死人が夜ピアノを弾く~死人が夜ピアノを弾く~ 『幻の指定席』所収芦川夕子は、若手女優の池まゆみの自宅を訪れた 夕子の夫である芦川晴彦は、まゆみにピアノのレッスンをしているのだが、どうも二人の仲が怪しいのだ そのことを夕子は確かめるつもりだった 初めは当たり障りの無い話をしていた二人だったが、核心に迫った話を切り出すと、まゆみは、あっさりと晴彦との関係を認めた そして、夕子に判の押された婚姻届を見せつけた それを見て、夕子は深いショックを受けてしまう というのも、夕子と晴彦は正式には籍に入っていないのである 頭に血がのぼった夕子は、浴室に行ったまゆみを追いかけ、ドライヤーで何度も頭を殴打して撲殺してしまう 勢い余ってまゆみを殺害してしまった夕子 そのまま逃げ帰ろうかと思ったが、まゆみの自宅を訪れることを知っている人物が一人いる事を思い出した ここに来る前、家の場所が判らずに、近所の薬局屋で尋ねていたのだ 警察が調べれば、夫とまゆみが不倫していることもすぐに分かり、自分が真っ先に疑われるだろう そう考えると、自分のアリバイを作るために、夕子は偽装工作を始める 一旦帰宅した夕子は、夫の晴彦の夕食の支度をし、まゆみから「今日の夜のレッスンは中止にしてほしい」という連絡があったことを伝えた まゆみの事もあってか、最近夕子と晴彦の関係は冷え切っていた 夕子の言葉を信じないかのように、席を立ちまゆみの自宅に連絡を入れた晴彦は、応答がないことから、そのまま自室に閉じこもってしまう 食事のとき、睡眠薬入りのウイスキーを飲ましたので、晴彦は眠りにつくだろう それを見届けた夕子は、再びまゆみの家へと向かった まゆみとの他愛も無い話のなかで、今は“ソナチネの6番”を習っていると、まゆみは言っていた それをアリバイ工作にしようと夕子は考えていた 夜遅くにピアノの音が家からすれば、少なくともその時間まではまゆみは生きていたということになり、18時半過ぎに家を訪れていた夕子は、言い逃れをすることができる 夕子はピアノの心得があるので、ソナチネの6番をゆっくりと弾いた するとその時、電話のベルが鳴った 驚く夕子 しかし、このまま電話に出ないと怪しまれるかもしれない 意を決して受話器をあげた夕子は、そのまま受話器を横に置くと、電話をかけてきた相手に聞かせるようにして再びソナチネの6番を弾いた 翌日の昼、池まゆみの死体が、マネージャーによって発見される 警察の調べによると、マネージャーは毎晩22時半に必ず電話をすることになっていて、昨夜電話したときは、一言も話さずに、なぜかピアノの演奏を聞かせたという その音は録音しているというので、専門家に調べさせたところ、工作の跡は見られないという さらには、近所の聞き込みで、昨晩の22時半過ぎに池まゆみの自宅からピアノの音が聞こえてきたという証言をいくつも得て、まゆみの死亡推定時刻は22時半以降ということになった まゆみの死体が発見された翌日、晴彦のもとに、見城警部が訪れた 事件のことで事情を聞きたいのだという まゆみが晴彦との関係を日記に残していたのだ 何も隠す必要がなくなった晴彦は、夕子と別れて、まゆみと結婚するつもりだったことを見城警部に伝える 当然のことながら、夕子のもとにも見城警部が訪ねてきた 夕子には、夫を愛人に盗られたという動機があるわけだから、疑われて当然だろう 夕子は、18時半過ぎにまゆみの家を訪れたことを素直に認めたが、話を終えるとそのまま帰ったことを告げた 死亡推定時刻は23時近くだから、夕子が疑われることは無かった なかなか有力な容疑者が浮上してこないなか、警察では、晴彦に疑いの目を向けていて、事情聴取がされることとなった そこで見城警部は、マネージャーが録音していた、まゆみが死の直前に弾いたというソナチネの6番を聞かせた すると、それを聞き終えた晴彦は顔面を蒼白させて、 「まゆみを殺したのは自分です」 と自白し、その翌日、留置所で首を吊って自殺してしまう その報せを受けたとき、夕子は訳がわからなかった なぜ夫は、自分の罪をかぶって自殺してしまったのだろうか? そんな夕子の前に、再び見城警部が現れるのだった… ~感想~ それぞれが自分の思いを押し通すがために起きてしまった悲劇 相手のことを思いやる気持ちが少しでもあったのなら、このような最悪の結末を迎えることはなかっただろう 事件を解く鍵はピアノにあるのだが、そのトリックは意外性はあるものの、自分にはちょっと分かりづらかった という事で、私的評価は星【★★☆☆☆】2つです ◆この原作のドラマ化作品◆ 昭和61年10月6日放送 山村美紗サスペンス 『死人が夜ピアノを弾く』 出演/狩矢警部…松方弘樹/芦川夕子…松尾嘉代/芦川晴彦…宅麻伸/木村敏江…平淑恵/池まゆみ…斉藤絵里 ほか |