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LOYAL STRAIT FLASH ♪

LOYAL STRAIT FLASH ♪

三十四章後

66 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:22:50.63 ID:6TZdEvHI0

( ´∀`)「はい、クーちゃん」

川 ゚ -゚)「む。ごくろう」

( ´∀`)「いえいえ」

二人はラウンジで会話をしていた。

クーの手には、薄く青を帯びた日本刀。
寒気がするほど鋭く美しい刃には、繊細に刻み込まれた華の装飾。

川 ゚ -゚)「これは……素晴らしい出来だ。悪い点が見付からん」

( ´∀`)「もな。僕の最高傑作だもな」

川 ゚ー゚)「ふん。全ての武器が最高傑作だと言っていたくせに」

( ´∀`)「もなもな。そうだもな。
       僕が作った全ての武器は最高傑作。
       だからその刀―――『氷華』も、最高傑作だもな」

川 ゚ー゚)「ふむ。まぁ、良いだろう」

そこでモナーは振り返る。
視線の先にあるのは、太い柱だ。


68 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:24:22.57 ID:6TZdEvHI0

それに向かって、モナーは言う。

( ´∀`)「……本当に、君は武器はいらないもな?」

「あぁ、いらん」

声と共に、柱の影からスッと人影が動いた。
人影が纏うのは、茶色のコート。

ミ,,゚Д゚彡「武器を持った所で、俺は戦いづらくなるだけだ」

( ´∀`)「でも武器を持っていれば、そうそう“力”を解放する必要もなくなるもな。
       それはつまり君の身体の負担が減るという事で―――」

ミ,,゚Д゚彡「いらん、と言っている。
     ……“力”を解放しないでいる余裕なんて、次の戦闘ではないだろうしな」

( ´∀`)「もな……。じゃあ、君達は?」

「いらないわよ」

尖った声は、モナーの背後からだ。
少しだけ驚いてモナーがそちらを見れば、そこにはツンとしぃがいた。

ξ゚ー゚)ξ「ふふん。背後、取ったり」

( ´∀`)「ガキみたいな事するなもな」

(;*゚ー゚)「あなたがやってた事でしょうが」


69 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:25:58.54 ID:6TZdEvHI0

( ´∀`)「記憶にないもな。ふーんふーん。
       それよりも、君達は本当に武器を持たないつもりもな?」

(*゚ー゚)「そのつもりだよ?」

( ´∀`)「……君達こそ、武器が必要なのに」

ξ゚△゚)ξ「どうせ私には武器は扱えないわよ。
     前、あなたにナイフを貸してもらったけど……それすら全然扱えなかったし」

(;´∀`)「でも訓練すれば―――」

ξ゚△゚)ξ「無理よ。訓練する時間なんてないわ。
     私はただでさえ弱いもの。“力”を扱えるようにならなきゃならない。
     武器を扱えるようにする為の時間なんてないのよ」

( ´∀`)「じゃあ、しぃちゃんは……」

(*゚ー゚)「いらないってば。私、武器とかって嫌いなのさ。
    人を傷付ける力は、この“力”だけで十分すぎるくらいなんだし。
    私はこの“力”を扱えれば、武器なんて必要ないしね」

ミ,,゚Д゚彡「その通り。しぃとツンの“力”は、扱えるようになれば凄まじいものがある。
     だが、二人とも“力”を扱えるようになるにはまだ遠い。
     しぃもツンも、武器を扱う為の訓練をする時間はない」

( ´Д`)「もな……」


70 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:27:06.99 ID:6TZdEvHI0

(*゚ー゚)「気持ちだけは、ありがたく受け取っておくよ! ありがとね!」

( ´∀`)「あうー」

ξ゚△゚)ξ「ん、ありがと。でもあなたね、引き際を覚えなさい。
     相手がいらないって言ってんだから、しつこく押し付けないの。
     ずっとそんな事してたら、嫌われちゃうわよ?」

( ´∀`)「心優しい忠告、ありがとうだもな。
       さすがツンデレッ娘。言う事一つ一つに無駄にトゲが」

ξ#゚△゚)ξ「殴るわよ?」

( ´∀`)「あうー」

笑って、モナーはクーに向き直した。

( ´∀`)「さて。じゃあ僕は、『偵察』に行ってくるもな」

川 ゚ -゚)「……こんな夜からか? 明日でも良いのだぞ?」

( ´∀`)「もな。時間は少ないもな。
       休んでる暇なんてないもな」

ミ,,゚Д゚彡「その身体で無理をするんじゃないぞ。
     本当はまだ、安静にしていなきゃいけない状態なんだからな」


72 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:28:41.57 ID:6TZdEvHI0

( ´∀`)「ふふん。心配どうも、だもな。
       でもまぁ、心配は無用だもな。
       ぱぱーっと行って、すぐに帰って来るもなよ」

ミ,,゚Д゚彡「間違っても見付かるんじゃないぞ」

( ´∀`)「見付かるって事はないもな。多分」

ミ,,゚Д゚彡「……何だ? その自信は」

( ´∀`)「僕はVIPPER時代に色々とやってたんだもな。では、あでゅー」

ミ;゚Д゚彡「あ、ちょ、お前」

言葉を残して、モナーは走り去る。
フサはその後ろ姿を見て、溜息を吐いた。

ミ,,゚Д゚彡「……意味が分からん。どういう事だ」

川 ゚ -゚)「あいつが帰って来たら問い詰めると良い」

ミ,,゚Д゚彡「……む。そうか」

川 ゚ -゚)「それよりも、もう休もう。明日に疲労を残したくない」

(*゚ー゚)「賛成。眠いよ」


73 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:30:07.05 ID:6TZdEvHI0

ξ゚△゚)ξ「……これじゃ、明日の朝は辛いわね。
     特にしぃ姉さんは辛いんじゃないの? 朝、弱いじゃん」

(;*゚ー゚)「……うぁ」

ミ,,゚Д゚彡「ほら、呻いてる暇があればさっさと休め。
     言っておくが、訓練に遅刻しようものなら許さんぞ」

その言葉にもう一度呻いて、しぃは部屋へ走った。
その後ろ姿を見て、三人は小さく笑いを漏らす。

ξぅ△-)ξ「……ふあ。じゃあそろそろ、私も休むとするわ」

川 ゚ -゚)「あぁ。おやすみ、ツン」

ミ,,゚Д゚彡「俺もそうしよう。じゃあな、二人とも」

川 ゚ -゚)「あぁ。おやすみ」

その言葉を最後に、三人は己の部屋へと向かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


74 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:31:51.25 ID:6TZdEvHI0

漆黒の闇に閉ざされた森の中を、一台のバイクが疾走していた。
バイクのボディは、闇に溶けるような黒。
それを駆る人影も、黒のマントを纏っていた。

欝蒼と茂る樹木の間、道を遮る樹枝の壁を突っ切り、バイクは目的地―――“管理人”の基地を目指す。
勿論、そこに街灯などは存在しない。
僅かな月明かりとバイクのライトだけが、道を照らし出す光だった。

「っと……」

言葉を漏らして、人影はバイクを急停止させた。
そしてバイクに跨ったまま、腰に付けたバッグに手を伸ばすと、双眼鏡を取り出す。

覗き込んでみると、少しばかり遠い所に白い建物が見えた。

人影は一つ頷き、バイクから降りる。
そしてエンジンを切り、双眼鏡をバッグに捩じ込んだ。

フルフェイスのヘルメットを外すと、そこからは穏やかな表情が顔を出した。

( ´∀`)「……一応、ここからは歩いて行くかもな」

呟いて、彼は腰のバッグに再度、手を伸ばす。
そこから黒塗りのナイフを取り出すと、彼の穏やかな表情の中に僅かな鋭さが生まれた。

( ´∀`)「偵察―――開始、だもな」

言葉は、彼の姿と共に闇に溶けて行った。


76 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:33:10.74 ID:6TZdEvHI0

時刻は深夜。
空を見上げれば、月と星が輝いている。
ゆるゆると流れる黒い雲は、時折月の輝きを遮っては、夜空の闇へと消えて行った。

風は緩く、途切れ途切れに吹いている。
それは程好く木の葉を鳴らし、モナーが経てる音を目立たぬものにした。

モナーは極力音を経てぬよう、森の中を疾駆した。
時間をかけてしまえば、日が昇ってしまうからだ。
彼は、光がない内に偵察を済ませてしまおうと思っていた。

やがて木が少なくなり始めたところで、モナーは一度、足を止める。
木が少なくなったという事は、“管理人”の基地に大分接近しているという事を示していた。

一本の大木に身を隠しながら、モナーは基地の様子を伺う。

相も変わらず、不気味なほどに白い研究所。
それは夜闇の中で、月の光を受けて輝いていた。

( ´∀`)「……外には、誰もいないようだもなね」

バッグから双眼鏡を取り出して確認するが、やはり人影はない。
何かが動く気配もない。
以前の偵察の時と違うのは、鉄の巨大な門が無残にも破壊されているという箇所だけだ。

とは言っても、その理由は分かっている。
この前の戦闘で、クックルが破壊したからだ。


79 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:35:19.74 ID:6TZdEvHI0

( ´∀`)「正面、異常ナシ」

双眼鏡を収め、再度、移動を開始した。
木にその身を隠しながら、基地の東側へと走る。

今回のモナーの偵察の内容は、基地の大雑把な捜査だ。
おかしな仕掛けはないか、おかしな動きはないか。

しかし時間がない為、基地の東・西・南・北の四点から、基地及びその周辺を確認するだけだ。
内部に潜入する事はしない。
今の彼の身体の調子からして、それは危険が大き過ぎる。

(;´∀`)「まったく……ここは本当に、無駄に広いもなね」

走る足は止めぬまま、彼は白い吐息を漏らした。
気温が一気に下がる深夜だと言うのに、その額には汗が浮かんでいる。

(;´∀`)「っとと、そろそろ東側だもな」

呟いて、彼は地を蹴るようにして停止した。
そして先ほどと同じように、双眼鏡で基地を確認する。

やはり人はいないし、特に変わったところもない。
彼は頷いて、双眼鏡を降ろそうとして―――

( ´∀`)「……もな?」

双眼鏡を眼から離す直前の、一瞬。
何かを、レンズの向こう側に見た。


81 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:36:51.29 ID:6TZdEvHI0

眼を細めて、もう一度双眼鏡を構える。
そして、思わず声を漏らした。

( ´∀`)「あれは……」

鉄柵の向こう側、基地の壁。
そこに、扉らしきものを発見した。

以前の偵察の時には、なかったはずのものだ。

( ´∀`)「―――偵察に来て、良かったもな」

おそらくあれは、モララーが脱出用に急遽造り上げた扉だろう。

モララーの傷は、決して軽くない。
その上、傷の治癒に当てるだけの“力”などないはずだ。

そんな時に襲撃を受けたら、という事を考えた時に、モララーは脱出用の扉を造る事を考えたのだろう。
戦えなくなった時に、次のチャンスを作り出す為。

( ´∀`)「考えたもなね、モララー」

となると、内部にも仕掛けがある可能性が高い。
脱出するだけしてそのまま、という事はないだろう。

おそらく、火薬。爆弾の類。
自分達が脱出したところでそれを爆破し、一網打尽にしようと考えたのだろう。

ありがちな、しかし実際、成功すれば有効な策。


84 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:38:29.93 ID:6TZdEvHI0

( ´∀`)「危ないところだったもな」

しかしその策が成功する可能性は、この時点で消えた。

( ´∀`)「他に何か、仕掛けられてないかもな?」

呟いて、モナーは今度こそ双眼鏡を降ろした。
そして基地の裏手へ、移動を開始する。

( ´∀`)「いや……その可能性は低いもなね」

言葉を漏らしつつ、駆走。

そんな多くの仕掛けを作る時間などないはずだ。
せいぜい一つ―――逃走用の扉を作るくらいだろう。

そしておそらく、扉は一つではない。
東側にあったと言う事は―――北側、西側にもあるはずだ。


“管理人”の基地は、上空から見れば巨大な正方形だ。
正方形を囲むように背の高い鉄柵が設置され、更にそれを囲み、隠すようにして森が広がっている。

正方形の南側には正門が位置している。
クックルに破壊された、堅固な造りであったあの門だ。

それを通過して前庭を突っ切れば、基地で唯一の出入り口である扉に辿り着く。
そう、本来は出入り口はそこだけであった。


86 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:39:52.97 ID:6TZdEvHI0

しかし―――

( ´∀`)「やっぱり」

裏手に回ったモナーは、そこに扉がある事を確認した。

( ´∀`)「東側に続いて、北側も。これは間違いなく、西側にもあるもなね」

一応、扉以外の他の仕掛けがないかも確認。だがその足は既に西側へと向けている。
やはり北側にはそれ以上の仕掛けはなく―――また、西側にもなかった。

( ´∀`)「以前の偵察時との相違点は、扉のみ。
       扉は正面だけでなく、側面と裏手―――つまり東側・西側・北側に増設。
       扉以外の仕掛けはないものと思われる……」

基地の西側。
モナーは確認するように呟いて、頷いた。

( ´∀`)「偵察―――完了だもな」

とりあえずは、クーに扉の件を伝えよう。
対処は自分だけでなく、クーやフサと共に考えれば良い。

そこまで思考して、彼はまた走り出した。
その顔には、僅かだが焦慮が浮かんでいる。

時間が迫っていた。
もうすぐ、日が昇ってしまう。


89 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:41:13.38 ID:6TZdEvHI0

日が昇ったからと言って必ず見付かるわけではないが、見付かる可能性は跳ね上がる。
そして見付かってしまえば、その場で終わりだ。

今の自分は、戦えない。
身体は思うように動かないし、得物はこの黒塗りのナイフのみだ。
見付かってしまえば、抗う事すら出来ずに嬲り殺される。

急がなくては。急がなくては。
―――その焦りが、隠れるという事を忘れさせていた。

「誰だ!?」

(;´∀`)「―――ッ!?」

その声に、慌てて眼の前の大木に身を隠した。
息をも停め、己の全ての音を殺す。
心臓の音が、やけにうるさい。

「どうした、プギャー」

「今そこに、誰かが……!」

声が、聞こえる。
その大きさと方向からして、おそらく相手は鉄柵の向こう側にいるようだ。

声の主は、プギャーと、もう一人。
闇の中、その顔は見えないが―――声からして、ミンナだろう。


92 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:42:33.43 ID:6TZdEvHI0

「誰か? いる筈もないだろう。
 誰がこんなところに来ると言うんだ。
 それも、こんな時間に」

「いや、いたんだ!
 音がしたし、動き回るシルエットが見えた!」

「野犬やカラスなどではないのか?」

「多分……違うと思う」

その会話に、モナーは固唾を飲んだ。

まだ、見付かってはいない。
黒ずくめの格好で来たのが幸いした。

だがこのままでは、発見される。
プギャーの言葉に含まれる懐疑の色は、相当に濃い。
おそらく、この辺りを確認しに来るだろう。

しかし自分は逃げられない。
動けば、見付かってしまう。

どうすれば良い。
どうすれば、この状況を抜け出せる。

焦燥の念は解答を曇らせ、更なる焦燥を生んだ。


94 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:44:06.89 ID:6TZdEvHI0

「……確認してみる」

プギャーの声。
それに続いて、異音が響き渡る。
解放だ。

“力”を解放したところで、どうやって彼はあの鉄柵を越えるつもりなのだろうか。
プギャーの“力”は鎌の筈だ。どうやっても、鉄柵を登れるとは考えづらい。
ふと思ったが、そんな事を考えている暇はない、とその思考を断ち切った。

そう、それどころではないのだ。
方法は分からないにしても、彼が“力”を解放しているという事は、
 つまり“力”を解放してしまえば柵を越える事が可能だという事なのだ。


時間はない。
どうすれば。
どうすれば!?


その時だ。
一陣の烈風が、吹き荒ぶ。

眼を閉じてしまいそうなその風の中、モナーは音を聞いた。
己の頭上―――樹枝の中ではためく複数の羽音を。


97 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:45:22.99 ID:6TZdEvHI0


これだ……!


絶望の闇の中で一筋の光明を捉えたモナーは、ナイフを握る右腕に力を込めた。

チャンスは一度っきり。
これを逃せば、もう命はない。

心中で呟いて、モナーは右腕の肘から先を跳ね上げる。
最小限の動きで、しかし最大限の勢いを以てして、右手からナイフが飛ばされた。

黒塗りのその刃先は空中で一回転して―――樹枝の内の一本に、深々とその牙を突き立てた。

(;´∀`)「来い……!」

ほとんど音にもならずに吐き出された言葉。

それに応じたかのように、しゃがれた叫喚が夜闇を裂いた。
そして複数の羽音が空気を揺らし、同じく複数の闇色の影が樹枝から散り散りに飛び去る。

モナーの頭上からふわふわと舞い降りてきたものは、光沢を持った黒の羽根だ。
その羽根は、カラスのもの―――たった今騒音を撒き散らして散開していった黒き者達のものだ。

「ほら、カラスじゃないか」

「そ、そんな筈は……!
 俺は確かにこの眼で、人影を!」


99 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:47:09.95 ID:6TZdEvHI0

「プギャー。お前は、疲れているんじゃないか?
 そもそも、こんな闇の中で人の影なんか見える筈がないだろう」

「疲れてなんか……!」

「ここのところ、まともに休んでいないじゃないか。
 ……モララー様の期待に応えようとするのは良い事だが、それで身体を壊してどうするんだ?
 休もう。ほら、もうこんな時間だ」

「休んでいるし、そもそも俺は疲れていない!
 強くならなきゃならないんだ! モララーさんが戦わずに済むように……!」

「いい加減にしろ。意地を張るんじゃない。
 二十分、三十分の睡眠は休みとは言わないし、モララー様はそんな事を望んではいない。
 お前は一つの事に、意識を向け過ぎだ。そんなだと、勝てる戦いにも勝てないぞ」

「……くっ」

「ほら、休むぞ。もう、日が明けてしまう」

「でも」

「プギャー」

「……分かった」

その声に、異音が続く。
どうやら、“力”を収めたようだ。


102 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:48:23.93 ID:6TZdEvHI0

そして、二つの足音が遠ざかっていく。
音が完全に消えた時、ようやくモナーは安心の息を吐いた。

だが、それも一瞬。
モナーは上半身を深く沈めると、駆ける。
今度は身体を隠しながら、しかしさっき以上の速度で。

もう、時間はほとんどない。
既に東の空の闇は、僅かに薄くなっている。

月明かりすらもない闇を選んで、音を立てずに疾駆。
残すのは風のみ。
震動が傷に響くが、痛覚を無視して走った。

くそ、遠い。

言葉を吐き捨て、憎々しげに空を見やる。
そこには、東の空の薄くなった闇を持ち上げるように、眩しい橙が僅かに顔を出していた。

正門にはまだ着かないのか。
どれだけこの基地は広大だと言うのだ。
時間がない。もっと速く、もっと、もっと。

焦りばかりが前に出て、転びそうになる。
しかし更に足を速く動かして、無理矢理に体勢を立て直した。

呼吸など、とうに限界を振り切っている。
肺は酸素を渇望し、脳は真っ白になり、視界は赤くなったり白くなったりを繰り返していた。
心臓は、別の生物のように激しく暴れまわっている。


105 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:49:33.73 ID:6TZdEvHI0

しかし足を止めるわけにはいかない。
先ほどの二人のように、もしかしたら誰かが外にいるのかもしれないのだ。

意識が遠のき、しかし全身の痛覚がそれを引き戻してくれた。
皮肉なその結果に、しかしモナーは苦笑すら浮かべられない。

正門が視界に入って、彼はようやくか、と眼を細めた。
しかし足は止めない。むしろ、更に速める。

正門の前が、一番危険なのだ。
既に日は顔を出してしまっているし、正門が一番、人がいる可能性が高い。

強く握り締めた拳が、びきびきと軋んだ。
眼に入りそうになった汗を、風で吹き飛ばす。

光に駆逐され、もはや少なくなってしまった純粋な闇を駆ける。
欝蒼とした森は、木漏れ日の存在を殺してくれていた。
だが、木々に感謝する余裕など、勿論ない。

文字通り必死で、走り走り―――


106 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:49:47.20 ID:6TZdEvHI0

やがて彼は、闇色のバイクの元に辿り着いた。

(; ∀ )「はぁっ! あ、ぁ―――はぁっ……!」

全身が酸素を望んでいた。
しかし余りの疲労に、息が詰まる。

苦痛と焦慮と生への本能が、今の彼の全てだった。

だが無理矢理にそのスイッチを、変更する。
もう少しだ、と自分に言い聞かせ、バイクに乗り込んだ。

ヘルメットを乱暴に被り、全力でアクセル。
置いてかれそうな感覚の後、風の塊が全身を打った。

闇色のバイクは凄まじい勢いで地面を蹴り、森に己の爪痕を付けて行く。
咆哮は後方に置き去りだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


108 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:51:50.48 ID:6TZdEvHI0

(;´∀`)「…………………」

モナーは、バイクにもたれかかって死んでいた。
否、死にそうになっていた。

バイクから降りる気力も失ったのか、乗ったままだ。
ヘルメットは外して、手に持っている。

彼は極度の緊張と疲労で、意識が朦朧としていた。
眠気にも似た感覚が全身を包み、身体が動かない。
動かそうとも、思わなかった。

冷えた朝の空気と、冷たいバイクのボディは心地が良かった。

汗がバイクのボディを伝い、きらきらと輝く。
美しい朝日が、雫を宝石に変えていた。


彼が停まっているのは、コンビニの駐車場だ。
位置としては、“管理人”の基地と“削除人”のホテルの丁度中間。

そこで彼は限界を迎えた。


109 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:53:18.66 ID:6TZdEvHI0

从;'ー'从「わわわっ! わーっ!」

その声に、モナーは僅かに眼を開いた。
顔を持ち上げるだけの余力は、もうないらしい。

声の持ち主は、少女だった。
見た目は高校生くらいに見える。
毛先がぴょこんと跳ねた茶髪と、大きな目が可愛らしい子だ。

見れば少女は、ポップな字体で「セクロス」と書かれたエプロンをしていた。
という事はつまり、この少女は、モナーがバイクを止めているこのコンビニの店員という事だ。

('、`*川「どうしたのー、渡辺ちゃーん」

ノハ;゚△゚)「何だ今の声は! また何かやらかしたのか!?」

コンビニの中から、更に二人の少女が顔を出す。
そしてその二人も、モナーを見て眼に驚きの色を浮かべた。

('、`;川「えっと……そちらの方は?」

流れる黒髪が奇麗な女の子が、呟いた。
歳はやはり、高校生だろうか。
少し大人びたその瞳は、大学生にも見える。

ノハ;゚△゚)「うおぉっ!? 死体か!!」

冷えた朝の空気に、透き通った叫び声が響いた。
ご近所さんはさぞ迷惑だろう。


110 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:54:33.06 ID:6TZdEvHI0

身体の線が細い……というよりは引き締まっている女の子だった。
橙っぽい茶色の髪。後ろを、ポニーテールにしている。

その少女は、たたたっ、と足音高くモナーに駆け寄ろうとする。
しかし黒髪の子にポニーテールの部分を掴まれ、阻止された。

ノハ;゚△゚)「い、痛い! ちょ、ペニサス! 痛いって! ハゲちゃう!」

その声に、ペニサスと呼ばれた少女は手を離した。
間髪入れず、少し涙目になったポニーテールの少女が叫ぶ。

ノハ#゚△゚)「何すんのさ!」

('、`*川「駆け寄っちゃダメでしょ、ヒート。万が一、本当に死体だったらどうするの?」

从;'ー'从「ひ、ひぇえ。死体なの?」

ノパ△゚)「死体なわけあるかい! 助けなきゃダメじゃないか!」

('、`*川「あの人が危険な人だったらどうするのよ」

ノパ△゚)「でもあのまま放っておくのは……!」

('、`*川「放っといて良いのよ。触らぬ神に祟りなしって言うじゃない。
     死体だったら誰かが処理するだろうし、生きてたら関わらない方が無難よ」

ノハ;゚△゚)「む……!」


112 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:56:32.86 ID:6TZdEvHI0

从;'ー'从「でも放っておくのは良くない事だよ。
      あの人、どうみても元気じゃないし……」

('、`*川「危険な人だったら怖いじゃない」

ノパ△゚)「危険な人の筈がないだろう! 多分!」

从;'ー'从「そ、そうだよ。
      こんな時間に、しかもこんなところに危ない人がいる筈が……」

('、`*川「……こんな黒ずくめの人を見て、怪しいとは思わないの?」

ノパ△゚)「…………………」

从'ー'从「…………………」

('、`;川「何で黙り込むかなぁ」

ノパ△゚)「……確かに怪しいな! かなり!」

从;'ー'从「で、でも……」

('、`*川「うーん……よし。じゃあ、店長が来るまで放っておきましょ。
     どうせあと二十分もしない内に奴は来るし」

从'ー'从「あ、そうだね。店長ならきっとどうにかしてくれるよね!」


113 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:57:36.18 ID:6TZdEvHI0

ノパ△゚)「でももしかして死体だったら……放っておくのも嫌だぞ。
    いや、死体じゃなくてもだ! ここですべきは待つ事じゃなくて、出来る最善をする事だ!
    義を見てせざるは勇なきなり!」

从;'ー'从「その言葉の使いどころ、合ってるの?」

ノパ△゚)「知らん!」

('、`*川「ついさっき、あんた『死体なわけないっ!』て言ってたわよね」

ノパ△゚)「知らん!! それよりも、この人を……」

('、`*川「あのねぇ、ヒート。お願いだから私を面倒臭い事に巻き込まないで。
     生きてたら面倒臭いし、死んでたらもっと面倒臭いでしょ?」

ノハ;゚△゚)「むぅ……」

「生きてるよ」

小さな呟き。
その声に、少女三人が一斉に振り返った。

从;'ー'从「で、でぃちゃんか。びっくりした」

コンビニの入口にいたのは、小柄な少女。
ショートカットの黒髪で、眼が大きい。
小動物を思わせる少女だ。


116 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/06(日) 23:58:52.26 ID:6TZdEvHI0

だが、眼に光がない。
妙な雰囲気を持った子だ、とモナーは思った。

(#゚;;-゚)「汗かいてるし、ヘルメットを手で持ってる。
     それにバイクが倒れてない。つまり、バランスを取ってる。生きてるよ」

('、`*川「あら、生きてるの?」

(#゚;;-゚)「うん。というか……」

でぃは眼を細めて、モナーを見る。
そして、溜息を吐いた。

(#゚;;-゚)「よく見てみれば、眼が開いてるよ。それに、まばたきしてる。
     しっかりと聞いてみれば呼吸の音も聞こえる」

('、`;川「……あら」

(#゚;;-゚)「でも、随分と弱ってるみたいだね。疲弊してる。
     決して良い状態とは言えないね。
     出来るだけ迅速に対処すべきだと思うよ」

それだけ言って、彼女はコンビニの中に入って行ってしまった。

('、`;川「ちょ、助けないの?」

(#゚;;-゚)「……寒い」


117 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/07(月) 00:00:30.45 ID:tT1QOJdL0

ノパ△゚)「寒いってだけで人を見捨てるのかーッ!
    それは良くないぞ!」

(#゚;;-゚)「だって……」

从'ー'从「でぃちゃんも協力してよー。ね? お願い」

(#゚;;-゚)「……あうー……」

渡辺と呼ばれた少女に腕を引っ張られて、でぃは渋々コンビニの外に出た。
しかしすぐに足を止めて、考えるように顎に手を当てる。

(#゚;;-゚)「助けるってのも難しいよ。
     うかつに手を出すと、悪化しちゃうかもしれない」

ノパ△゚)「どうすれば良いんだ!」

(#゚;;-゚)「どうすればって……分からないよ。
     何で弱ってるのかさえ分かればそれなりの対処は出来るけど、分からないんだから」

从'ー'从「調べても分からないかなぁ? ね、でぃちゃん、調べてみてくれない?」

(#゚;;-゚)「何で私が……」

从'ー'从「だってでぃちゃん、すっごい物知りじゃん!
     だから調べれば分かるかな、と思ったんだけど……」

(#゚;;-゚)「そこまで出来るほど、まだ医療に関してはかじってないんだ。ごめんね」


118 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/07(月) 00:01:45.91 ID:tT1QOJdL0

从;'ー'从「……うぅー」

ノパ△゚)「どうすれば良いんだーッ!!」

(#゚;;-゚)「救急車を呼ぶか、店長が来るまで待つしかないんじゃないかな……」

('、`*川「よし、店長を待とう」

从;'ー'从「あれ? 即答?」

('、`*川「だって、ほら。救急車とか面倒臭いじゃない」

ノハ;゚△゚)「面倒臭いかどうかで物事を考えるなよ!」

('、`*川「良いじゃない。ストレスは老けの原因よ」

从;'ー'从「……じゃあ、店長来るまで待とっか」

ノパ△゚)「そうするか!」

('、`*川「……それにしても、店長遅いわね。何してるのかしら、あのクズ」

ノハ;゚△゚)「待てペニサス! 言ってはならん!」

('、`*川「いや、言うわよ。そりゃ言うわよ。
     あいつ、動きがいちいちルーズなのよ。ダンディ気取るのもいい加減にしてほしいわ。
     それに、タバコ臭い。近寄ってほしくないわね」

从;'ー'从「ペ、ペニサスちゃん」


121 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/07(月) 00:02:40.45 ID:tT1QOJdL0

('、`*川「そもそもね、奴は店長として成り立ってないわ。 
     客と面倒は起こすし、仕事はしないし、遅刻はするし。
     どうしようもないわね」

从;'ー'从「ねぇ! ペニサスちゃん!」

('、`*川「デキる男を気取ってるデキない男はダサすぎるわよ。
     デキないように見えて実はデキる男こそ至高なのよ。
     ぃょぅ君……そう、ぃょぅ君よ! あいつはぃょぅ君を見習うべきだわ!」

(#゚;;-゚)「……ペニサス」


122 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/07(月) 00:03:03.61 ID:tT1QOJdL0

('、`*川「そうよ、今度ぃょぅ君を店に呼ぶのよ。
     そして店長に、己の間違いについて知ってもらうの! 
     そんでそんで―――」

(#゚;;-゚)「ペニサス」

('、`*川「ん? 何さ、でぃちゃん」

(#゚;;-゚)「……後ろ」

その言葉に、ペニサスは後ろを振り向く。
そこには―――

( ,_ノ` )「やぁ。おはよう、ペニサス。君のだーい好きな店長だよ」

店長こと、渋澤が立っていた。
いつも通り、口にはタバコを咥えて。
いつも通り……いや、いつもよりやや口角の釣り上がった、ダンディな笑みを浮かべて。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



127 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/07(月) 00:08:51.53 ID:tT1QOJdL0

( ,_ノ` )「なるほど。ふむ、分かった」

あれから、数分後。
渡辺達から話を聞いて、渋澤は現状を理解した。

色々とあって、ペニサスは小さくなっている。
その眼はどこか虚ろで、光を失っていた。

从;'ー'从「ど、どうすれば良いんですか?」

( ,_ノ` )「よし、任せろ」

渡辺に手を振ると、渋澤は眼の色を変えた。

タバコを深く一吸いすると、短くなったそれを指で弾き飛ばす。
落ちて行くそれは、しかしヒートが灰皿でキャッチ。

ノパ△゚)「今のは格好良くないぞ。地球的に考えて」

( ,_ノ` )「そうか。自重しよう」

言いつつ、モナーに向かって歩みを進めた。

( ,_ノ` )「よう、あんちゃん。生きてるか?」

(#゚;;-゚)「生きてます」

( ,_ノ` )「いや、生物的な意味じゃないんだ」


128 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/07(月) 00:09:55.77 ID:tT1QOJdL0

会話しつつ、渋澤はモナーの頬を軽く数回叩いた。
モナーは朦朧とした意識の中、必死で眼を開く。
僅かにしか開かなかった視界は、どこか色を失っていた。

( ,_ノ` )「大丈夫か? どうした、何があった。
      喧嘩……じゃねぇな。飢えか? 病気か? 疲れか?」

必死で言葉を返そうとするモナー。
しかし、喉から音が出ない。
乾いた吐息だけがヒュ、と鳴った。

( ,_ノ` )「ん? 何だ?」

渋澤はモナーの意思を聞こうと、彼の口元に耳を近付ける。
モナーは薄れゆく意識の中で、必死の思いで声を発した。

「―――水を」

そこで、モナーの意識は途切れた。


( ,_ノ` )「……死んだ、か」

(#゚;;-゚)「生きてます」

( ,_ノ` )「お願いだから真面目に突っ込みを入れないでくれ」

从;'ー'从「それより、ど、どうするんですか? この人」


132 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/07(月) 00:10:52.95 ID:tT1QOJdL0

( ,_ノ` )「水でも飲ませて、休憩室で休ませる」

ノハ;゚△゚)「そんなんで良いのか!?
    救急車とか呼ばなくて良いのか!?」

( ,_ノ` )「面倒臭いじゃないか。
      それに、この手の意識不明は、三時間程度休めば治る」

ノハ;゚△゚)「何故そんな事が分かるッ!」

( ,_ノ` )「経験論だ。よし、じゃあ休憩室まで運ぶぞ。
      みんな、手伝ってくれ」

('、`;川「あっ、あの」

( ,_ノ` )「何だ、ペニサス。またかわいがって欲しいのか?」

('、`;川「いえ、決してそういうわけではなくてですね……。
      あの、その、えっと。……その人、危ない人だったりしないんですか?」


133 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/07(月) 00:11:59.01 ID:tT1QOJdL0

( ,_ノ` )「あぁ。確信を持って頷ける。
      こいつは安全な人間だ。それに、とびっきりの漢の臭いがする。
      俺と同じ臭いがするんだよ、こいつは」

('、`*川(ダメじゃん)

从'ー'从(タバコ臭いのかな?)

ノパ△゚)(店長、ガチホモっぽいな)

(#゚;;-゚)(うわぁ、変な人だ)

( ,_ノ` )「さぁ、運ぶぞ。手伝え」

呟き、渋澤はモナーをバイクから降ろした。
そして、背負う。

触れる指先は氷のように冷たく、胴は日光のように暖かだった。
その感覚に、渋澤は口元に笑みを浮かべる。


134 : ◆tAdHw/rYVY :2008/01/07(月) 00:12:27.75 ID:tT1QOJdL0

( ,_ノ` )「この重量、この感覚……あの時を思い出すよ。ふふふ」

ノパ△゚)(やっぱりガチホモなのか……)

( ,_ノ` )「ヒートと渡辺は、休憩室のベッドを準備してきてくれ。
      でぃは、スポーツドリンクを二リットルほど持ってきてくれ。
      ペニサスは仕事をしていろ。独りでな」

('、`#川(この親父、いつかぶん殴ってやる)

( ,_ノ` )「返事は? またおしりぺんぺんされたいのか?」

('、`;川「……はい、分かりました」

( ,_ノ` )「よろしい」

('、`;川(泣きたい)

ばたばたと動き始める四人の中、渋澤だけはゆったりと足を進めた。
やがてその姿は、コンビニの中へと消えていく。

駐車場に残されたバイクだけが、朝日に黒く輝いていた。




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