十五章5 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 22:27:26.51 ID:bSHdukQB0十五章 非日常 「いっしょに戦ってくれないか?」とショボンから話を聞いた、次の日。 鮮やかな水色に空が染まった水曜日。 ブーンは普通通りに学校に行き、普通通りに学生としての時間を終えた。 学校はいつも通りの、至極平和な空間だった。 友達と笑い、じゃれ合い、怒り、追い駆けまわり、また笑う。 そんないつも通りなはずの日常を、ブーンは妙に暖かく、そして妙に寂しく感じていた。 何だか、離れてしまったものだなぁ、と。 そして楽しい時間はすぐに過ぎ、訪れる下校の時刻。空は既に明るい橙だ。 その日の帰り道、ブーンは久々に一人の帰り道だった。 ジョルジュは学校をサボり、ギコは危険物所持だかで担任に呼び出され、ドクオは「用がある」と先に帰った。 ブーンは一人、緩みきっていた気を引き締める。 学校では襲って来ない。家にいても襲って来ない。 となると、襲われる可能性のある場所は登校・下校の途中の道のどこかだ。 彼はそう予想していた。 そして、その予想は不幸にも当たってしまう。 6 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 22:30:41.71 ID:bSHdukQB0 (;^ω^)「……うおっ。すっげぇ不自然だお」 例の十字路から少し歩いた辺り。 そこに一人の長身の男が、道の中央でたたずんでいた。 手には何かの分厚い本を持ち、彼の眼はそこに注ぎ込まれている。 男の身体は病的なほど白く、病的なほど細い。だが、そこに弱々しさは微塵も感じられない。 眼が、濁っている。表情がない。 どこか機械のような男だと、ブーンは思った。 (´<_` )「む?」 男がブーンに気付き、本から顔を上げる。 ブーンが内心身構える中、男は本を閉じないままに口を開いた。 (´<_` )「君は……うん、ブーンか。データ通り、この道を通って下校してきたな」 (;^ω^)「……お?」 (´<_` )「私は弟者という者だ。君を“管理人”という、異能者で構成される組織に勧誘したくて来た。よろしく」 弟者と名乗った男は感情のこもっていない声で言うと、すっとブーンに一歩近寄る。 いきなりの行動にブーンは焦ったが、何て事はない。弟者は握手しようと手を差し出しただけだった。 7 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 22:33:51.36 ID:bSHdukQB0 (;^ω^)「よ……よろしくだお」 弟者の手を握る。何故だか握ってしまう。 その手はひどく冷たかった。 人間の温もりではなく、機械のような冷たさがそこにはあった。 (´<_` )「ちょっと君と話がしたい。公園まで行こう」 弟者はそう言うと、ブーンの承諾も得ずに歩き始める。 ブーンも何故かそれについていく。ついて行かない事が出来なかった。 ブーンは彼の有無を言わさない言動に、困惑していた。 「組織に勧誘したくて来た」と、明らかに組織の人間だと分かっているのに、彼の言動に逆らえない。 彼は妙だった。妙過ぎた。 襲って来る事もしない。一人で喋って、近寄ったと思えば握手。そう思えば、話がしたいと勝手に歩き出す。 意味が分からない。それでも逆らえない、妙な感覚。 握手だって拒否出来たし、ついていかない事も出来たのに、ブーンにはそれが出来なかった。 9 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 22:37:03.08 ID:bSHdukQB0 ブーン達は五分もしない内に、誰もいない公園へと辿り着く。 弟者はブーンをベンチに座らせると、またも唐突に口を開いた。 (´<_` )「時に、ブーン。人間を、どう思う?」 (;^ω^)「お?」 弟者の突然の質問に、彼は唖然とする。 そんな彼を無視して、弟者は話を続けた。 (´<_` )「美しい自然を壊し、尊い数多の命を奪い、それでものうのうと生き続ける人間を。 彼らの勝手に決めた枠からちょっとでも外れれば、すぐにその存在を抹消しようとする人間を。 己達の為だけに全てを破壊し、己達がぬくぬくと生き続ける為であれば全てを抹消せんとする人間を……君はどう思う?」 何かを言おうとして、言葉が詰まる。 何も言えなかった。 彼に何を言えば良いのか分からない。 彼が自分に何を言って欲しいのか分からない。 こんな言葉……「人間は最悪だ」とでも言いたいようじゃないか。 そんなブーンの思考を読み取ったかのように、弟者はまたも口を開く。 (´<_` )「そう、人間は最悪だ。害悪だよ。この世に存在する物全てに対するパラサイトだ。 最悪な物は、害悪は、パラサイトは消滅させなければならない。そうは思わないか?」 言葉は、未だ出ない。 気持ちだけが彼の中で弾け、それでも言葉は出ない。歯痒かった。 10 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 22:41:19.92 ID:bSHdukQB0 (´<_` )「異能者という、上手く共存出来れば更に進化出来るきっかけを、怖いからという愚かな理由で殺す人間。 そのくせして、進化の為ならばどんな物もどんな命も惜しまない、破壊しか生み出せない人間。 汚い。汚すぎる。矛盾だらけの細菌。壊して殺すくせに、自分達は何も生み出さない」 憎悪、憤怒、悲愴、虚空、諦観。 そんなマイナスの感情が全て織り交ぜられた言葉を、無感情に吐き出す弟者。 機械のように。異能者でも人間でもなく、機械のように。 ブーンはいつしか彼に恐怖に似た感情を抱いていた。 (´<_` )「私は異能者ではないが、人間でもない。人間と異能者の間にいる者だ。 私達が、この世界を浄化するんだ。汚い人間を管理する、“管理人”になるんだ」 弟者はブーンへと手を伸ばす。この手を握れ、とでも言うように。 (´<_` )「“管理人”は、異能者が人間の上に立って、この世界を綺麗にしようという組織だ。 君にも“管理人”になる権利がある。あのギコという少年も、ドクオという少年も、ジョルジュという少年も、だ。 さぁ、私達と共にこの世界を浄化しよう。最高の世界を、私達と創りあげようじゃないか」 ブーンは未だ何を言おうか、考えつかない。 だが、それでも。 弟者のその手を、ブーンは払いのけた。 11 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 22:44:31.71 ID:bSHdukQB0 (´<_` )「なっ……」 ブーンは立ち上がる。 口が開く。彼は何も考えてはいない。 彼の気持ちが、彼の代わりに言葉を吐いた。 ( ^ω^)「一言で言わせてもらうと、馬鹿馬鹿しいですお。 馬鹿じゃないですかお?酷く痛々しいですお」 (´<_` )「……何?」 ( ^ω^)「馬鹿らしい事を偉そうに、さも自分達が正しいかのように語るのが、ものすごく痛々しいと言ってるんですお。 人間を管理する?僕達異能者も人間ですお?僕達も害だし、僕達自身も矛盾の塊ですお」 (´<_` )「そんな事はどうでも良い。君が何を言いたいのか……君の答えを言ってくれ」 言うべき言葉が、見付かった。 ( ^ω^)「“管理人”?そんなもん糞食らえだお」 対する弟者は、どうでも良さそうに言う。 (´<_` )「そうか、残念だ」 タンッ、と、弟者が跳ぶ。 ブーンはすぐにしゃがみ込む。 次の瞬間、ブーンの頭の一寸上を弟者の蹴りがものすごい勢いで抜けていった。 13 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 22:47:57.23 ID:bSHdukQB0 ブーンはすぐに立ち上がり、更に攻撃を仕掛けようとする弟者と距離を取る。 そして“力”を解放した。 弟者は追わず、虚ろな眼でブーンを見るのみ。 (´<_` )「“管理人”にならないと言うのなら、私は君を無理矢理にでも連行するだけだ」 ( ^ω^)「出来るならやってみろお。あんたみたいな奴は大嫌いだお」 (´<_` )「ならばやらせてもらおう。行くぞ」 同時に、二人がお互いに向かって走り出した。 ブーンが弟者に向かって横薙ぎに足を振るう。 弟者はそれを一歩だけ後ろに下がって回避。カウンターとして肘を突き出す。 それはブーンの右肩に鋭く突き刺さるが、彼はその痛みを耐える。 ブーンはすぐに蹴り上げるように足を振るう。弟者はそれをバック転で避けた。 (;^ω^)「あんたはどこの雑技団だお」 肘の入った右肩を抑えながら言う。 (´<_` )「確かに中国雑技団の動きも取り入れているから、その発言はあながち外れでもない」 ( ^ω^)「まぁ、どうでも良いお。行くお」 (´<_` )「来い」 14 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 22:51:22.19 ID:bSHdukQB0 ブーンは大きく地面を蹴り出し、弟者との距離を一瞬でゼロにする。 だが弟者はそれに慌てる事もなく、ブーンに合わせるようにして異様な速度を持った正拳を繰り出す。 (;゚ω゚)「お、おぉっ!!」 ブーンはその拳を、ギリギリの所で体をひねって回避。 体をひねった際の勢いでそのまま螺旋し、回し蹴りを叩き込もうと足を振るった。 ( ゚ω゚)「おおぉおぉぉっ!!」 変化した足の元々の速度にくわえ、遠心力を味方につけた蹴りの速度は、もはや肉眼では残像すら残らない。 その蹴りは弟者の胸を捕らえるような軌道で飛び行く。 (´<_` )「なっ―――」 だが――― (´<_` )「―――いや、まだ甘いなぁ」 ―――弟者は軽々とその蹴りを避けてみせた。 (;゚ω゚)「おっ!?」 (´<_` )「予備動作が分かりやすすぎるんだよ」 呟いて、動きを止めたブーンの腹に正拳をねじ込む。 その威力は弟者の細い体からひねり出されたものだとは信じられないほどの威力だった。 15 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 22:54:50.48 ID:bSHdukQB0 (;゚ω゚)「おぶっ……!!」 吹き飛び、落下し、転げ回る。 ブーンの体が停止したのは、どこかの子供が作ったであろう砂場の砂の山を破壊した辺りだった。 ブーンの体は、起き上がらない。 鳩尾に正拳が入ったのか、力が入らないのだ。 胃からこみ上げてくる物を抑えるので精一杯だった。 (´<_` )「君の攻撃は足以外からは来ないから、攻撃を予測しやすい。 足にさえ当たらなければ、私が攻撃を受ける事はまずない。足には触れただけでアウトだろうけどね」 弟者はブーンに歩み寄っていく。 ブーンは動けない。 (´<_` )「君の攻撃は早すぎて見えないが、見えなくともその攻撃は予測出来る。 それなりに考えたようだけど、まだまだだった。残念だね」 そこで、息を一つ。 (´<_` )「では、お開きとしようか。君の意識を止めて、意識のなくなった君を“管理人”達の所へ運ぼう。 どんな形であれ、私の任務は“少年四人の拉致”だからね」 ブーンのすぐ隣で足を止めると、弟者は右足を思いきり上げる。 踵落としの体勢だ。 16 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 22:58:23.50 ID:bSHdukQB0 (;゚ω゚)「やめろ……お!やめてくれお……!」 唸るように、ブーンは懇願する。 だがそれを無視するように、弟者は足を上げた状態のまま口を開く。 (´<_` )「安心しろ。あまり痛みはない。苦痛の前に意識が飛ぶさ」 (;゚ω゚)「―――――っ!?」 (´<_` )「じゃあ、おやすみ」 そして、彼は。 思いきり上げた踵を、振り下ろそうと――― ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 18 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:01:36.68 ID:bSHdukQB0 ('A`)「なぁ、ぃょぅ」 (=゚ω゚)「ぃょぅ?」 学校終了後の、帰り道。 早々に下校していたドクオは級友のぃょぅに声をかけた。 ('A`)「お前って確か、相当なモデルガンマニアだよな?っつーか銃狂いっつーか」 (=゚ω゚)「その言い方は気に入らないけど……まぁ、そうだょぅ?何で今更そんな事を聞くんだょぅ?」 ('A`)「いや、ちょっとな。ところで、ぃょぅ。帰り、ちょっとお前の家に寄らせてもらって良いか?」 (=゚ω゚)「別に構わないょぅ」 ぃょぅとドクオは、相当に仲が良い。 二人は中学校時からの級友で、ずっと同じクラスだったのだ。 もちろん、仲が深まったのはそれだけの理由ではない。 ドクオは異端だ。色んな意味で。 そして、ぃょぅも異端なのだ。それもまた、色んな意味で。 異端は異端同士引き合うというのか、ドクオとぃょぅはそんな点で仲が良い。 仲が良いと言うよりは、引き合っているというのが正解かもしれないが。 19 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:05:01.19 ID:bSHdukQB0 やがて二人はぃょぅ宅に着く。 ドクオはぃょぅの部屋に入ると、眉を寄せて呟いた。 ('A`)「俺が前来た時より、また銃増えてねぇか?」 ドクオの視線の先には、ケースに入れられている無数の銃。 もちろん全てモデルガンだが、その量と種類は異常であった。 (=゚ω゚)「まぁ、それなりに増えてるょぅ」 ('A`)「それなりってレベルじゃねぇだろ」 (=゚ω゚)「そうかょぅ?」 ('A`)「まぁ、増えた銃の事は良いさ。ところで、ぃょぅ。いきなりだが頼みがある」 (=゚ω゚)「ょぅ?」 ('A`)「違法改造した銃―――それも、人を殺せるレベルまで強化したヤツを二挺ほど貸してくれ」 ドクオがぃょぅ宅を尋ねた理由は、これからの戦闘の為に銃を借りに来たのだった。 それも、戦闘で扱えるような代物を。 20 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:08:23.52 ID:bSHdukQB0 彼はミンナとの戦闘で、己に遠距離用の武器があった方が良いと感じた。 相手が遠距離系の武器であった場合、自分は相手にまったく手を出せなくなってしまうから。 ブーンの“力”であれば、相手との距離なぞ意味を為さない。 ギコの“力”であれば、相手との距離を埋められるだけの“力”がある。 ジョルジュであれば、持ち前の運動神経の高さと抜群の反射神経で、相手との距離はどうにかなる。 だが、自分にそういった類の能力はない。 いかに相手の攻撃を補足し、攻撃の位置も把握出来たとしても、それはあくまでも回避の“力”でしかない。 彼はどうしても、他の三人の足手まといになる事だけは嫌だったのだ。 「銃を貸せ」というドクオの発言に、ぃょぅは眉を寄せる。 (=゚ω゚)「君は人を殺してもばれるような人間じゃないし、別に構わないけど……ょぅ」 ('A`)「別に構わないけど……何だ?」 (=゚ω゚)「何か問題発生してるのかょぅ?」 ('A`)「その通り。結構深刻な問題に巻き込まれててね。ちょっとその件で銃を貸して欲しいわけだ」 (=゚ω゚)「……大丈夫かょぅ?僕も手助けくらいするょぅ?」 23 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:11:27.97 ID:bSHdukQB0 ('A`)「いや、それは良いんだ。お前が入り込めるレベルの問題じゃあなくなってるからな」 (=゚ω゚)「そうかょぅ。だったら、僕は干渉しなぃょぅ。僕はただ君に銃を貸すだけ、だょぅ」 深いところまでは聞かない。 それはぃょぅのドクオを想っての行動であった。 ぃょぅはケースに手を伸ばす。 数秒ほどいくつかの銃を見て、それから二挺の銃を取り出した。 右手に握るは、黒い銃身に何本か銀の線が入った銃。 銃身の部分に、銀で『Nero』と彫られている。 左手に握るは、銀の銃身に何本か黒の線が入った銃。 銃身の部分に、黒で『Silber』と彫られている。 ぃょぅはその二挺を両手に握って、くるくると回す。 (=゚ω゚)「こいつらは僕が所持するカスタム銃では最高傑作の二挺だょぅ。 耐久性、威力、連射性、全てにおいて高性能だょぅ。ちなみに弾は黒と銀の鉄球だょぅ」 ('A`)「相変わらず物騒なもんを持ってるな。どこで仕入れてんだよ」 (=゚ω゚)「そんなの、いくらでも売ってるょぅ。手に入れた物をどこまで上手く扱えるかが問題なんだょぅ」 24 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:14:18.32 ID:bSHdukQB0 彼は銃を回すのを止めると、その二挺をドクオの手に握らす。 驚く事に、その銃はしっくりとドクオの手に馴染んだ。 それはまるで、生まれた頃からの相棒であったかのように。 (=゚ω゚)「あぁ、ちなみにその二挺の名前は、銃身に書いてある通りだょぅ。 黒い方がネロ、銀の方がズィルヴァだょぅ」 ('A`)「ネロに……ズィルヴァ?」 (=゚ω゚)「ょぅ。ネロはイタリア語で『黒』の意味。ズィルヴァはドイツ語で『銀』の意味、だょぅ」 ('A`)「何でイタリア語とドイツ語なんだよ……。国を揃えろよ」 (=゚ω゚)「それも考えたょぅ。でも、やっぱりネロとズィルヴァの組み合わせがかっこいいと思ったんだょぅ」 ('A`)「かっこいいと思ったからって理由かよ」 (=゚ω゚)「かっこよさは必要だょぅ。特に銃だったらかっこいい名前を付けなきゃ……」 ('A`)「あー、良い良い。語るな。お前の銃の話は長くなる」 (=゚ω゚)「ぃょぅ……」 ('A`)「で、何だっけ。ネロに、ズィルヴァ?」 (=゚ω゚)「そうだょぅ」 25 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:17:34.63 ID:bSHdukQB0 ('A`)「その名前、何かやだ。厨二病臭い」 (;=゚ω゚)「……ぃょぅ?」 ('A`)「俺はこいつらをクロ、そしてギンと呼ぶ。反論は認めない」 (;=゚ω゚)「ょぅ!?そ、そんなペットみたいな名前、やめてくれょぅ!」 ('A`)「うるせぇ。扱うのは俺だ」 (;=゚ω゚)「造ったのは僕だょぅ……」 ドクオに言っても無駄だと思ったのか、そこでぃょぅは溜め息。 そして、ドクオの眼を見詰めて言った。 (=゚ω゚)「じゃあ、ドク。何はともあれ、君に僕の子供達を預けるお。大切に扱えょぅ?」 ('A`)「任せろよ。経験豊富な一人前の男にして返してやるよ」 (=゚ω゚)「期待してるょぅ」 それから少し笑って、二人は手をパチンと合わせる。 26 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:20:30.98 ID:bSHdukQB0 (=゚ω゚)「お前に幸福も不幸もあらん事を。ドク」 ('A`)「お前に光も闇も降り注がん事を。ぃょぅ」 そして、また笑う。 中学生の頃、二人の間で生まれた別れの挨拶だった。 馬鹿馬鹿しい、子供じみた挨拶だとは分かっていても、二人はいつもそうして別れていた。 ('A`)「じゃ、俺は行くわ。銃、サンキュ」 (=゚ω゚)「良いょぅ。何やらかすつもりか知らないけど……死ぬなょぅ?」 ('A`)「っは。任せろよ」 その会話を最後として、ドクオはぃょぅの家を出る。 二挺の銃はベルトに挟み込み、上着で隠した。 ('A`)「さーて……さっさと帰るかね」 呟いて、彼は家路を辿る。 27 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:23:41.27 ID:bSHdukQB0 十分ほどして、彼はとある公園の前を通り過ぎる。 その公園はぃょぅ宅からドクオ宅への道程の途中にある、いつも人がいない公園だ。 いつもは何も気にせずに足を進めるのだが―――その時だけは、彼はその足を止めた。 ('A`)「……今、何か呻き声が聞こえたような……」 彼は視線を公園に向ける。 そこには、病的なほど白く細い、長身の見知らぬ男。 そして、よく知っているおひとよしな親友―――ブーン。 ブーンは男の足元でうめいている。その足は“力”を解放して。 対する男は踵を振り上げ、今にも振り下ろそうとしていた。 ドクオは一瞬でその状況を思考する。 ('A`)「っち……めんどくせぇな」 表情を変える事もなく、ドクオは呟いた。 ('A`)「あいつ、本っ当に運悪いな」 ドクオは素早くベルトに手を伸ばす。 そして、取り出した物は――― ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 28 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:27:22.51 ID:bSHdukQB0 ブーンは己の眼を疑った。 己に踵を振り下ろさんとしていた弟者が、いきなりその場から吹っ飛んだのだ。 (;゚ω゚)「……お?え、あ、お?」 現状を把握出来ない内に、背後から声が聞こえる。 「ほれ、さっさと起きろ」 それはよく知った声。少し冷たい親友の声。 (;^ω^)「ドクオ!?」 振り返る。そこには、右手に黒い銃―――ネロ改め、クロを握るドクオがいた。 ('A`)「そうだよドクオだよ。んな事は良いからさっさと起きろ」 ドクオがブーンに手を伸ばす。 ブーンはその手に掴まって、ようやく立ち上がった。 (;^ω^)「助かったお……」 ('A`)「っと……油断すんな。あいつ、まだ終わってねぇ」 ドクオの視線の先。 そこには、むくりと立ち上がる弟者がいた。 29 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:29:55.22 ID:bSHdukQB0 見ると、彼の右掌には穴が開き、左掌からも血が滴り落ちている。 どうやら彼はドクオの撃ち放った弾を、両掌を重ねるようにして受け止めたらしい。 弾は右掌を貫通して、左掌で止まったようだ。 (´<_` )「危ない危ない。もう少しで頭がザクロになるところだった」 ('A`)「お前……何故痛がらない?」 (´<_` )「私は異能者の出来損ないでね。そのおかげと言うべきか、痛覚というものが皆無なんだ」 ('A`)「へぇ。ま、どうでも良いけどな。で、お前はどっちだ?」 (´<_` )「ぬ?」 ('A`)「“管理人”か、“削除人”か」 (´<_` )「“管理人”だ」 ('A`)「ほぅ。ってー事は、ミンナとかプギャーみたいに、「来ないってんなら力ずく」って奴か。 で、まだ戦るつもりかい?このニ対一の状況で」 (´<_` )「それを今考えているのだ」 ('A`)「さっさと結果を出せよノロマ。クズめ」 それから五分弱の沈黙。 弟者はようやく口を開いた。 30 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:32:47.81 ID:bSHdukQB0 (´<_` )「今日の所は退かせてもらおう。流石にニ対一では私もただじゃあ済まなそうだからね。 また来るよ……とは言っても、君達は“管理人”には入ってくれなそうだけどね。 また来るかもしれないし、来ないかもしれない。とりあえずの所、今日はさようならだ」 ('A`)「あっそ。ならさっさと帰れ。目障りだ。消えろ」 (´<_` )「うむ」 弟者は向きを変えると、左掌に埋まっていた黒い銃弾を無理矢理に抜き出しながら歩く。 ブーンとドクオはその背中が見えなくなるのを確認すると、ようやく溜め息を吐いた。 ('A`)「本っ当にお前は運悪いな。俺が偶然ここを通らなきゃ、お前連れてかれてたぞ」 (;^ω^)「おー、本当に助かったお。ありがとうお」 ('A`)「構わねぇけどよ」 くるくると銃を回して、ベルトに捻じ込む。 ブーンはそれを、驚愕の眼差しで見詰める。 (;^ω^)「……それ何だお?」 対するドクオはあっけらかんと答えた。 ('A`)「銃に決まってんだろ。ちなみにこいつの名前はクロだ」 31 名前: ◆darIyNTbjA [] 投稿日:2007/02/27(火) 23:35:51.03 ID:bSHdukQB0 (;^ω^)「銃って事は見れば分かるお!名前とかどうでも良いお! 何でそんなもん持ってるのか聞いてるんだお!」 ('A`)「あぁん?お前な、銃にとって名前ってのは大切なんだぞ?いや、まぁどうでも良いな。 この銃はな、ぃょぅに借りたんだ。銃くらい持っておきたかったからな」 (;^ω^)「物騒な野郎達だお……」 ('A`)「物騒な物でも、命を護る為なら役に立つってな。最終的には扱う者の問題だ。 ま、どうでも良いがな。それよりも、さっさと帰るぞ。眠い」 ( ^ω^)「おk、把握だお」 ゆっくりと、彼らは帰路を辿る。 ブーンの心には確立しつつある気持ちがあった。 弟者の歪んだ言葉を聞いて育った、あやふやだった気持ちが。 それは戦意でも殺意でも何でもない。 ただ、“管理人”を野放しにしておくのは危険過ぎる。 あんな思想を持つ集団は、止めなければならない。 そんな気持ちだった。 戻る 目次 次へ ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|