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詩人たちの島

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October 7, 2007
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カテゴリ:essay
朝、美しい10月の空が広がっていた。日光も申し分なかった。
9年前に高校を卒業した二人の教え子の結婚式に出席した。二人とも、私のクラス、こういうケースは初めてだった。イギリス流に言えば、マナーハウスというのか、そういう風に建てられた閑静な家(これは、もちろん結婚式とその披露宴のために作られたものだが)で、挙式のためのチャペルが二階にあり、そこで聖書をもとにした式が英語で行われた(司祭というか、牧師というのか、彼は日本人ではなかった)。簡素で、よかった。そのあとの披露宴もよかった。同窓会のようになったが、二人の成長ぶりを私は堪能した。

披露宴で、挨拶をするようにと言われていたので、なにを喋ろうかと昨晩考えたが、思いつかず(こういうことも私は大の苦手である)そのまま寝てしまった。今朝、書斎に指しこむ光のなかで、ふと思いついてEmily Dickinsonの岩波文庫の詩集を開いてみた。そこに’Wild Nights―Wild Nights!’という詩があった。


Wild Nights―Wild Nights!
Were I with thee
Wild Nights should be
Our luxury!

Futile―the Winds―
To a Heart in port―
Done with the Compass―
Done with the Chart!

Rowing in Eden―
Ah, the Sea!
Might I but moor―Tonight―
In Thee!

嵐の夜―嵐の夜!
あなたとともにいられれば
嵐の夜も
豪奢のきわみ!

気にならぬ―吹く風も―
港に入った心には―
羅針盤もいらない―
海図もいらない!

エデンの園を漕ぐ思い―
ああ、海よ!
ただ錨をおろせたなら―今夜―
あなたの中に!

亀井俊介編「対訳ディキンソン詩集」(岩波文庫)訳による。




ああ、これを読むだけでいいと思い、挨拶に代えて読んだのだった。でも、こうして書き写していると、これは祝婚歌にふさわしかったのかという疑問が湧いてきたが、これからの二人の時間もふくめて、そのなかにはあるだろう孤独のときに、互いを呼び求める歌としても読めるのではないかと、今思って、自らを慰めている。

でも、すべては久しぶりの美しい秋の空のもとで、楽しく屈託なく進み、そういうことに普段はいつも、ひねくれた感情が起きがちな私も、今日だけは若い人たちの笑いと涙を信じて疑わなかった。





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Last updated  October 7, 2007 08:36:49 PM
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