 79 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:26:35.24 ID:xJFHykxJ0 ( ^ω^)「初めての人間もいるから、一から説明するお」 ξ゚△゚)ξ「ブーンさん。ここは私から」 ( ^ω^)「お。頼むお」 巻き毛の少女が隊長の傍らに立つ。 そして、背後のホワイトボードを使い、事の真相を話し始める。 ξ゚△゚)ξ「私とショボン社長、そしてクー少尉が『パロン』であることは周知の事実であります。 遺伝子を操作され、完璧を目指し人工的に造られた人間。それが我々『パロン』です」 ( ^ω^)( ´∀`) ( ,,゚Д゚) 川 ゚ -゚)「……」 80 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:28:23.13 ID:xJFHykxJ0 ξ゚△゚)ξ「『パロン』はニーソク社やメンヘラ社といった大企業の幹部や 政界人、行政の役人として『常人』であるあなた方を『統治』するために生まれました。 その結果できたのが、今の国家です」 ξ゚△゚)ξ「『国民が自分で考え、国家を国民が選んだ人物によって統治させる』 そんな辞書的な意味である民主主義ではなく 『国民を政治的、統治的舞台にかかわらせず、情報を一部の知識階級のみに限定する。 そして、その知識階級が国民をあるべき方向へと導いていく』 そんな20世紀の民主主義の実情を、我々『パロン』は理想としています。 完璧な人間『パロン』が、あなた方『常人』を支配、統治する。 これがこの国の実情です」 81 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:30:06.84 ID:xJFHykxJ0 (´・ω・`)「ありがとう。ここからは僕が」 そう言って、社長は秘書官の話を引き継ぐ。 (´・ω・`)「我々『パロン』は遺伝子操作で人工的に造られる。 親を持たず、人工的な機械により造り出されることから、 我々は君たち『常人』から『自然の断りに反する者達』と揶揄されている。 その頭文字をとったものが、『パロン』という名称だ。 『People Against a Law Of Nature - PALON』 我々はこの名称を甘んじて受けている。事実だからね」 82 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:30:57.81 ID:xJFHykxJ0 (´・ω・`)「しかし、先に述べた『パロン』の民主主義思想は危険だ。 20世紀の2度目の世界大戦で現れた第三帝国の『ファシズム』につながる恐れがある。 その結果、起きるのはこの世の地獄。 それを防ぐためには、我々『パロン』は消えるべきである」 ( ^ω^)「その通りだお!」 ( ,,゚Д゚)「よく言ったぞゴルァ!」 ( ´∀`)「よ!社長!!」 83 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:31:46.41 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……」 彼は何を言っているのだろう? ショボン。 ニーソク社社長。 彼も、紛れも無い『パロン』 彼は自分の存在を否定して、何をするつもりなのだろうか? 85 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:45:33.44 ID:xJFHykxJ0 ミーティング室から移動した我々は、 見慣れたいつもの格納庫へと連れてこられた。 そこにあるのは、『VIP774』の半分の大きさはありそうな大型のミサイル。 (´・ω・`)「さて、ここに用意したのはニーソク社最新のミサイル『タシロ』です」 ( ,,゚Д゚)「でっかいぞゴルァ!」 ( ´∀`)「これはすごいモナー」 川 ゚ -゚)「……」 こんなものを搭載したら、機体の運動性能は大幅に落ちる。 彼等はいったい何を考えているのだろう? 86 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:46:25.48 ID:xJFHykxJ0 (´・ω・`)「これで首都『ニチャン』を攻撃する」 ( ^ω^)「これだけのミサイルなら、首都陥落も容易だお!」 ξ゚△゚)ξ「作戦決行は明後日。飛行機械の編成は以前に伝えたとおりです」 ( ´∀`)「オッケーだモナー」 ( ,,゚Д゚)「腕がなるぜゴルァ!」 (´・ω・`)「クー少尉には伝えていなかったね。 内容を伝えるから、僕について来たまえ」 川 ゚ -゚)「……」 そして私は、基地内にある応接室へと通された。 87 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:47:32.94 ID:xJFHykxJ0 ξ゚△゚)ξ「あなた方にはミサイルを搭載した飛行機械で首都を攻撃していただきます。 これは作戦の要であるので、『VIP』幹部とエースであるあなたにお願いします。 他の『VIP』隊員には、ミサイル搭載機の護衛を任せてあります」 (´・ω・`)「なにか聞きたいことはあるかい?」 川 ゚ -゚)「……」 (´・ω・`)「無いみたいだね。そんじゃ、話はおしまい。帰っていいよ」 私の背後で、巻き毛の秘書官が部屋のドアを開ける。 しかし、私は立ち上がらない。 聞きたいことがあるからだ。 88 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:48:52.09 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……なぜ、そんなことをする?」 (´・ω・`)「やっぱりそうなるよね」 川 ゚ -゚)「……『パロン』であるあなたが、なぜ同胞を滅ぼすようなことをする?」 (´・ω・`)「支配欲」 川 ゚ -゚)「……?」 (´・ω・`)「行過ぎた支配欲は、私のような人間を生み出す。 富・権力・名声・女。 すべてをわが手におさめたい。 私はこの支配欲に支配されている。 じきに、『パロン』は私のような人間ばかりになるだろう」 川 ゚ -゚)「……」 (´・ω・`)「それならば、私は私という存在、そして同胞の『パロン』をすべて消そうと思う」 89 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:51:36.05 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……狂っている」 (´・ω・`)「そう。狂っている。それが『パロン』だ。 自然の理に反し生まれた我々が、正常なはずが無い」 川 ゚ -゚)「……お前が死んでどうする? 死んだらお前の望むものは得られんぞ?」 (´・ω・`)「生きていても得られんさ。私と同じくらい優秀な『パロン』はいくらでもいる。 すぐに私の社長の任期は終わる。そして代わりの社長が来る。 その後私は、歴史に数多いる『元ニーソク社長』の一人に落ちぶれるのだ」 川 ゚ -゚)「……」 (´・ω・`)「それならば、私は同胞である『パロン』を滅ぼして、後の世に永久に名を残そうと思う。 悪から世界を救った男『ショボン』。 そして私の名は永遠に語り継がれる」 90 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:54:48.37 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……どうせ満たされない支配欲なら、せめて名声だけでも残そう、ということか」 (´・ω・`)「さすがは『パロン』。他の連中と違って優秀だ」 川 ゚ -゚)「……私がこのことを他の『パロン』に報告するとは考えないのか?」 (´・ω・`)「おもしろいこと言うね、君。 でもさ、アカデミーで君、言っていただろう? 『造られた私たちが、なぜ完璧なのか?』って。 その結果、君はアカデミーを追放された。 だから君は『パロン』を憎んでいる。 そんな君が、僕の邪魔をするはずは無い」 川 ゚ -゚)「……」 (´・ω・`)「それにさ、君は『失敗作』だ。 失敗作は失敗作らしく、僕に従っていればいい。 そうすれば、君も英雄として歴史に名が残る」 92 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:56:12.77 ID:xJFHykxJ0 目の前のテーブルに、茶が置かれる。 彼はそれに口を含んだ。 (´・ω・`)「うん。うまい」 ξ゚△゚)ξ「ありがとうございます」 (´・ω・`)「で、聞きたいことはもう無いのかな?」 コップをテーブルに置くと、彼は私をにらみつけた。 93 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 15:57:48.09 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……二つほど」 (´・ω・`)「続けて」 川 ゚ -゚)「……一つは作戦について。 あんな大型のミサイルを搭載するとなると、機体の運動性は格段に落ちます。 もし敵に強襲を受けた場合、勝ち目は無い」 (´・ω・`)「で?」 川 ゚ -゚)「……それならば、『VIP』幹部を護衛にして、他の隊員にミサイルを運ばせるべきです。 そのほうが、より確実に首都を落とせます」 (´・ω・`)「ふーん。失敗作が僕に意見するの?」 川 ゚ -゚)「……」 (´・ω・`)「僕のほうが優秀なんだから、君は僕の作戦に従っていればいいんだよ」 95 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 16:16:27.98 ID:xJFHykxJ0 思い出した。 『パロン』はこんな奴ばかりなのだ。 自らを完璧だと信じて疑わない彼等は、他人の意見など聞きはしない。 自分の知識に縛られ、実際に現場で動いている人間の意見など見向きもしない。 そんな人間が『完璧』であるはずが無い。 (´・ω・`)「で、もう一つは?」 川 ゚ -゚)「……ドクオ」 (´・ω・`)「ん?」 川 ゚ -゚)「……ドクオがいなくなったのは、お前の仕業か?」 96 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 16:17:18.67 ID:xJFHykxJ0 (´・ω・`)「それは否だ。 彼の行方はついにわからなかった。 惜しいことをした。 彼は『常人』にしては優秀な腕を持ったパイロットだったのにね」 川 ゚ -゚)「……」 (´・ω・`)「以上だね?帰っていいよ」 川 ゚ -゚)「……」 そして私は立ち上がる。 秘書官が開けた扉から、私は静かに外に出た。 98 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 16:19:30.23 ID:xJFHykxJ0 _ ( ゚∀゚)「おかえり!遅かったな!!」 格納庫に行くと、長岡がミサイルを見てはしゃいでいた。 _ ( ゚∀゚)「これすごいな!次の作戦はすごいのか!?」 川 ゚ -゚)「……ああ」 _ ( ゚∀゚)「おおおおお!腕が鳴るぜ!! 安心ろ!お前の愛機は俺が完璧にする!!」 99 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 16:21:09.88 ID:xJFHykxJ0 そう言って、長岡は私の機体の整備を始める。 そして私は格納庫から出て、空を見上げた。 長岡は言った。 私の愛機を完璧にしておくと。 だけど、この世に完璧などあるはずが無い。 長岡は馬鹿と呼ばれているらしい。 ブーン隊長達はショボンの口車に踊らされている。 彼等『常人』は、完璧から程遠い。 では、私たち『パロン』はどうだろう。 自らの優秀さを信じて疑わない、利己的な人間の集まり。 支配欲により狂った男。 そして、私。 私たち『パロン』が、完璧であるはずなど無い。 100 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 16:22:55.71 ID:xJFHykxJ0 私は空を見続ける。 はるか彼方まで広がる空。 蒼穹の色をした、美しい空。 白い雲が、その空間をゆったりと流れていく。 渡り鳥が、はるか彼方を夢見て渡っていく。 空には、自由がある。 誰にも罵られず、自分らしく生きられる。 私も空で生きたい。 そして、空で死にたい。 私は、永遠に空の中にいたい。 だけど、私は人間。 醜い失敗作。 私は地上に縛られている。 重力という名の呪縛が、私にそれを許さない。 この地上で、私は何をすればいい? 101 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 16:24:35.55 ID:xJFHykxJ0 _ ( ゚∀゚)「どうしたクー!どうした!?」 いつの間にか後ろにいた長岡が、レンチを片手に騒ぎ立てる。 川 ゚ -゚)「……何でもない。空を見ていただけ」 _ ( ゚∀゚)「そっか!クーはホントに空が好きだな!!」 川 ゚ -゚)「……」 _ ( ゚∀゚)「俺は飛行機械が好き!お前も好き!!だからおあいこだ!!」 何がおあいこなのだろうか? だけど、本当にこいつは楽しそう。 もしかしたら、彼は完璧な人間なのかもしれない。 いつでも笑っていて、いつでも楽しそう。 完璧という概念を省みたとき、私には彼が一番それに近いように思える。 102 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 16:26:17.01 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……なあ」 _ ( ゚∀゚)「なんだ!なんだ!!」 川 ゚ -゚)「……どうしたら、空で生きられるかな?」 _ ( ゚∀゚)「死ねばいい!死ねばいい!!」 川 ゚ -゚)「……むちゃ言うな」 _ ( ゚∀゚)「俺の母ちゃんが言ってた!人は死んだら星になるって!」 川 ゚ -゚)「……」 _ ( ゚∀゚)「星は空にある!だから、星になればいい!」 そんな話、聞いたこともなかった。 きっと、母親という存在が付いたウソだろう。 私たち『パロン』は、そんなウソなど見向きもしない。 だけど、なんと暖かで、優しさに包まれたウソだろうか。 心が満たされ、あたたかくなるウソ。 こんな私の心でも、ぬくもりで満たしてくれる。 104 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[sage] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/25(佐賀県職員) 16:27:02.74 ID:xJFHykxJ0 川 ゚ -゚)「……ふ。そうか、星になればいいのか」 _ ( ゚∀゚)「そうだ!星になれ!だけど死ぬな!!」 川 ゚ -゚)「……どっちだ」 _ ( ゚∀゚)「どっちだ!どっちだ!!」 騒ぎ立てる長岡を背に、私は再び空を見上げた。 東の空に、ポツリと一つ、一番星が輝いていた。 |