三婆
新橋演舞場3月新派公演『三婆』平成元年の春、金融業の社長を務める武市浩蔵が急逝妻である武市松子は目黒の豪邸で一人暮らしを始めるそこへ、妾だった北里駒代と、義妹の武市タキが転がり込んできた!浩蔵の逝去により会社は倒産、そのあおりを受けて、駒代とタキが住む家は借金返済のために差し押さえられてしまったのだ思いがけず同じ屋根の下で一緒に暮らすこととなった本妻・妾・小姑…顔を合わすたびに言い争いは耐えない泣いて、笑って、闘って…三人の女が巻き起こす大騒動!果たしてその結末は!?(公演あらすじより)「三婆」は、有吉佐和子氏の原作をもとに、昭和48年に舞台化されて以来、度々上演を重ねている傑作喜劇自分も過去に、今は無き芸術座で、池内淳子氏・加藤治子氏・渡辺美佐子氏と言う顔触れで観劇したことがある遺産相続、高齢化社会と、取り扱っている題材は現代にも通ずる話で、その風刺の効いた内容は長い年月を経ても色褪せることはないこの作品の見所は、なんといっても本妻・妾・小姑という女三人の闘いその張り合う姿は、どこか痛々しく、そして物悲しいそんな泥臭い展開を期待していたのだが、今回の新派で上演された「三婆」は時代設定を現代に置き換え、さらには登場人物も増えていて、また一味違ったまるでホームドラマのような作品に仕上がっていたそれはそれでいいのだが、話を膨らませたことによって、印象が散漫になった感は否めないまた、無理にドタバタ喜劇に仕上げようとしていて、ちょっと忙しなく思えた老いることの哀しみ、残酷さを見せつけられるので、自分の老後を重ねて見てしまい、観劇中は辛辣な気分になってしまうけれども、三婆を演じる水谷八重子氏、波野久里子氏、朝丘雪路氏という芸達者なお三方のパワフルさに圧倒され、観終わった後は、不思議と晴れ晴れとしたものが残っているのだった新橋演舞場3月新派公演『三婆』3月5日(金)~3月25日(木)まで出演/武市松子…水谷八重子/北里駒代…波乃久里子/武市タキ…朝丘雪路/園田文江…中田喜子/エリザベス・藤野・はるみ…藤田朋子/二宮三郎兵衛…安井昌二/川田則子…中島唱子 ほか