音円盤アーカイブス(2006年5月6月)

NED HOLDER
NED HOLDER,聞くところによると、ブルースブラザーズバンドの一員だったらしい。
2001年には、そのバンドで来日して、国内にBLUE NOTEを公演しているそうです。
そんなNY在住のHOLDERが本格的に取り組んだジャズアルバムがこの2005年リリースの当作品で、
テナーに、大ベテランのアイラ・サリバンが参加している。
トランペットもよくするサリバンは、どちらが主楽器なのか分からないほどのマルチプレイヤーで、その器用さでかえって損をしていると思うのだけど、この作品ではサックス、フルートに絞り込んでいるので統一性があって、よかったと思う。
セッションは、1993年のクインテット録音と1989年のワンホーンものに分けられるだけど、カルテットには、JESPER LUNGARRD,ALEX RIELのヨーロッパの最高のリズムチームが参加していることが特筆できます。
リーダーのNED HOLDERの本音が出たごりごりのジャズアルバムというところか、熱演につぐ熱演が収録されています。
トロンボーンと言う楽器は、ジャズで一般的に使用される楽器でも、肉体的特質(この場合、肺活量がやはり一番)が最も強く関係する楽器なのではないかと思うのですが、この点では欧米人が、有利だと思う。
アメリカのカレッジバンドなどでも、滅茶苦茶パワーがあって、テクニシャンのトロンボーン奏者がゾロゾロいるようだし、プロで活躍している奏者もパワー系の奏者が圧倒的に多いのです。
日本にも中川英二郎なんて人材が出てきているがまだまだ絶対数が少ないと思う。
アメリカのトロンボーン奏者は胸板の厚さ、筋量の多さを一聴、感じさせるプレイヤーが多いのであります。トロンボーンをまるでトランペットのように扱うような・・・
パワーだけのものでは、当然ないのですが、このパワーというもの、トロンボーンを演奏するにあたって何かにつけ、余裕を与えるので、あるに越したことはないと思うのだ。
NED HOLDERのプレイを聴いているとつい、そんなことを感じてしまうのでした。
もちろん、パワーだけではなくて、歌心もあるいいトロンボーン奏者だと思います。
メンバーはNED HOLDER(TB)IRA SULLIVAN(TS,FL)KEVIN BALES(P)MICHAEL BOCCHICCHIO(B)TRACY ALEXANDER(DS),OLE KOCK HANSEN(P)JESPER LUNGAARD(B)ALEX RIEL(DS)
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CHICK COREA
大学の先輩、このブログにもよく名前が登場するH野さんから今日もらった一枚。
10日間ほど、NYからボストン、ワシントンとGWに旅行から帰ってこられて、そのお土産にと頂いたのです。
「BLUES ALLEY」で、チック、エディ・ゴメス、アイルト・モレイラのトリオを見た時に、チックのマネージャーから貰ったものらしく、どちらにしても、非売品のCD(CD-Rでないところがさすが、チック・コリア)なので、稀少品と言えるでしょう。
チック・コリアが2005年ライオンズクラブの総会に、来賓なのか、余興なのか詳しいことは分からないのだけど、イベントにプライベートで来日した時のソロピアノパーフォーマンスが収録されたもののようです。
冒頭で、チックの「Asahikawa,Samui!(旭川、寒い!)」という日本語も聞かれます。
チックのソロピアノは、70年代のソロアルバムをジャズ喫茶でよく耳にしたのですが私自身そんなに熱心な聴き手ではないため、あまり大それたことは、言えないのですが、その当時のソロを100としたら、60%くらいの感じでしょうか?
最も、上り調子の30年以上前のレコーディングスタジオでの集中した作業と、観光半分の2,30分の余興というか、ゲスト出演のパーフォーマンスを比較すること自体がナンセンスなのかもしれないです。
むしろ、ここでは、そんな本人自体のやる気度から言ったら、おそらくモチベーションからみて高い状態とは決して言えない状況においても、これだけの演奏をいとも簡単にやってのけるプロフェッショナルな音楽家としてのチックを称えるべきかもしれない。
コレクター的価値としては、どちらにせよのちのちこういう正規の商品でないものは、高くなるのかもしれません。
2005年作品、PROMOTIONAL USE ONLY

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PETE RODRIGUEZ
先月入荷して、直ぐに初回分が売り切れたのですが、本日再入荷!
先月の一押しにしたように、これはなかなかお薦めのトランペッターです。
名前をPETE RODRIGUEZという。
ケニー・バロンがインナースリーブに賛辞を述べているが、お世辞抜きに最近では久々のヒットと言える新人トランペッターの登場と言えるでしょう。
今までラテン系のミュージシャンEddie Palmieri, Bebo Valdez, Celia Cruz, Tito Puenteらとの共演が多く、どちらかというとそのあたりの情報は日本に入りにくいのでこのデビュー作がリリースされるまで、私もノーマークの存在だったのです。
思い切りの良い吹きっぷりが、爽快です。
スタイル的にはBLUE NOTE時代のフレディー・ハバードの影響を最も強く感じるのだけど、男気溢れたというか、いなせな吹きっぷりは、とても魅力的です。
ウィントンの影響が強い、とてもうまくて優等生的なトランペッターは若手で結構出てきているのだけど、トランペッターにはやはり思う存分暴れまわってもらいというのが私の本音。
思う存分、吹きまくり、ハイノートで耳がキーンとなりたいのですよ。
クールダウンにバラードをワンホーンでしっとりと・・・
これがいいのですよ。
そういうこちらの要望をまるで汲み取ってくれたかのような緩急メリハリのついた楽曲の流れもマル。
ラテンジャズ出身だけに、リズム面もバラエティーに富んだナンバーが多くてアルバム通して飽きさせません。
今年になって発見した一押しトランペッターです。
メンバーはPETE RODRIGUEZ(TP,FLH,CONGA)JEFF HELLMER(P)JOHN FREMGEN(B)JEREMY BROWN(DS)RON WESTRAY(TB 6,8)ELIAS HASLANGER(TS 3)JOHN MILLS(TS 8,10)PAUL WHITE(TS 4)
2006年作品
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NORIKO KAMO
加茂のり子、はじめて聞く日本人プレイヤーの名前だったのですが、試聴してみてよい雰囲気だったので注文。
入荷してみたら、CD-Rでした。(泣)
プロフィールはググってみたら有りました。
そこから引用ね。

函館市出身。
東京でプロとして演奏を始める。
ニューヨークでアート・ブレイキーと演奏したことを機に、活動の場をニューヨークに移す。
Sahib Shihab , Louis Hayes , Benny Powell , Joe Dukes , Bobby Watson ,
Stnaley Jordan , Jeff"Tain"Watts , Etta Jones ・・・など、数多くのミュージシャンと共演。
1998年からはハーレムにある”CottonClub”のレギュラー・ピアニスト、シンガーを務める。
最近は自己のグループや伝説的トロンボーンプレイヤーのGrachan Moncur三世のグループ等で
演奏活動を行っている。
2005年1月、函館市観光大使に任命された。

タッチのとても良いピアニストだと思う。
ガーランド然とした珠ころがし奏法には、きらきらしたものを感じるし横揺れを感じさせながら、音楽を前へ前へと押し出す推進力は、グルービー アンド スインギーの言葉で締めくくられるかもしれないが、ハーレムのコットンクラブのハウスピアニストを努めるだけあってそのノリは日本人離れした、黒人のネイティブなノリに近いものを感じさせる。
速いテンポのナンバーでも、せっかちなプレイにならずに、リラックスしたプレイなのがとても良い。
4曲目は彼女の唄入り「ソーラン節」。
これは、アルバムの流れからいって少々異質な感を否めないけど、アドリブ部分は悪くないです。
ベースのDAVID SHAICHもソリッドなプレイで、このアルバムでプロデュースを努めている。
次は是非CD作品で、次回作を聴いてみたいピアノトリオです。
メンバーは、NORIKO KAMO(P)DAVID SHAICH(B)TOM BAKER(DS)
2005年作品
1. backstage sally
2. straight street
3. orange was the color of her dress, then blue silk
4. folk song
5. the peacocks
6. joshua
7. when a gypsy takes her shoes off
8. katrina ballerina
9. conformity
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ANN METTE IVERSEN
ブルックリン、NYで活躍している女性ベーシストの2006年カルテット作。
のっけから、ノリのよい活気溢れたピアノが聴こえるなと思い、ジャケ裏のクレジットを見ると、今月CRISSCROSSからリーダー作がリリースされたばかりの、DANNY GRISSETTがピアノを弾いているじゃないの。
道理で良いわけだ。
ANNE METTE IVERSENは、デンマークのベーシストで、2004年のデビュー作「ON THE OTHER SIDE」(イングリッド・ジェンセンらが参加)が2004年春にリリースされるやいなや、好評をよびその後、活動の拠点をニューヨークに移す。
デンマークには、偉大なベーシストが多いけれども、彼女もNiels-Henning Orsted を筆頭に Mads Vinding, Chris Minh Doky, Jesper Lundgaard ら優秀なベーシストの系譜にラインナップされるポテンシャルを兼ね備えていると言えるでしょう。
ソロプレイはもちろん、サウンド全体に目を光らせ、共演するミュージシャンのよいところを引き出し、輝かせ演奏全体をステップアップさせる術をしっているのです。
彼女の作曲は、決して単純な4ビートの曲ではないけれども、そんな点からもあまり音楽が難解な感じがせずに、伸び伸びと、生き生きとした印象を受けるのです。
JOHN ELLIS,DANNY GRISSETT,OTIS BROWN 3世の個々の演奏によるところももちろん大きいのだけれども、彼女のリーダーシップと盛り立ててやろうとする仲間の音楽的サポートが作品に垣間見られ悪くないです。
現在進行形のジャズ、FSNTあたりを追いかけている方は要チェックの作品だと言えるでしょう。
メンバーはANNE METTE IVERSEN(B)JOHN ELLIS(TS)DANNY GRISSETT(P)OTIS BROWN(DS)
録音は2005年8月14,15日 NJ
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HELGE LIEN
発売前から、話題を呼んでいたヘルゲ・リエンの新作トリオが入荷いたしました。
制作元のDIWの方でも、相当力が入っていたらしく、3月くらいから販促活動を結構やっていた程なので、いやがうえにも期待が高まろうというところです。
HELGE LIENを初めて聴いたのは、多分ほとんどの方がそうだろうと思うのですが、私もCURLING LEGSから2001年にリリースされた「WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE」だった。
ピアノトリオと同時に「TRI O'TRANG」での活動もこの人のオリジナリティー溢れた音楽活動だと思うのだけれども、市場ではおそらく9:1くらい、いやそれ以上の差でピアノトリオのほうが支持、認知されいると思う。
どちらもHELGE LIENにとって、大切な音楽フォーマットなのだろうけど、表現された音楽の伝わりやすさ、聴衆への浸透度の点でピアノトリオに勝るものは、やはり、ないのだと思います。
この新作も、オスロのレインボウ・スタジオで、ヤン・エリック・コングスハウグが録音しているので、いつもの「あの音」が聴けます。
なかなか、中身のことに触れないのだけれど、私的には「LITTLE SUNFLOWER」「SO IN LOVE」「LOVE SONG」「SONORA」、この4曲で決まりです。
この3曲に、ヘルゲのピアノの陰影美、哀愁、ほの暗さ、冷気、清廉といった音楽的特質が凝縮されているように思えてならない。
とにかく、ピアノトリオのファンは、聴いてみることをお薦めいたします。
メンバーはHELGE LIEN (p)FRODE BERG(b)KNUT AALEFJAER(ds)
録音は2006年1月3~6日 RAINBOW STUDIO, OSLO
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LOUIS SOLIANO
LOUIS SOLIANO(ルイ・サリアーノ)多分、ほとんどの方が初めて聞く名前のミュージシャンではないだろうか?
かくいう私目も、全然知らないミュージシャンだったのですが、参加メンバーのDALE BARLOWの名前を発見したので、仕入れてみた次第。
LOUIS SALIANOはシンガポールのベテランドラマーで、地元のクラブでの演奏、音楽監督が主な仕事のようです。
この作品もシンガポールで録音されていて、DALE BARLOWが何故、シンガポールで録音(11曲中7曲に参加)したのかというところに興味がいくのですが、まず聴いてみることにしてみましょう。
そして、もうひとつ、サプライズがありました。
あの岡崎好朗が3曲で参加しているのですよ!
二人がこのレコーディングに参加したのは、「LIVE JAZZ AT SOUTHBRIDGE」というイベントが縁らしい。
リーダー、サリアーノのアイドルはバディ・リッチで、マックス・ローチ、フィリー・ジョー・ジョーンズ、アート・ブレイキー、ピート・ラ・ロッカとモダンジャズドラムのグレイト達のプレイを体得していった。
この作品に関して言えば、ドラムのチューニングがフュージョンぽっくて個人的な好みではないのだけれど、(ベースもエレベ)、サリアーノのボーカルも数曲で披露されていることからも分かるようにシンガポールのショービジネスに長年携わってきたサリアーノの音楽性に焦点をあてたもので、リラックスして楽しむジャズとみるべきだろう。
この点をのぞけば、DALE BARLOWは「BOLIVIA」「UNIT 7」岡崎好朗は「CUTE」でフューチャーされており、共にさすがというべきソロを展開しています。
旅先のシンガポールで偶然立ち寄ったジャズクラブで、思わぬ大物が飛び入りで参加して儲けものをしたという感じのアルバムですね、これは。
DALE BARLOWと岡崎好朗のファンのかたは、十分、コレクションする価値があると思います。
メンバーはLOUIS SALIANO(DS,VO)DON GOMES(P)DALE BARLOW(TS)MARCUS DENGATE(ELB)岡崎好朗(TP)
2004年作品 SINGAPORE
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PER DANIELSSON
この作品、ここでの紹介が伸び伸びになっていました。
スウェーデン、ストックホルム生まれのPER DANIELSSONの2005年正調ピアノトリオ作品。
ベンクト・ハルベルグに、ピアノを習っていたらしい。
ジャズへの思いが、ますます高まったPERは、アメリカに渡り、ノーステキサス州立大学へ進む。
Louis Bellson, Clark Terry, Rosemary Clooney, Don Braden, Lynn Seaton, Bobby Shew, Nick Brignola , Maureen McGovern, Arne Domnerus ,Jan Allanらと共演を重ねることによってキャリアを積んでいく。
現在は南フロリダ大学でジャズピアノを教えると同時に、ミュージシャンとしての活動を続けており本作品は第2作目となる。

PER DANIELSSONのピアノは、北欧のミュージシャンならではのリリシズムと、アメリカに渡ってからのジャズ研鑽によって体得したであろう本場アメリカンジャズの躍動感がうまくミックスしたような独特の響きがする。
粒立ちのよい淀みなくピアノを鳴らしきる技術とビル・エヴァンスを連想させる叙情性が上手い具合に結びついているのです。
作曲も非凡なところがあり、とくに2曲目「CLOSER TO THE GOAL」はメロディストのジャズファンに方には喜ばれるんじゃないかなと思います。
5曲目「BEAUTIFUL FRIEDSHIP」などのアップテンポの曲では起伏に富んだスリリングなソロを披露していて、このピアニストが伝統的なジャズのスキルを100%消化した本格派ピアニストなのが分かります。
DANNY GOTTLEB とMARK MEUENSCHWANDERとのトリオのコンビネーションも良好で、このトリオによる2作目を早くも期待したいところです。
メンバーはPER DANIELSSON(P)DANNY GOTTLIEB(DS)MARK NEUENSCHWANDER(B)
録音は2004年 FL
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SUE TUCKER
ミネソタ州で活躍する本格派ジャズボーカリストSUE TUCKERの2003年作品。
2000年作品も良い出来だったが、ジャケットがイマイチ(女性ボーカルの場合、重要?)だったので、紹介を渋っていたのだけれど今作はバッチリなので、ここぞとばかり紹介。
とても成熟した大人のジャズボーカルが聴けます。
彼女の父親はジャズの教育者で、そんな理由から常に彼女の周りにはジャズが溢れていたそうで、
歌手を志す前は、学生時代テナーサックスを演奏していて、ジャズフェスでクラーク・テリーとクラリネットで共演したこともあるそう。
楽器の経験は、唄うことに関してとても影響していると云う。
と同時に歌詞と間を生かすことは唄う上で最も大事なことなのだと。

とても思慮深く、丁寧でしっとりしたタッチの語り口は、私の好みにぴったりフィット致します。
バックのメンバーも、結構名の知れた優秀なミュージシャンを揃えていて、なかなか豪華なつくりとなっています。
ただ、あくまでも主役がスー・タッカーなのは言うまでもない。
彼女のような素晴らしい歌手が、自主制作で作品をリリースしているのが、信じられない。
この作品もとても完成度の高いものなので、次回は何処かのレーベルからリリースして、より幅広くディストリビュートされることを願います。
ボーカル好きの方には、きっと満足いただける一枚だと思います。
メンバーはSUE TUCKER(VO)DICK OATTS(AS)JOHN MOSCA(TB)JOE MAGNARELLI(TP)TED ROSENTHAL(P)
KENT SAUNDERS(G)PAUL GILL(B)ANDY WATSON(DS)MARC ANDERSON(PER)
1. The Best Thing For You
2. If You Don't See It Too
3. May I Come In
4. It Could Happen To You
5. Like Someone In Love
6. I'm Gonna Laugh You Right Out Of My Life
7. You Turned The Tables On Me
8. Long Ago (And Far Away)
9. Any 'Ol Thing That You Like
10. I'll Remember April
11. The Gentleman Is A Dope
2003年作品
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SHEILA COOPER
カナダ生まれで、現在NYで活躍しているボーカリスト兼アルトサックス奏者のSHEILA COOPERの1998年にリリースされたファーストアルバム。
バックは同郷のリニー・ロスネスのトリオが受け持っています。
唄が7割サックスが3割といった塩梅のアルバムです。
実際のところ彼女の中でどういうバランスが保たれているのかは知る由もないのだけれど、
このアルバムに関しては、そんな配分で制作されています。
リー・コニッツが賛辞を書いているが、決して余技で終わっていない本格的なサックスプレイがこのアルバムでも聴けます。
で、まるまる一枚サックス一本だけで、充実した内容のアルバムが出来るかというとそれはまた別の話と逃げないといけないなぁ・・・
ハッキリ言ってそれは、時期尚早といわざる得ない。
この作品のように、唄とサックスをうまく組み合わせた今のやり方が正解なのです。
彼女は決して技巧派のボーカリストでもないし、声量もあるほうでもないが、ホーンプレイヤーらしく、聴かせどころをわきまえた、自分のハートをうまく伝える術を知っています。
チャーミングな歌声から、唄に比べて意外と男性的な太くハスキー成分を含むアルトサックスの間奏のつながりもスムースで、リラックスして聴き通おす事の出来るアルバムですね。
リニー・ロスネス・トリオとの演奏はきっと彼女にとって最高の経験だったに違いありません。
メンバーはSHEILA COOPER(VO.AS)RENEE ROSNES(P)SCOTT COLLEY(B)BILLY DRUMMOND(DS)
録音は1997年5月  NJ
1. You'd Be So Nice To Come Home To
2. Meet Me At No Special Place
3. You Turned The Tables On Me
4. Shall We Dance
5. The Thrill Is Gone
6. Lonely House
7. I Wake Up In The Morning Feeling Fine
8. I'll Build A Stairway To Paradise
9. If I Only Had a Brain
10. The Gentleman Is A Dope
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TED POOR
これは、注目のニュータレント、TED POORの2004年にリリースされた作品。
ドラマー、パーカッション奏者、FSNT,ブルックリン系~NYアンダーグラウンド系の新しいジャズを追いかけている方は注目の作品だと最初に言ってしまおう。
ジム・ブラックやパル・ニルセン・ラブのドラムに痺れている方には、絶賛をもって受け入れられるのではないかと思います。
TED POORのプレイは、BEN MONDERのニューカルテットアルバムやCUONG VU TRIOで既に聴けると思うのだけど、それらのアルバムでTEDのドラムに興味をもって、このアルバムの存在を知ったときは小踊りしちゃいました。
作品自体は、ジム・ブラックやベン・モンダーの作品よりもストレートよりの作品で4ビートはもちろん、かっちりしたリズム決めのなされている曲が多いので、一般的に聴きやすい内容となっています。
もちろん、そこは、現代NYジャズの一端を担うサウンドなので、ありきたりのサウンドが展開されているわけではなく、たゆとうイメージ、揺らぎ感覚が盛り込まれている。
そして、TED POOR(テッド・ポー)のダイナミクスに優れ、スペースを感じさせる要素とリズムの洪水で空間を埋め尽くす怒涛のアクション技を巧みなバランスで融合させた切れ味とタイム感覚に非凡な才能を見出せるドラミング。
このアルバムでは「GIANT STEPS」「THIS IS NEW」「EMBRACEBLE YOU」といった有名ナンバーも収録されていて、それらも、ユニークな解釈がなされている。
灼熱の太陽と北極の氷山が一緒にやってきたようなイメージ・・・
ホットなんだけど、クール、対極のイメージがTED POORのこのアルバムではまるでリバーワールドのように渾然一体となって表出されているような気がしてならない。
TED POOR・・・
この名前を覚えておいて欲しい。
将来、必ずよく見かける名前になるはずだから・・・

メンバーはTED POOR(DS)BEN MONDER(G)MATT BLANCHARD(TS)IKE STURM(B)ERIC BIONDO(TP)
録音は2003年6月4日 AVATOR STUDIOS, NY
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HAROLD BATTISTE
少し前、否、1996年リリースだから、もう10年も前の作品か?埋もらせておくにはもったいない作品なので掘り起こして本日ここに紹介。
HAROLD BATTISTEは、ニューオリンズのジャズの大家、教育者で、このアルバムも本人自身はラスト曲で、エリス・マルサリスとデュオで1曲演奏しているだけで、自身の作曲を当時のヤングライオンズ達に演奏させるプロデューサー的役割をはたしています。
トランペットがNicholas Payton, サックス Brice Winston (Terence Blanchard group)ベース Neil Caine ( Harry Connick Jr.)サックス Derrick Douget (Ellis Marsalis )ドラム Jason Marsalis サックス John Ellisなどなど。
彼らを二つのコンボに編成して自作を演奏させているのです。
HAROLD BATTISTEの曲はハードバップから60年代モード風のナンバーが中心で、ウィントンの曲ほど小難しくないし、この地方特有のセカンドライン調の曲もなくて、極めて正統派のナンバーなので、全体に聴きやすいです。
先に挙げたニコラスやジェイソンはじめ名前が知れているミュージシャン以外の若手メンバーも演奏技術は達者です。
たとえば、トランペットのANTOINE DRYEやピアノのGLENN PATSCHA、勉強不足で知らないのだけど、骨太で基礎のしっかりした音楽性を見せつけてくれています。
やはり、これは、エリス・マルサリスやハロルド・バティステによる教育、指導の賜物なのだろう。
もちろん、モダンジャズ黎明期の体で覚えた叩き上げ型のモダンジャズグレートのオリジナリティに比べれば、現代のルイジアナ州出身の若手といえど、そういう土壌のおかげで、スタイルの独自性といった点では弱いのかもしれないけれど、この地で育ったミュージシャンは少なくともバークリーメソッドを学んだミュージシャンより、伸び伸びとしていて、土地柄なのか、太陽と土の香りを運んでくれる気がするのは、私の思い過ごしなのだろうか?
ラストの曲のみ、ハロルドのソプラノサックスが聴ける。
エリス・マルサリスとのデュオ演奏で、これがいいんです。
トラディショナルナンバー「WHEN THE SAINTS」、キャノンボール・アダレイのような、甘くて太くて丸みのある素晴らしい音色、この演奏が一番の聴きものかもしれない。
メンバーは、groupA-JASON MARSALIS(DS)NEAL CAIN(B)GLENN PASSCHA(P)BRICE WINSTON(TS)JOHN ELLIS(TS)NICHOLAS PAYTON(TP)
group-BGEOFF CLAPP(DS)SEAN DRABBITT(B)GLENN PASTSHA(P)BRICE WINSTON(TS)DEREK DOUGET(AS)ANTOINE DRYE(TP) duo- ELLIS MARSALIS(P)HAROLD BATTISTE(SS)
1996年作品 NEW ORLEANS
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JOHN HORLER
一昔前になるだろうか、「LOST KEYS」という素晴らしいアルバムが記憶に強く残っているJOHN HORLERの2003年ピアノトリオアルバム。
「LOST KEYS」の印象がハンプトン・ホーズのVAULT盤「HIGH IN THE SKY」のような、ほの暗さを感じさせる陰影感にとても溢れた好内容だったので、このアルバムにも期待が高まったのです。
あれっ、こんなに明快で歯切れの良い語り口のピアニストだったっかな?
10年前のLOST KEYでのダークな、すこし沈鬱したと言っては語弊をよびそうだけれども、海底の中でよどんでいるようなイメージのピアノと、今回の新作と少し自分の中での認識にズレがあったのは事実。
この10年の間にホーラーの身の回りに何かあったのだろうか?
この作品では、明るい日差しと心地よい風に当たりながら公園の芝生で寝転がっているような、快適な気分になれるような演奏が聴けるのですね。
この作品でのホーラーのピアノは明快なタッチで、優しく美しいフレーズを淀みなく弾いていて、
そのかってのイメージとの差がとても新鮮に聴こえるのです。
3曲目エバンスの「G.WALTZ」や6曲目「GENTLE BOSSA」では、この人ならではの繊細でそこはかとない叙情性を盛り込んだ表現も見られ、続く「EVEN STEVENS」では、モーダルアプローチによるアグレッシブなプレイなど幅の広いところが、見受けられます。
選曲もレイ・ノーブル、ロジャース&ハートのスタンダードから、ケニー・ホイーラー、ジョン・ダンクワ-ス、ジョン・アバクロンビーと一筋縄でいかない凝ったもので、楽しましてくれます。
ベテランピアニストが久々に放ったピアノトリオ作品として、聴く価値が充分ある作品だと思います。
メンバーはJOHN HORLER(P)JEFF CLYNE(B)TREVOR TOMKINS(DS)
録音は2003年10月13日 LONDON
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WILKINS & ALLEN
ペンシルバニアのピアニストSKIP WILKINSが女性フルート奏者JILL ALLENとの双頭カルテット名義でリリースした2001年作。
ゲストとしてDAVE LIENMANを迎えています。
この作品は1994年のファーストアルバムに続く第2作となるもので、1曲を除き彼らのオリジナル作品主体のものとなっています。
彼らの音楽はモーダルなものを最も志向していると思われるので、その点、デイブ・リーブマンの音楽志向性との相性はバッチリと言えます。
リーブマンは1曲目をテナー、3曲目をソプラノサックスで参加しており、JILL ALLENのフルートとユニゾンで奏でるテーマはなかなか魅力的です。
日本にも小宅珠実というベテランジャズフルート奏者がいるが、JILL ALLENも小宅に負けず劣らず硬派な本格派のフルート奏者で、アドリブに対する集中度はとても高いものを持っていると思います。
ただ、もう少しプレイにユーモアや余裕、遊びを加えた方がもっとプレイに幅がでてより良くなるのではないかと思う。
リーブマンにあって、JILL ALLENに足りない部分はこの点であるように思う。
ピアノのSKIP WILKINSとの音楽観も長年、活動を共にするだけに似通っていて、決して妥協に流れているのではなくてお互いに切磋琢磨しているところが演奏から伺われて悪くない。
現在、一緒に活動はしていないようで、SKIP WILKINSは自身のグループで活動している。
一方、JILL ALLENはヤマハのパーフォーミングアーティストで、2005年にはTORU DODOやTONY MARINO, ADAM NUSSBAUMとカルテット作をリリースしていて、自身の音楽を追求しているようだ。
メンバーはJILL ALLEN(FL,ELB)SKIP WILKINS(P)TONY MARINO(B)TOM WHALEY(DS)DAVID LIEBMAN(TS,SS)
2001年作品
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PACFIC TRIO
SEVNTH傘下Jazz専門新レーベル『EX-TENTION』第二弾。
この作品、PACIFIC TRIOという冠トリオのネーミングが付いているので、通常のジャズファンからはなかなか注目されにくいと思うのだけど、思わぬ拾い物だと思います。
MAGMA関連作/Stella Vander『LE COEUR ALLANT VERS』に参加しているKey奏者Frederic D'oelsnitzがここでは、俺のやりたかったことは本当はこんな演奏だったんだよと言わんばかりに直球一本勝負の極めて正統的なジャズピアノを弾いているのです。
場面、場面によって変幻自在、直情的にアグレッシブにモーダルに駆け上がったり、抑揚のついた繊細なタッチを披露したり、エレピによるファンクネス、クールネス、ハンコック技法を展開したりで、まさにやりたい放題。
ブラッド・メルドーやジャッキー・テラソン、エンリコ・ピアレヌンツィの奏法が見え隠れしたりと、この一作だけでは本人のオリジナリティーが何処まであるのか判断がつきにくいのだけれども、この思い切りの良さと、アクティビティーは気にいった。
ドラムのYOANN SERRAのハリキリドラムも凄い、凄い。
フレデリックとペアで空間を切り込み、劈き、疾走していく爆発力、推進力は最近の巷のピアノトリオであまり聴かれないもの。
ここを是非聴いてもらいたいところです。
ベースのFRANCOIS GALLIXが全体の舵取り役を見事にこなしていてトリオ全体の一体感もバッチリです。
選曲もオリジナル以外にコルトレーン「EXPRESSION」ジョージ・コールマン「APACHE DANCE」フレディー・レッドやジェームズ・ブラウンなどなど、申し分ない。
フランスにまた、素晴らしいピアノトリオを発見したとお伝えしておこう。
メンバーはFREDERIC D'OELSNITZ(P,ELP)FRANCOIS GALLIX(B)YOANN SERRA(DS)
2003年作品
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MICHEL ZENINO
昨年リリースされたFRANCOIS LOCKWOODのピアノトリオ作品でも素晴らしいベースワークを聴かせてくれたMICHEL ZENINOの2002年にEX-TENSION RECORDSからリリースされた自己のカルテットアルバム。
ちなみに、この人、AKIKOのデビュー盤にも参加しています。
この作品にはピアノにALAIN JEAN-MARIEが参加していることがなんと言っても目を惹くでしょう。
1曲目から、バリバリのモード曲、ハードドライヴィングなプレイを全員が展開。
アラン・ジャン・マリーのこんなにはりきったアグレッシブな演奏ってここ最近、他にあまり聴いた記憶がありません。
サックスのANDRE VILLEGERも良く引き締まった音色で、楽曲に色を加えています。
70年代以降のプレイヤーより、コルトレーンや60年代のショーター、ジョーヘンの影響の方が強く出ているプレイヤーかもしれません。
個性の点ではまだ弱いかもしれませんが今からどんどん頭角を顕してくるサックスプレイヤーだと思います。
それに比べてドラムスは少し弱いかな?もう少し暴れてくれたほうがもっと良くなったのではないでしょうか?
リーダーのMICHEL ZENINOはというと、まさにベーシストらしいベーシスト、リーダー作といえどほとんどソロもとらず、全体の橋渡し、監修的な仕事を第一義的に務めていて、アルバムを成功に導いている。
フランス現代ジャズ界の素晴らしい一端を垣間見せてくれる目立たないかもしれませんが推薦に値する作品だと思います。
ANDRE VILLEGER(TS,SS)ALAIN JEAN-MARIE(P)STEPHANE FOUCHER(DS)MICHEL ZENINO(B)
2002年作品
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trifi2005.jpg
そういえば、この作品まだブログで未紹介だったのだなと思い、本日改めてここに紹介。
ショップのほうでは、昨年秋から、何度も仕入れているのですが、その度に完売、結構良い値段(ゴメンね。)であるにもかかわらず、当店のロングセラー、ベストセラーとなっています。
MOONKSの大河内さんも、お気に入りのようで、ことある如く宣伝してくれているようです。
TRI-FIというロックグループのようなグループ名で、素通りしてしまいかねないのですが、これは人気ピアニスト、MATTHEW FRIESの最新ピアノトリオ作品なのです。
これは、聴いているこちらのほうまで頭が良くなってくるような気分が味わえるピアノトリオアルバムです。
MATTHEW FRIESというピアニスト、おそらくチック・コリアや小曽根真と同じように自分のだしている音を全て分かって演奏している類のピアニストではないかと思う。
頭脳明晰、理路整然としたところがそのプレイ振りから伝わってくるのです。
少なくとも感覚派のピアニストではないと思う。
裏ジャケは、彼らトリオの3人が走っている姿が写っているのだけれど、風を切って走ることの爽快感、躍動感までもが音に表れているような気がしてならない。
巧みに計算された演算能力性とアクティブな運動能力性、瞬発力、躍動感といったものが、マシュー・フリエスの中で最も理想的と思えるバランスでもって振り分けられているように感じるのです。
これは、ネガティブな意味で書いているのではありません。
ジャズピアニストとしての経験に裏づけられた演奏スキルと瞬時瞬時最も適した音を表現していく適応能力が絶妙にバランスを保っているのです。
そしてこのことが重要なのだけど、聴いていて嫌味ではなくとてもナチュラルな形でこちらの耳にはいってくるのであります。
マシューのことしか書かなかったけど、トリオ3人の一体感ももちろん、素晴らしいものがあります。
2004年ブルックリン発、現在進行形ピアノトリオの登場を喜びたい。
メンバーはMATTHEW FRIES(P)KEITH HALL(DS)PHIL PALOMBI(B)guest:CURTIS STIGERS(VO)
録音は2004年6月9,10日 BROOKLYN,NY
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SARA SERPA
この作品、MPB(中南米音楽が発行のフリーペーパー)で健筆を振るわれているsh2oさんのブログを見て知りました。
聴きたいなと思って、検索すると、自分のショップの仕入先から簡単に仕入れるじゃないですか!
早速注文して、今日でかれこれ10回以上聴いています。
SARA SERPA(サラ・セルパ)は1979年ポルトガル、リスボン生まれ。
2005年にバークリー音楽大学に入学して現在はボストンに在住しています。
ポルトガルのもの哀しいファドにも通ずるような、せつなさを秘めた彼女の声は、ダイレクトに心の襞に入り込んでくる。
ブラジルのサウダージとファナ・モリーナに代表されるアルゼンチン音響派ボーカリスト独特の浮遊感、揺らぎ感覚が、彼女の中で巧みにブレンドされ、唯一無二のオリジナリティーを既に確立していると言えます。
バックのこれまた、ベン・モンダーやスティーブ・カルデナス、マーク・ターナーやクリス・チークとブラインドで聴いたらそのまま信じ込みそうになる現代ブルックリン一派となんら遜色のない地元のミュージシャンの見事な演奏とのフィット感もバッチリです。
いわゆる普通のジャズボーカルではないけれども、これはとてもオリジナルで印象深いジャズボーカルです。
sh2oさんもおっしゃっていたけど、ルシアーナ・スーザに続く凄いボーカリストを私たちは発見したのかもしれない。
ミントリキュールを口の中で転がしたようなラスト曲「プレリュード・トゥ・ア・キス」のひんやりした食感(聴感?)に乾杯!
メンバーはSARA SERPA(VO)ANDRE MATOS(G)JORGE REIS(AS)NELSON CASCAIS(B)BRUNO PEDROSO(DS)
録音は2005年1月18日 LISBOA
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CHRISTIAN VANDER
クリスチャン・ヴァンデ-ルの1999年、パリの有名ジャズクラブ「SUNSET」でのワンホーンカルテットライブ作品。
ここ最近、メンバー全員がここまで、コルトレーンに心酔しきっている演奏を聴いたことがない。
「BRAZILLIA」「TRANSITION」「IMPRESSIONS」「NAIMA」選曲を見ればお分かりのようにインパルス中期までの、黄金のジョン・コルトレーン・カルテットの音楽にフォーカスを絞り込んでいることもこのアルバムの成功の因ではないかと思います。
演奏時間も当時のコルトレーンカルテットを踏襲していて長いです。
13分、14分、18分、16分といった具合。
ライブなので、このくらいの演奏時間は別に珍しいことでもなんでもないのですけど・・・
さすがに1時間も演らないのは、彼らも分をわきまえているというか・・・
1曲目の「BRAZILIA」は個人的に思い出のある曲なのです。
この作品、「カルテット・プレイズ」(チム・チム・チェリーが入ってるやつね!)に収録されているのだけど、高校生の頃初めてアルバイトしたお金で買った最初のレコードがこれなんです。
当時は一枚のレコードを50回、100回と聴いたものです。懐かしい。
おっと、脱線。
真正面からその当時のコルトレーンの音楽を掘り起こしているCHRISTIAN VANDERの本気モードは1999年という時代からは、いささかジャズのプラットホームの端のほうに位置しているような感がないこともないのですが、そんなことはどうでもよいと思わせるだけの気概、信念、決意、精神(コルトレーンの曲のようなタームが並ぶのだけど)に溢れた力強い音楽が演奏されているのです。
そう、コルトレーンの音楽は不滅なのです。

ピアノトリオやボーカルの後に、こういうアグレッシブなサウンドを聴くと、耳がシャッキとしてまた新たに聴いてみようという気になるのですね。
メンバーはYANNICK RIEU(TS)EMMANUEL BORGHI(P)EMMANUEL GRIMONPREZ(B)CHRISTIAN VANDER(DS)
録音は1999年1月7,8,9日 SUSET JAZZ CLUB, PARIS
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ERIN McDOUGALD
シカゴの美人ボーカリストERIN McDOUGALDの2005年作品で、ショップのほうでは2ヶ月以上前から売っているのだけど、予想以上の好評で中々手元にある時間がなくて、今日ようやくゆっくりと聴けました。
脚ジャケといえば、クール・ストラッティンやパット・モラン、新しいところではヘルマン・クシチのカフェ盤が有名ですが、これも加えてやってください。
バックのピアノトリオがダン・クレイなので、演奏の内容は申し分ないといえるでしょう。
エリンの唄は結構、顔に似合わずパワフルなもので、はつらつとした印象を受けます。
良い意味でのダイアナ・クラールやノラ・ジョーンズに代表されるポップテイストも持ち合わせた実力派と言えるでしょう。
ダン・クレイのピアノもボーカルの伴奏程度のものでなくて結構本気モードはいっていて、ガシガシと1曲目など弾いています。
「SPRING IS HERE」など、ダン・クレイ・トリオのノリの良い演奏にエリンの歌唱もテンション高めで、春を通り越して真夏の炎天下っていう感じなのですが、そういうところは大目に見て、全体としてはとても聴きごたえのあるボーカルアルバムになっていると思います。
私のお気に入りは10曲目「SMALL DAY TOMORROW」。
CRY ME A RIVERにちょっと似た感じの曲だけど、そこにジョニ・ミッチェルやリッキー・リー・ジョーンズのフォーキーな要素を織り込んだ佳曲です。
ボブ・ドローの曲のようです。
勉強不足で知らなかったのだけど、これはいい曲発見!
と、ここまで書いてアイリーン・クラールがいかにも唄ったいるような曲調だったので、調べてみるとやっぱり、本人が唄っていました。「KRAL SPACE」の6曲目で。
いままで、1曲目の「WHEELERS AND DEALERS」ばかり聴いていたのだけど、こんなにいい曲だったのだ。
お持ちの方は、是非聴いてみてください。
メンバーはERIN McDOUGALD(VO)DAN CRAY(P)CLARK SOMMERS(B)GREG WYSER(DS,PER)GEOF BRADFIELD(TS,SS,BCL,FL)
2005年作品
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DAMIAN ESPINOSA
実際、ショップを開店して分かったのだけど、ファンの動物的な嗅覚というのは、まるでジャングルで獲物を狙う虎やライオンのように、鋭いものがあるなと。
まだ、このブログに取り上げてなくとも、良い作品は自然と売れていくのであります。
このDAMIAN ESPINOSAもそう。確か今年の2月くらいから販売しているのだけど、常に在庫切れの状態で、今も発注しようとしたら、アメリカのほうも入荷待ちだった。(泣)
これは、隠遁しておきたいピアノトリオ作品です。
できれば、あまり人に知らさずにこっそりと鑑賞して、ひとり悦に浸りたいような、そんな気にさせる演奏なのです。
エスピノーザのピアノは、淡い限りなく透明に近い(表現古っ!)ブルーを思わせるまさに水彩画のタッチなのです。タッチは重くはないのだけど、はっきりとした自己主張が感じられ、
それでいて押し付けがましいところがない、いそうで他にあまりいないタイプのピアニストだと思います。
全曲オリジナル曲なのだけど、統一感のある佳曲揃い。
ひんやりとした夜風に吹かれるようなイメージ、初めて訪れた見知らぬ街の裏通りを彷徨っているうちに日が暮れてしまったときに感じるような孤独感、うら寂しさのようなものが感じられ、悪くないです。
聴くごとに愛着が増してくる作品だと思います。
メンバーは、DAMIAN ESPINOSA(P)PAUL STEINBECK(B)SCOTT GARRIGAN(DS)
2002年作品
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CHRISTIAN FABIAN
ライオネル・ハンプトン楽団のベーシストを長い間務めているCHRISTIAN FABIANの今年の初めにリリースされたばかりのアルバム。
アンディー・ラバーン・・・ダン・ゴットリーブのピアノトリオにクラウディオ・ロディッティーやギタリストが参加した作品となっています。
半分がピアノトリオの演奏なのでピアノトリオファンの方は要チェックです。
ピアニストのMIKE LOMGOも友情出演なのか1曲、パーカッションで参加。
アンディ・ラバーン、スタン・ゲッツのカルテット在籍の頃から聴いているけど、私にとってケン・ワーナーと並んで最も相性の悪いピアニストだと正直に告白しておこう。
アンディーの作品は、STEEPLECHASE盤など何枚も買い込んで聴いているのだけど、未だこの一枚という作品に巡り合っていないような気がするのです。
テクニックもしっかりしたピアニストだとは思うのだけど、いまひとつ本当の真意が見えてこないというか、何をやりたいのか分からないピアニストなのですね、私にとって。
このアルバムでも、前半はそんなイメージが尾を引っ張って鑑賞に力がはいらなかったのだけど、アルバム半ば、CONFIRMATIONあたりから、俄然良くなってくるのです。
前半の心象風景風コンテンポラリーアコースティックジャズより、最初からこんな感じでリラックスした演奏の方が彼らに合っているような気がします。
「春の如く」での、クラウディオ・ロディッティの円熟したまろやかな、フリューゲルホルンは、聴きものだし、続くスティーブ・スワロー「FALLING GRACE」ルイス・エサ「THE DOLPHIN」への流れも良い。「THE DOLPHIN」でのミュートトランペットも良いです。
LPレコードで言えば、完全にB面の作品ですね、これは。
リーダーのCHRISTIAN FABIANのことに、触れていなかった。
ソリッドで、音程も正確、フルレンジで音の粒立ちも整ったベーシストで、さすがに長い間ハンプトン楽団のベーシストを務めているだけのことはある。
今から、色々なセッションやレコーディングでもっと名前を見かけるようになるのではないだろうか?
メンバーはCHRISTIAN FABIAN(B)ANDY LAVERNE(P)DANNY GOTTLIEB(DS)
guest:CLAUDIO RODITI(TP)COREY CHRISTIANSEN(G)MIKE LONGO(PER)
録音は2005年7月25日  NJ
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ORBERT DAVIS
オルバート・デイビス・・・シカゴ生まれのトランペッターで、わが国では残念なことに、いまだその名をほとんど知られていない存在。
もし、オルバートがニューヨークで、活躍していて有名なレコード会社と契約すれば、ロイ・ハーグローブ、ニコラス・ペイトン、ジェレミー・パレット、ラッセル・ガンら売れっ子勢も、うかうかしておれないだろう。
この作品にはそれくらい、飛ぶ鳥落とすくらいの、勢いや気迫といったものが感じられるのです。
実際、マイナーなインディー系のレーベル会社の作品や自主制作のもので、(実際驚くかもしれないけど1万種類以上の作品がジャズだけでアメリカでリリースされているという事実を目の当たりにしていかに、ごく一部の作品しか日本に入ってきていないかということを実感いたします。)ピアノトリオやボーカル盤以外でこれはという作品に出会うのはとても低い確率なのだけど、こういう素晴らしい作品に巡り合えるので、掘り起こし作業は止められません。
そうやって苦労して見つけ出した作品に、巡り合えた時の喜びは、筆舌しがたいものがあります。
ほんと、ある意味砂山の中から針を探すような、息もつまるような辛気臭い作業なのだけど・・・。

スタイル的にはフレディー・ハバードの影響を最も、感じます。
唯、そこは、今を生きるミュージシャン。
そもそも、ジャズシーンにオルバートの名前が浸透しないのは、シーンへの露出不足があげられて、ライブ活動以外にシカゴのテレビ局の音楽の仕事やコマーシャル音楽の仕事をやっており、様々な音楽に接する経験は、ジャズ活動に直接、間接的にも影響を及ぼしているはず。
そして、そういう生計を立てるのに必要不可欠な仕事が、決してオルバートのジャズ活動をスポイルさせるものになっていないばかりか、むしろ血肉となり、音楽的視野が広くさせている要因のようにも思えるのです。
ファブリッジオ・ボッソが、人気ミュージシャンになった今このオルバート・デイビスの音楽を是非、聴いてみて欲しいと思う。
もし、私が堀江や村上くらい裕福だったら街行く人々に配って歩いて回りたいくらいの作品。
ちょつと言い過ぎたかな?
ORBERT DAVIS(TP,FLH)ARI BROWN(P)RYAN COHAN(P)JAMES CAMMACK(B)ERNIE ADAMS(DS)
TRACY KIRK(TB)guest:KURT ELLING(VO)他


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