日仏交流(夫の穴)
先週、私が働いている研究所の部門と、同分野の日本の一大研究所のジョイント・ミーティングが行われました。以前“夫の穴(アムステルダム)”で少し述べたのですが、ヨーロッパ間では科学的交流が非常に活発であるのに対し、アジアにおける日本は他のアジア各国と比較して研究レベルが高いため、立場的に独立、悪く言えば孤立したような印象を持っていました。ですので、今回このように日仏間で相互に科学的交流を深める機会ができ、期待していました。 日本の研究所からいらっしゃった研究者(PI, primary investigator、要するに研究室のボスですね)は10人で、2日間に渡り私達の研究所のPI達と共に、未公表のデータを含めて発表、議論を行いました。その中でショックを受けてしまったのは日本側の研究レベルの高さです。もちろん私は3年前まで日本でポスドクをしていた訳ですから、それまでの日本の研究レベルはある程度身を以て知っていたはず。ところが今回このように感じたのは、私の渡仏後の日本の研究レベルが大きく進歩してしまったのでしょうか?或は日本にいた時はそのレベルに気づいていなかっただけ? 日本人の性癖の1つとして、“新しいもの好き”ということがあるかと思います。家電、電子機器等はすぐに新製品に興味が向かいますよね(フランス人はそんなことないです)。この性癖は研究においても影響を及ぼしているのではないでしょうか。私の研究分野では、解析機器の進歩が目覚ましいのですが、そういった機器をいち早く取り入れていることは解析を進める上でかなりの利点になっているでしょう。もちろんお金がかかりますが、政府もその研究所には巨額の資金を投入しているようですし。最新機器を使って初めて得ることができる結果から、新しい思考や疑問が生じ、その疑問にまた新しい手法を使って答えていく、といった好循環は研究のスピードをどんどん加速させているはずです。また、日本人は個性がない、画一的などとも言われますが、今回の日本側の発表では個性的、独創的な研究も多く聴け、非常に興味深かったです。 ミーティングについては、レセプション・パーティーにお邪魔させて頂き、何人かのPIの方と話をさせて頂いたり、また同僚達とも幾つかの発表について話をしたりしました。その印象としては、当初私が考えていたような、“日本側にとって有意義”というよりも、“フランス側の研究者達が日本側の研究に感銘を受け、インスパイアーされた”といった感じでした。 私が特に専門にしている領域では、日本では応用が主で、基礎研究をするには資金獲得等含め少々難しい状況にあるので、こちらで研究して有意義な点が多いのは確かですが、解析技術・手法の進歩等に関して浦島太郎にならないように気を付けないといけないかもしれません。