新宿歌舞伎町はビルが超高層化しても変わらない
西新宿の淀橋浄水場跡地が再開発されて、そこに超高層のビル群が起ち上がったのが東京の都市高層化の第一波でした。平成3年(1991)に都庁が新宿移転してこの第一波は完了しましたが、その後、都内の各地に次々と超高層ビルが建ち並び、令和3年(2021)の東京オリンピック頃までに、超高層化の波は都内をほぼ一巡した感がありました。ところが今、JR新宿ターミナル駅周辺で超高層ビル建設の波が再び現れています。新宿西口のバス・ターミナルを囲むように立地している中層階ビルが次々に超高層化される計画が進んでいるのです。先ず、小田急デパートの解体作業が始まりましたが、それより先、2023年に西武新宿線の新宿駅の隣りに高さ225 m、48階建ての東急歌舞伎町タワーが出現したのです。〔写真1)この度建設された東急歌舞伎町タワーは、以前映画館ミラノ座があったところで新宿歌舞伎町の西端に位置し、若者の集まるシネシティ広場に面しています。と言うことは新宿歌舞伎町のもう一つの超高層ビル、新宿東宝ビル(高130 m、地上31階)とシネシティ広場を挟んで対峙する形とになりました。(写真2)歌舞伎町の二つの超高層ビルの中には、高級ホテル、映画館、ライブホール、レストラン、ゲームセンターとほぼ似たような施設が入っていて、ビル内に入れば、一つの街中に居ることになります。ですから特別の興味がなければビル外の歓楽街に出る必要はありません。(写真3、4)しかし二つの超高層ビルの間にあるシネシティ広場には、二つの超高層ビルに遊びに来る若者達の出会いの場所として賑わいは増しているようです。雑然としている歌舞伎町内では貴重な空間と言えましょう。(写真5、6)10年前、このブログ「東京今昔物語」で「新宿歌舞伎町 由緒ある歓楽街は変身する 2013,7,26」という題名で、コマ劇場の跡地に出現した新宿東宝ビル(高層ビル)の出現で従来の歌舞伎町のイメージを大きく変わることになるだろうと予想しました。しかし、バー、キャバレー、ホストクラブなどが営業し、周辺にはラブホテルが密集している欲望の迷宮都市、歌舞伎町は残念ながらその様相は変わりませんでした。今また、歌舞伎町にもう一つの超高層ビル、東急歌舞伎町タワーが出現しましたが、これも歌舞伎町の町並みの姿を変える力は無いでしょう。超高層ビルは、その建物の中だけで一つの街を形成しているので、ビルの外の町並みとの関連が薄いからです。冒頭に紹介した淀橋浄水場跡地の超高層ビル群の間に商店街が生まれないのは、高層ビル内で一つの街が完結するからです。最近、警察庁長官が歌舞伎町を視察して「悪質ホストクラブを徹底的に取り締まる」と発言していました。ホストクラブで遊ぶ若い女性達が過大な料金をツケで貯めて、その支払いに売春行為を強要される事件が多発しているからです。被害者が男から女に変わっただけで、欲望の迷宮都市、歌舞伎町は変わらないのです。以上 写真1 東急歌舞伎町タワー写真2 新宿東宝ビル写真3 東急歌舞伎町タワーの内部写真4 東急歌舞伎町タワーの内部写真5 シネシティ広場写真6 シネシティ広場