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異能者@ お知らせ 問題の方はどうなりましたでしょうか
☆こうさま@ Re[1]:お知らせ(12/05) ご意見有難うございます。 よくよく考え…
異能者@ Re:お知らせ(12/05) いつもまとめてくださり、本当にありがと…
☆こうさま@ Re:メリークリヌマス(12/25) よく考えたら昨日この記事を書いておけば…
*DELAY*@ メリークリヌマス クリスマスは終わってしまったので 来年…

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☆こうさま

☆こうさま

Mar 9, 2007
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カテゴリ:カテゴリ未分類
1 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:38:06.54 ID:KaUUj71H0
プロローグ

闇夜の下で男は人生の終焉を悟った。
最早望むことも、願うことも何もないような気がしていた。
それでいて生きながらえる、そういう自分の醜さに、ついに耐えられなくなったのだ。

歩んできたのは悲劇だろうか。
男は考える。
いや、悲劇ではなく、むしろ喜劇だ。

一人の男が転落していく、ブラックコメディだ。
聴衆の涙など誘わない、ただ嘲笑をいただければそれでいい。

少し大きな木の太い枝にロープを輪状にして取り付ける。
それに首を通して……後は、台の上から足を外せば全てが終了する。

「ごめんなさい」

かつて愛した対象に向けて呟き、男は目を閉じた。

最期に台の倒れる音を聞いた男の命の灯火は、やがて混濁の海の中で消え果てた。

公園に広がる暗澹は、深く呻いているようでもあった。



( ・∀・)二十年後、モララーはしょぼんに出会うようです(´・ω・`)

2 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:38:58.11 ID:KaUUj71H0
第一話

父はどうやら十年以上前から僕に個人経営のカフェバーを引き継がせることに決めていたらしい。
だから僕は中学生になった頃からマスターとしての技術を教え込まれていたのだろう。
そもそも酒を扱う仕事なのによかったのだろうか、と今では思う。
でもその時の僕は父が作る種々のカクテルに興味津々だったのだ。

すでに死語だが、父が子供の時、カフェバーは全国的な流行を見せていたらしい。
今でもそのような、喫茶店と居酒屋を組み合わせた形態のお店はあると思うが、
臆面もなくカフェバーと称している店はそうそう無いんじゃないだろうか。

父はいつも口を酸っぱくして僕に言い聞かせていた。

「マスターは、常に黙していなければならない」

と。
実際、父はカウンターの中ではほとんど喋らず、ただ無言で注文された料理を出すだけだった。
それが好かれていた理由なのかもしれない。父には常連がたくさんついていた。
当時はその理由がよくわからなかったが、今はなんとなく理解できる。
なぜなら、今は僕がマスターとしてカウンターに立っているからだ。

カレンダーで日付を確認する。
一月六日 火曜日。
父が亡くなって、四ヶ月が経過した。

4 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:39:26.63 ID:KaUUj71H0
今日が「バーボンハウス」、新年初の開店日だ。
午後三時から十一時まで。定休日は基本的に水曜日のみ。
個人でかつ怠惰な経営をしているのになんとかやっていけるのは父の時代からの常連様がたくさんいるからだろう。
新規のお客さんがあまりいないのは少々問題かもしれない。

時折友人が訪ねてくる。
彼らはほとんど必ず「お前、何か違うな」と言って帰る。
それはそうだ、僕は普段と違い、無口を貫き通すのだから。
そんな僕がつまらないのだろう、二度来る友人は滅多にいない。
まぁプライベートではよく会ったり話したりするから僕も特に気にしていない。

朝早くからまったりと準備する。
ひいきにしているお店から材料やお酒を仕入れたり……父がやっているのを横で見ていたはずなのに、未だに慣れない。
そうやっているうちに開店時間が来る。
昼間、午後六時までは普通の喫茶店、それから二時間準備期間をおいた後、閉店時刻まではバーとして機能する。
今日は平日だから、昼間はあまり人がこない。
三人グループのOLと、高校生カップルが二組来店しただけだった。
正直、カップルを目にすると鬱屈とした気分になってしまう。

夕刻からがかき入れ時だった。
会社帰りのサラリーマンが数人、ふらふらと訪れてくれた。
それに火曜日は五人ばかり、常連さんが来ることになっていて、今日も予定通りみんな顔を出してくれた。
彼らはいつも同僚らしい人を連れてきてくれるからこちらとしては助かる。

6 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:39:50.80 ID:KaUUj71H0
時々、自分はちゃんとマスターとしての仕事がしっかりこなせているのかと不安になる。
それは考えても仕方のないことだ。僕が半人前にも満たないのは自覚しているし、お客さんを満足させることができているとも思わない。
でも時々父を知っている人から投げかけられる「しょぼんくんの酒も美味いよ」「お父さんに追いつける日も近いだろうね」などといった言葉は全て元気に変換されていた。
最近僕に悩みを打ち明けてくれる人も増えたし(前述通り、僕が返事することはないのだけれど)、一時落ち込んでいた客数も徐々に回復し始めている。
それを、僕が経営する「バーボンハウス」が波に乗り始めたのだと解釈している。
とても嬉しく、また自信の根源にもなっていた。

最後のお客さんが「ごちそうさまでした」と店を出て行く。
ふと壁にかかっている時計を見ると、閉店時間まであと十分ほどだった。
開放感から、一つ溜息が床に落ちた。これから来るお客さんもいないだろう、後片付けでも始めないと。
そう思い立った矢先だった。
クラシックのBGMの中、入り口のドアが開いたことを示す鈴の音が僕の耳に流れ込んだ。

振り返ると、そこに見慣れた顔ともう一つ、見慣れない顔が立っていた。

(´・ω・`)「……いらっしゃい」

( ゚∀゚)「おう、しょぼん。五日ぶりぐらいだな」

ショルジュさんはそういって、陽気に手をあげた。
顔が紅潮しているところをみると、すでにずいぶん飲んでいるらしい。
彼もまた、父の時代からの常連さんだ。確か最近五十代になったばかりのサラリーマン(自称窓際族)。
そして何より、無類のお酒好き。

7 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:40:37.78 ID:KaUUj71H0
そんなジョルジュさんの後ろで、旅行カバンみたいなものを持ってボーッと突っ立っているのは僕の知らない人だった。
年齢は……僕と同じぐらい……二十五歳周辺だと思う。地味なコートを着込んでいて、一見浮浪者に見えなくもない。
そして何か、近寄りがたいオーラを全方向に放っている。

ジョルジュさんは大抵一人でやってくる。だから誰かを連れて、というのは珍しいことだった。
腕時計を確認しながら、ジョルジュさんはカウンターの一席に座った。
隣に立ったままのコートの人も、ジョルジュさんに促されて座る。
視線が宙を彷徨っている……放心しているんじゃないだろうか。

( ゚∀゚)「ちょっと聞いてくれよ、しょぼん……ああ、閉店間際だってことはわかっている。
     すぐに帰るさ」

そういって、彼が三十分以内に出て行ったことがない。

( ゚∀゚)「ついにこの前の日曜日、家内に逃げられちまったよ。しかも子供たちまで連れてな
     ……いや、そりゃ俺も悪いとは思うぜ?
     毎日毎日飲んだくれてよ、でもそいつは性分だから仕方ねえよな。それに金はちゃんと家に入れてるってんだ。
     ……ったく、家事なんて俺、生まれてこの方やったことねえんだ。これからどう生きろって言うのかね。
     あ、適当に酒をくれ」

8 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:40:54.77 ID:KaUUj71H0
愚痴だけで終わるかと思っていたけどそう甘くはないようだ。
後片付けの手を止めて、僕は背後の棚からグラスを一つ取り出す。
その途中、横目でコートの人を観察してみた。気のせいか、さっきより表情が強張ったようだ。

( ゚∀゚)「いやあ、しかしここまで落ちぶれても酒飲みだけはやめられねえな。
     今日も今まで駅前で飲んでたんだよ。アル中ってのは大変だぜ、なあ?」

ガハハ、と笑うジョルジュさんに黙って水割りを差し出す。
それを一息であおったところで、ジョルジュさんは隣の人の存在に気づいたらしい。

( ゚∀゚)「ああ、そうだ。今日は酒を飲みに来たんじゃねえんだよ。
     こいつなんだが……近くの路上で拾ったんだ」

(´・ω・`)「拾った?」

僕は思わず聞き返していた。
ジョルジュさんは頷いて、僕に水割りのおかわりを要求する。

10 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:41:24.97 ID:KaUUj71H0
( ゚∀゚)「近くのビルの近くに座り込んでやがったんだ。
     最初はホームレスの類だと思ったんだが……見ろよ、知的な顔をしてるだろ?」

とりあえず判断基準がおかしいと思う。
でも言われてみればその通りで、コートの人からは年齢に不相応な何かが感じられた。
ただ押し黙ったままの男の人をしばらく見つめていると、ジョルジュさんは突如身を乗り出した。

( ゚∀゚)「まぁそういうわけだから、しばらく預かってくれ」

(´・ω・`)「はい?」

本日二度目の聞き返し。
コートの人もびっくりした表情でジョルジュさんを見た。
この人はいきなり何を言い出すのだろう。
まぁ、基本的に自分勝手であるとはうすうす感づいてはいたけれど。

( ゚∀゚)「いいじゃねえか、歳も同じぐらいだし話も合うだろ。
     ……大丈夫、俺を信じろ。」

無理だ。ともかく断ろうとして口を開きかける。
しかしその頃には、ジョルジュさんは「帰るわ」と宣言し、財布からお札を一枚、カウンターにおいていた。
再び鈴の音色が響く。
僕は新しくつくったばかりのカクテルを手に、呆然と立ちつくしてしまった。

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Last updated  Mar 9, 2007 10:18:07 PM
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