RENE URTREGERルイ・マル監督の「死刑台のエレベーター」は中学生の時日曜映画劇場だったか、 TVではじめて見た。映画より前にノエル・カレフの原作を読んでいた。 当時は推理小説に凝っていて一月に10冊くらい読んでいた。 その創元推理文庫のあとがきを植草甚一が書いていてマイルスの同作の映画音楽の 吹き込みについて書いていた。ジャズなんか当時全然知らなくて、いや音楽自体あまり興味を持っていなかったのが当時の実状だった。そんな私が植草甚一の文に魅せられてなんとなくJAZZに興味をもつというか、大人の雰囲気に一種のあこがれみたいなのを抱いていたのだと思う。 実際、直接的に聴くきっかけになったのは、ソニー・ロリンズだが、最初のきっかけというか、耳にした最初のジャズは「死刑台のエレベーター」、マイルスのトランペットだった。そのセッションでピアノをひいていたのが、ルネ・ユルトルジュ。 英BBC放送のマイルス・ドキュメンタリー番組でそのユルトルジュの妹だったっかが、出演していて「マイルスとの交際」を告白していたっけな・・・ 妹ではなくてお兄さんの話。 「死刑台」はその後何回も見ていて大学にはいって何日目かで特別構堂(懐かしい響き)で上映されているのを友達と見に行った。 前の席に見覚えの在る人がすわっているなぁと思ったら、後に入るJAZZ研(聴くほうです)の先輩、JAZZ喫茶「JOKE」でバイトしていたH野さんだった。 テレビでも何回か再上映され、今はビデオにも録画してある。 そんな身近な一作なのだが、ルネ・ユルトルジュをピアニストとしてまともに認識したのは、この「SERENA」を聴いてからだと思う。 「死刑台」では、マイルスの存在が大きすぎてマイルス/その他バックのミュージシャンになっていたんだと思う。それくらいあの作品はマイルスのトランペットと音楽自体のインパクトが私にとって大きかったのだ。 このアルバムは90年の吹き込みで「死刑台」から実に31年経過した時の録音。 ユルトルジュも既にフランスジャズ界の重鎮として自己のレーベル経営と演奏活動に精力を注ぎ込んでいた頃で、ベテランらしい安定したそしてジャズ的スリルにみち溢れたプレイが録音されている。 ただ、演奏より作曲である。正確にいうと2曲目「SERENA」である。 あなたは、今暮れなずむパリの石畳の舗道を歩いている。 群青色の空の一部には、まだわずかだがオレンジ色が残っている。 家路を急ぐ車のライトとは反対方向に歩を進める。 このまま真っ直ぐ進めば、凱旋門広場にでるはずだ。 さっき地下鉄のキオスクでかったゴロワーズに火をつける。 普通の風景が映画のワンシーンになるパリの町並み。 そんな風景がイメージされるロマンとエスプリがきいた曲。「SERENA」 ストリングスのイントロに導かれてルネのピアノが甘美にメロディーを撫でる。 テーマを2回、2回目はわずかに弾きかたに変化をつけているのが憎い。 そこへ猛然と押し入ってくるのが、ファナティク・男気グロスマン。 テナーからピアノ、ピアノからチェロのソロに受け継がれていく。 エレピの音色優しく最後のテーマを今度はグロスマンがジェントルに吹く。 ジャンル別一覧
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