|
カテゴリ:カテゴリ未分類
250 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:45:52.74 ID:sGLbyoZr0
(*゚∀゚)『おっ!! お疲れちゃん!! 宣伝部長様!!』 【従業員専用出入り口】のプレートが貼られた扉をくぐり、 スタッフルームに足を踏み入れた僕を待っていたのは店長『様』だ。 すでに厨房に入る機会は少なくなったはずなのに、 上半身はコックコート・下半身はミニスカートと言う非常にアンバランスな格好。 椅子に腰掛け、机の上に両足を放りだして書類を読んでいる。 はっきり言って見えるから止めて欲しい。 また、ツンやドクオに説教されるから。 ( ^ω^)『ただいまだお』 言いながら僕は冷蔵庫を開き、最近のお気に入り『イチゴ豆乳』の紙パックを取り出す。 (*゚∀゚)『あれあれあれ~? ブーちゃん、そんな事してていいのかなっ!?』 ( ^ω^)『ん? なんでだお?』 答えながら至福の味を一口。 (*゚∀゚)『じ・か・ん』 そう言って指差した壁時計は18:05を少し過ぎており、僕は盛大に噴き出した。 ( ;^ω^)『や、やばいお!! 遅刻だお!! ツンに殺されるお!!』 僕は咽返りながら、濡れた口元をティッシュで拭う。 寄り道した本屋で思ったより時間を使っていたらしい。 服を脱ぎ捨て、代わりに純白のコックコートを羽織ってスタッフルームを飛び出した。 254 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:48:30.18 ID:sGLbyoZr0 全力で足を動かし。 コックコートのボタンを留め。 呼吸を整える。 この3つの作業を同時進行させながら僕はバースペースに足を踏み入れた。 ( ;^ω^)『遅れて申し訳ないお』 ξ#゚△゚)ξ『遅い!!』 クーさんの後を継ぎ、バースペースの新しい主となったのはツン。 僕の大切な人だ。 ( ;^ω^)『だから謝ってるじゃないかお』 ξ゚△゚)ξ『謝るんなら…』 テーブル席の1つに視線を向ける。 ξ゚△゚)ξ『彼に謝りなさい!!』 そこでは緊張した面持ちの青年が僕を待っていた。 ツンから受け取った彼の履歴書に簡単に目を通す。 高校中退後、3年間無職。アルバイト経験なし…か。 ( ^ω^)『…なるほどだお』 僕はガチガチに固まっている彼の前に腰を下ろした。 ( ^ω^)『…ヒッキー君。で良かったかな?』 259 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:53:10.43 ID:sGLbyoZr0 (-_-) 『…ひゃ、ひゃいっ!!』 盛大に噛んで赤面する彼に僕は微笑みかける。 ( ^ω^)『緊張しなくていいお』 通勤時間。時給。正社員登用制度。そんな話を一方的に僕が話す形で面接は進む。 彼はただ壊れた人形のように首を上下に振るだけだ。 ( ^ω^)『最後に質問なんだけど…ヒッキー君がここで働きたい。 そう思った動機を話してほしいお』 (-_-) 『え…あの…その…』 あうあうと意味不明な言葉を口走っていた彼は、一度大きく息を吐き出すと真剣な目つきで語りだした。 (-_-) 『ぼ…僕!! ヒキコモリなんです!!』 ( ^ω^)『……』 (-_-) 『小学校からずっと虐められてて…高校もそれで中退しました。 それからは部屋にずっと…両親や自分に甘えて生活して、 それでも自分を変えたくて、だけど勇気がなくて… そんな時に出会ったのがあなたの本だったんです!! 僕はあなたのように変わりたいんです!!』 そこまで一息に話した彼は僕の視線に気付くと、また最初のように縮こまってしまった。 ( ^ω^)『君の話はよく分かったお。でも…料理人になろうなんて考えは止めた方が良いお』 262 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:57:23.42 ID:sGLbyoZr0 (-_-) 『…え?』 彼は僕の言葉を聞いて呆然としていたが、その意味が分かるにつれ青ざめていった。 (-_-) 『…そんな…どうして…』 ( ^ω^)『厨房は…地獄だお』 僕は続ける。 真夏は40℃を超え、真冬でも凍てつく水に両手を突っ込む。 何重にも重ねられた火傷と切り傷。 週に一日あるかないかの休みでは体の疲れが抜ける事もなく、 毎朝目を覚ますたびに体のどこかが悲鳴を上げる。 泥と汗と油にまみれたコックコート。 常に高温を保つフライヤーや、切れ味抜群の中華包丁。 人生に絶望した誰かが新興宗教の経文を唱えながら暴れだしたら、間違いなく死人が出るだろう。 ( ^ω^)『…それが料理人の現実だお。 悪い事は言わないから止めた方がいいと思うお』 (-_-) 『それでも…それでも僕はあなたの様に…』 彼は俯き、両肩を震わせている。 ( ^ω^)『それでも、君が本当に料理人として生きて行きたいのなら…』 僕はそこで言葉を区切り目を閉じた。 267 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 01:03:02.30 ID:sGLbyoZr0 真っ暗な瞼の奥。 僕は『それ』が現れるのを待つ。 最初、ぼんやりとした『それ』は僕に近づくにつれ輝きを増し 幾つもの人の形となって僕を取り囲む。 『それ』は僕を今まで導いてくれた光だ。 不安気な笑顔。 どことなく悪人っぽい笑顔。 自信に溢れた笑顔。 キモイ笑顔。 天真爛漫な笑顔。 一途な笑顔。 不機嫌そうな笑顔。 そして…最後に紫水晶色の瞳をした女性の…静かな笑顔。 その全てが僕を見守り、後押ししてくれている。 さぁ、伝えよう。 僕を導いてくれた光の全てを。 その輝きを永遠に絶やさぬ為に。 ヒッキー君。それでも君が本当に料理人として生きて行きたいのなら… 268 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 01:03:33.22 ID:sGLbyoZr0 ( ^ω^)『僕は…僕は君の道標【みちしるべ】になりたい』 ( ^ω^)が料理人になるようです。 完 この作品の最後の部分は、書き直しがあるかもしれないようです。 そうなればこちらとしては、喜んでまとめたいと思っております。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Feb 20, 2007 10:55:22 PM
コメント(0) | コメントを書く |