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― R ’s  Bar ― 癒し系バーの威圧系バーテンダーのつぶやき・・・

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ボストン・クーラー




yui姐様

このカクテルは 由衣(*^.^*)様 ↑のリクエストです。
クリックするとジャンプします。



『ボストン・クーラー』

   ~No.1~
   ニュー・イングランド・ラム 60ml
   レモン・ジュース 1/2個分
   シュガー 1/4tsp
   ソーダ 適量
   ソーダ以外の材料を氷と共にシェークし、中型タンブラーに注ぎ、ソーダで満たす。

   ~No.2~
   コニャック     60ml
   レモン・ジュース 1/2tsp
   シュガー 1/2tsp
   ジンジャー・エール 適量
   ソーダ以外の材料を氷と共にステアし、中型タンブラーに注ぎ、ジンジャー・エールで満たす。

   おおまかに分けると、ベースになる酒によってこの2通りになる。
   一般的であるラム・ベースのバリエーションとしては、
   分量もさまざまなのだが、材料に注目してみよう。
   ベースとなるラムを上げると、
   ニュー・イングランド・ラム、ライト・ラム、ホワイト・ラム、ゴールド・ラムなどがあり、
   レモンをライムに変える処方もある。
   また、ソーダをジンジャー・エールに変える処方もあり、
   とてもバリエーションに飛んだカクテルであるので、
   どのカクテルにでもいえるのだが、特に作り手と飲み手の呼吸が必要であろう。


   ニュー・イングランド・ラム(New England Rum)

   アメリカのニュー・イングランド地方でつくられているライト・タイプのラム。
   強い香りが特徴です。
   アメリカの大西洋岸、東北部地域の
   メーン、
   ニュー・ハンプシャー、
   バーモント、
   マサチューセッツ、
   コネティカット、
   ロード・アイランド
   の6州をさす。

   このアメリカ産のラムの背景は、18世紀に入って、ラムが急速にアメリカ人の間で人気を博した酒となった。
   元々これはスペイン人が西インド諸島を征服し、
   さとうきびを栽培した頃にカリブ海の島々で造られていた酒だった。
   1639年には初期のアメリカ人はラムを指す言葉として、
   西インド諸島の呼び名Kill-Devil(悪魔ころし)を使っていた。
   ほどなく、ニュー・イングランドの商人は西インド諸島から糖密と砂糖を輸入して、
   これを蒸留して自分たちでつくったラム酒をアフリカ西海岸へ輸出するようになった。
   ニュー・イングランドの船はそこで交換した奴隷を黒人奴隷を必要としていた西インド諸島で売り、
   糖密と砂糖とを仕入れてニュー・イングランドに戻った。
   つまりニューイングランドの商人たちは三角貿易で商業的繁栄を拡大していったのである。
   このニュー・イングランドで製造されたラム酒はYankee rum(ヤンキーのラム)とかsink-a-busと呼ばれた。
   これを朝食時に一口飲むことは、
   当時の南部で猛威をふるっていたマラリアの予防薬になると考えられていた。
   その後、フレンチ・インデイアン戦争で勝利を得たものの、
   莫大な戦費に頭を悩ませていたイギリス議会はその対策として、
   新たな戦後法案を次々に可決していった。
   その最初のものは1764年の砂糖条例であった。
   これは西インド諸島から砂糖を輸入し、
   ラム酒を製造していたニュー・イングランドのラム醸造所を窮地に追い込む結果になった。
   幸いなことに1722年には、多くのスコットランド系アイルランド人が新大陸に到着し、
   大部分がペンシルベニア州のシェナンドウア流域に定住した。
   彼等は本国で長いあいだケルト族と接触していたので、
   ライ麦を発酵し、usquebaugh(ケルト語、「生命の泉」の意)の製造法を知っていた。
   余談だが、
   このケルト語のusquebaughはまもなくwhiskybae(ウイスキーボー)と発音され、
   その後whiskeyとなった。
   eをいれたwhiskeyはアメリカとアイルランドでのつづりである。
   ところでペンシルベニアのスコットランド系アイルランド人は、
   祖国での習慣を保持しライ麦を原料とするウイスキーをつくるようになった。
   その後、彼等はライ麦不足からとうもろこしを用いて製造したのだが、
   これがウイスキーに独特の味と香りを与えることに気づいた。
   かくして生まれたのがアメリカ産の強水、バーボンウイスキーである。

   余談まで、書いてしまいましたが、ラムの歴史は三角貿易の黒人奴隷の悲しい歴史なのである。
   アフリカの黒人を奴隷としてカリブ海の西インド諸島に輸送し、
   その帰りに諸島で出来た糖蜜を積み込み、
   今度はそれをアメリカのニュー・イングランドに運び出す。
   ニュー・イングランドでは運ばれてきた糖蜜を降し、
   その代わりに糖蜜から出来たラムをふねむ積み込む。
   そしてアフリカに戻り、運んできたラムを黒人売買のための資金としたのである。

   前置きが長くなりましたが、
   こうした貿易の拠点となったボストンで、作られたカクテルがボストン・クーラーである。


参考文献
カクテール全書 木村 與三男
カクテル大辞典 稲 保幸
世界の酒大辞典 稲 保幸







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