第七章振り向けば夕暮れ第七章:終幕 __「着いたわ」とダイナーは言った。 __僕たちはフェリーを降りた。 __「ずっと前から聞きたいことがあるんだ」と僕は言った。 __「どうぞ」 __「この数年間の生活」 __「ま、どう言えばいいかしら?長いよ」 __「あの日、君が出た後・・・」 __「あたし起きてから、あなたと一緒にシドニーへ行こうと思った。でも、そうすると、悲しいことばかりじゃない?だから、静かに出ちゃった。家に帰って、あなたのことをずっと思っていた。後悔したわ」 __僕は黙ってて聞いた。 __「あたしが三年生の時、偉生(ワイサン)がお金を少し儲けて・・・」 __「偉生?」 __「ええ、話してなかったね、彼の名前」 __偉生か、あの「彼」の名前は。 __三年も経ってから、僕は初めてこの人の名前を知った。 __「名前なんかどうでもいい」 __「変わってないね」とダイナーは笑った。 __「まあね」 __ダイナーは話を続けた「偉生の貯金、そして彼の父親がお金を貸してくださったおかげで、あたしたち、新しい家を買った」 __「さっき北岸のやつ?」 __「そう」 __「それで?」 __「彼はあたしに言った。寮をやめて、あそこに住もうって」 __「でも、あそこなら、通学に二時間もかかるじゃん?」 __「そうよ。だから、あの時、あたしはずっと寮に住んでいた」 __僕は頷いた「卒業した後、引っ越ししたわけか」 __「そうです。もうずっと一緒にいるから、両親も反対はしていなかった。だから、一緒に住むことになった」 __自分と結んだばかりの女が、彼氏と同居の話を聞くなんて、僕は一体何をやっているんだろう。 __「ちょっと失礼かもしれないが、彼の事、あまり話したくなさそうだ」 __「あなたのせいよ」 __「僕?」 __「彼はあたしたちのことをよく知っている。写真を見たこともあるし、あなたがくれた本を見たこともある」 __「なんで捨てないんだ?」 __「記念だから。捨てるわけがないよ」 __僕は黙った。 __「あたしの心にはまだあなたがいるっていうことを、彼は分かっている」 __「僕は相当重要そうだな」と僕は苦笑した。 __「そう。あなたと彼、どっちが大事なの、あたしはまだ分からない」 __「彼にとって、嬉しいことじゃないぞ」 __「だから、あたしたち、いつもケンカしている」 __「家にも帰らないわけ?」 __「違う。今出張でパースへ行っている。来週戻る」 __「だから僕を家まで連れて行ったか。ばれたらどうする」 __「一週間もあるよ。手掛かりは残さない」 __僕はまた苦笑した。 __「ね、明日ここを出る?」とダイナーは聞いた。 __「そうだ」 __「香港行きの便はいつも朝だから、見送りもできないわ」 __僕はダイナーの顔を見て、彼女の手を握った「ダイナー、僕たち、やり直そう」 __ダイナーはびっくりした「ワーレン!」 __「僕たちはよく分かっている。お互いに忘れられない。どうして今まで自分を騙していたんだ?」 __ダイナーは僕を見つめた。 __僕は「僕はここに来て、仕事を探す。そうだったら、ずっと一緒にいられる」と言った。 __「香港の仕事、辞められるの?」 __「そうだ」 __「あたしのため、ここに来て、ゼロからやり直して、本当にいいの?」 __「いい」 __「今はそう言っているが、きっと後悔するわ」 __「後悔しないんだ」 __「あなたはきっと後悔するわ。あたしはあなたをよく知っているから。あなたは物事を忘れられる人じゃない。香港のことは忘れられないはずだ。同じようにあたしのことは忘れられない。ここに来たら、香港のことを強く懐かしむ」 __ずばり。ダイナーの言ったとおりだ。僕はただ衝動的にさっきの言葉を言っただけだ。 __ダイナーは僕の頬を撫でて「帰ってください。あたしのことを忘れてください」 __「さっきはどっちが大事なのか分からないと言ったじゃない?答えは明らかだ」 __「いいえ、その意味じゃ・・・」 __「自分を騙すな。彼と二年間ずっと一緒に暮らしているから、感情は深くなったよ。たとえケンカしても、愛は変わらない」 __「でも・・・」 __「僕は嬉しいんだ。僕はまだ君の心の中にいるから。僕をもっと喜ばせるのは、君には彼がいる」 __ダイナーは僕を見つめて「ありがとう」 __「僕を忘れるな。偉生を愛するのも忘れるな」 「分かった」 __僕は彼女の手を握って「お元気で」 __「あたしたち・・・また会える?」 __「さあ。君の社長との取り引きがうまくいったら、また来るかもしれない」 __「あの日を楽しみに」 __「もし、僕がまた来たら、君はもう奥さんになったように」 __ダイナーは顔が赤くなった「またからかうの」 __僕は彼女の手を放して「じゃな」 __ダイナーは僕にキスした「バイバイ」 __ダイナーは波止場に入って、彼女と偉生の家に帰ろうとした。 __彼女の姿が人波に消えたのを見て、感傷にひたった。 __どうして僕はいつも愛している人を失ったんだ?どうして引き止めることができないんだ? __潮風が吹いていて、秋の涼しさをもたらした。 __僕は振り向いた。夕日はもう水平線の縁まで沈んだ。最後の光を輝かした。 __もう夕暮れだ。 (了) ジャンル別一覧
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