519653 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

華の世界

華の世界

第七章

振り向けば夕暮れ

第七章:終幕

__「着いたわ」とダイナーは言った。
__僕たちはフェリーを降りた。
__「ずっと前から聞きたいことがあるんだ」と僕は言った。
__「どうぞ」
__「この数年間の生活」
__「ま、どう言えばいいかしら?長いよ」
__「あの日、君が出た後・・・」
__「あたし起きてから、あなたと一緒にシドニーへ行こうと思った。でも、そうすると、悲しいことばかりじゃない?だから、静かに出ちゃった。家に帰って、あなたのことをずっと思っていた。後悔したわ」
__僕は黙ってて聞いた。
__「あたしが三年生の時、偉生(ワイサン)がお金を少し儲けて・・・」
__「偉生?」
__「ええ、話してなかったね、彼の名前」
__偉生か、あの「彼」の名前は。
__三年も経ってから、僕は初めてこの人の名前を知った。
__「名前なんかどうでもいい」
__「変わってないね」とダイナーは笑った。
__「まあね」
__ダイナーは話を続けた「偉生の貯金、そして彼の父親がお金を貸してくださったおかげで、あたしたち、新しい家を買った」
__「さっき北岸のやつ?」
__「そう」
__「それで?」
__「彼はあたしに言った。寮をやめて、あそこに住もうって」
__「でも、あそこなら、通学に二時間もかかるじゃん?」
__「そうよ。だから、あの時、あたしはずっと寮に住んでいた」
__僕は頷いた「卒業した後、引っ越ししたわけか」
__「そうです。もうずっと一緒にいるから、両親も反対はしていなかった。だから、一緒に住むことになった」
__自分と結んだばかりの女が、彼氏と同居の話を聞くなんて、僕は一体何をやっているんだろう。
__「ちょっと失礼かもしれないが、彼の事、あまり話したくなさそうだ」
__「あなたのせいよ」
__「僕?」
__「彼はあたしたちのことをよく知っている。写真を見たこともあるし、あなたがくれた本を見たこともある」
__「なんで捨てないんだ?」
__「記念だから。捨てるわけがないよ」
__僕は黙った。
__「あたしの心にはまだあなたがいるっていうことを、彼は分かっている」
__「僕は相当重要そうだな」と僕は苦笑した。
__「そう。あなたと彼、どっちが大事なの、あたしはまだ分からない」
__「彼にとって、嬉しいことじゃないぞ」
__「だから、あたしたち、いつもケンカしている」
__「家にも帰らないわけ?」
__「違う。今出張でパースへ行っている。来週戻る」
__「だから僕を家まで連れて行ったか。ばれたらどうする」
__「一週間もあるよ。手掛かりは残さない」
__僕はまた苦笑した。
__「ね、明日ここを出る?」とダイナーは聞いた。
__「そうだ」
__「香港行きの便はいつも朝だから、見送りもできないわ」
__僕はダイナーの顔を見て、彼女の手を握った「ダイナー、僕たち、やり直そう」
__ダイナーはびっくりした「ワーレン!」
__「僕たちはよく分かっている。お互いに忘れられない。どうして今まで自分を騙していたんだ?」
__ダイナーは僕を見つめた。
__僕は「僕はここに来て、仕事を探す。そうだったら、ずっと一緒にいられる」と言った。
__「香港の仕事、辞められるの?」
__「そうだ」
__「あたしのため、ここに来て、ゼロからやり直して、本当にいいの?」
__「いい」
__「今はそう言っているが、きっと後悔するわ」
__「後悔しないんだ」
__「あなたはきっと後悔するわ。あたしはあなたをよく知っているから。あなたは物事を忘れられる人じゃない。香港のことは忘れられないはずだ。同じようにあたしのことは忘れられない。ここに来たら、香港のことを強く懐かしむ」
__ずばり。ダイナーの言ったとおりだ。僕はただ衝動的にさっきの言葉を言っただけだ。
__ダイナーは僕の頬を撫でて「帰ってください。あたしのことを忘れてください」
__「さっきはどっちが大事なのか分からないと言ったじゃない?答えは明らかだ」
__「いいえ、その意味じゃ・・・」
__「自分を騙すな。彼と二年間ずっと一緒に暮らしているから、感情は深くなったよ。たとえケンカしても、愛は変わらない」
__「でも・・・」
__「僕は嬉しいんだ。僕はまだ君の心の中にいるから。僕をもっと喜ばせるのは、君には彼がいる」
__ダイナーは僕を見つめて「ありがとう」
__「僕を忘れるな。偉生を愛するのも忘れるな」
「分かった」
__僕は彼女の手を握って「お元気で」
__「あたしたち・・・また会える?」
__「さあ。君の社長との取り引きがうまくいったら、また来るかもしれない」
__「あの日を楽しみに」
__「もし、僕がまた来たら、君はもう奥さんになったように」
__ダイナーは顔が赤くなった「またからかうの」
__僕は彼女の手を放して「じゃな」
__ダイナーは僕にキスした「バイバイ」
__ダイナーは波止場に入って、彼女と偉生の家に帰ろうとした。
__彼女の姿が人波に消えたのを見て、感傷にひたった。
__どうして僕はいつも愛している人を失ったんだ?どうして引き止めることができないんだ?
__潮風が吹いていて、秋の涼しさをもたらした。
__僕は振り向いた。夕日はもう水平線の縁まで沈んだ。最後の光を輝かした。
__もう夕暮れだ。


(了)


© Rakuten Group, Inc.