今月のはじめ，北米トヨタのセクハラ訴訟は世間を騒がせた．総額で１億９０００万ドルという損害賠償の請求額はすごい．

セックスを女性の前でどうどうと話す日本の職場環境だが，男性社員がいったんアメリカにくるとたびたびセクハラで問題をおこす．これまでも多くの日本企業がセクハラで訴えられたのだが，アメリカは女性の権利ががっちり守られているので，セクハラにかんしてはきっちりわきまえないと，今回のような問題を起こすことになるのだ．

さて，興味深いのは，この北米トヨタの大高英昭社長がいったいどんなセクハラをしたかだった．いろいろ記事をさがしていたら，ビジネスウィーク（5月22日号）で訴えた小林（Kobayasi Sayaka）さんの記事が掲載されていたので，1億9000万ドルのセクハラ（小林さん側の主張）の経緯を紹介しよう．

• 2005年3月： 大高社長の推薦で，小林さんが社長秘書に昇進


• 9月2日：小林さんの誕生日プレゼントとして，大高社長が個人的に12本の赤いバラを贈る．


• 9月6日：ワシントンDCへの出張先のホテルで，夜10時ころ，大高社長の部屋に呼びつけられる．「不適切な」会話のあとに大高社長は体を抱きつこうとしたが，小林さんはプロフェッショナルな関係」のみをもとめるとして部屋を去った．


• 10月17日： 大高社長がネックレスをおくる


• 11月14日：NYのメトロポリンタン美術館でランチを一緒にするよう求められ，セントラルパークに一緒に歩くよう「命令」され，小林さんに抱きつこうとした．すかさず，体をそらし，小林さんは「性的関係はもてない」と断った．


• 11月後半：人事部にセクハラの相談をするが，「調査をおこなう予定はない」と回答


• 12月： 重役にセクハラについて相談．その重役は「大高社長と直接話しあう」よういった．


• 1月6日： 12月30日に小林さんが結婚したことをきいて，大高社長は，「もし結婚するっていうことを教えてくれたら，迷惑かけなかったのに」と言った．

とこんな経緯だが，ようするに大高社長は「俺の愛人になれ」と迫っていたということだろう．

この1月から5月までは，おそらくすさまじい交渉がトヨタと小林さんとの間でおこなわれていたのだろう．通常は，世間を騒がせないよう示談で済ますのだけど，さすがのトヨタも1億9000万ドルまでは払えなかったのだろう．

その真相は裁判で明らかにされるとして，ひとつの教訓は，北米社長までに駆け上がった人生は，ひとつのモラルの欠陥で地位と名声を失ったということだろうか．