10代、20代の頃、国内47都道府県を主に野宿しながら旅をしていました。ささやかな旅でしたが、それなりに得ることがいくつかありました。経験、体験に基づいて、これから野宿の旅をされる方に少しでも役に立つ(?)実用的な心得を公開します。
小笠掛川マラソンに行く途中、静岡県清水市付近を東名道を走行中のことです。
マラソン会場の近くで車中泊するために、愛車日産セレナのセカンドとサードシートをフラットにし、布団を敷き詰め自宅同様の快適な睡眠が可能な状態にしておきました。いつもの車中泊なら寝袋を利用しますが,翌日、フルマラソンを走るため万全の体制で望んだ次第です。
さて、東名道清水市付近で工事と交通事故による渋滞に巻き込まれてしまいました。ノロノロと走行中、女子高生を乗せた大型観光バスと並行した時です。黄色い声で、
「えっち~」、「いやらしぃ~」、「ああいう、クルマってアブナイのよね」等々の声声。
小生の愛車はカーテンを閉めず外から丸見えの状態でした。しかも、毛布の色はピンクでした。
【静岡県清水市付近にて】
自己流ですが簡単に、小屋がけ(形は屋根型)の手順を示します。
- 寝袋一つ分が入るサイズで深さ50cm程度の穴を掘ります。
- 太めの枝で、屋根の骨格を組み立てます。
- 小さめの葉がたくさん付いた枝を屋根の骨格にかけ、一通りかけたら、広めの葉がたくさん付いた枝をその上にかけます。
- 穴の底には広めの葉を敷きます。
- エアーマットを敷き、寝袋を広げれば出来上がりです。
この原始的な小屋に寝た晩は快晴でした。屋根の隙間からこぼれるように星が見え、快眠が期待できます。
ところが、明け方、妙に顔が冷たくて目が覚めました。どうやら夜露が落ちてきたようでした。顔の上に傘を広げて、もう一眠りの贅沢な時間を過ごしました。
【青森県白神山地にて】
観光地という所は、実に誘惑が多い所です。野宿の旅を続けるには粗食に耐えることが重要なポイントになります。
足摺岬に立ち寄った時には、家を出てから10日ほどが過ぎていました。ここで、焼きイカの匂いの洗礼を受けながらも、『1日、1000円以上は使わない』というルールで買うのをガマンし、灯台の近くのヤブにツゥエルトを張り、お茶漬けで夕飯を済ませました。
翌々日、土讃線の列車で高松に向かう途中に、全国一立ち食いうどんの旨い駅・阿波池田駅がありました。とうとうがまんできず、列車の停車時間に持ち帰り用容器入りのうどんを買ってしまいました。ところが、発車のベルが鳴り出し、急いで戻ろうとしたら、なんと靴の紐がほどけていて、ホーム上でズデン。無残にもうどんは末広がりの状態に。泣く泣く、列車に飛び乗りました。
あーっ、食べてみたい阿波池田駅の立ち食いうどん。
【高知県足摺岬、徳島県阿波池田駅にて】
駅という所は、雨風がしのげ、わりかし安全です。ただ、時間帯によっては大変なことになります。
当時、無人駅でだった東松江駅に最終列車で到着しました。小さな待合室でさっそく、バックパック下段から寝袋を取り出し、サントリーOLDウィスキーを愛用のオレンジ色のホーローカップにそそぎ、寝る前の儀式完了です。寝袋に入りチビリチビリ、ウィスキーを飲みながら今日の思い出に浸り、また明日の行き先を考えているうちに熟睡です。
何やら、回りがやけにざわついていました。寝袋の口から顔を出したら、列車待ちの通勤、通学の方にズラーリと囲まれていました。とにかくバツが悪くて、バックパックと寝袋を担いで、駅の外にそくそく退散しました。
【島根県松江市東松江駅にて】
人が誰もいない所で1人で野宿するときは、かなり覚悟がいります。そういう経験が何度かありましたが、特に恐かった2度の経験について、お話します。
- お話1:岩木山九合目・鳳鳴ヒュッテにて
梅雨の頃、単独で青森県・岩木山(標高1625m、富士山と同じコニーデ型の山)に登ったときのことでした。午後5時の頃、九合目・鳳鳴ヒュッテにたどり着きました。ヒュッテはいわゆる非難小屋で、この裏は日本海が迫っています。この鳳鳴ヒュッテは確か、昭和40年代にその付近で秋田県立大館鳳鳴高校山岳部が遭難し、それ以降建てられたと聞いています。鳳鳴ヒュッテの付近には卒塔婆が何本か立っています。
ヒュッテに入ると、直ぐに飯を炊いてレトルトカレーで腹を満たしました。食後の紅茶を飲んだ後、ちょっと、ウィスキーを飲んだら、コロッと寝てしまいました。問題はその夜です。夜半、12時半の頃、小便をもようしてきて目が覚めてしまいました。ところが、ヒュッテの鉄のドアがバタンバタン、開いては閉じてを繰り返しているではありませんか。ヒュッテ内は、どうやら小生だけでした。とにかく、ドアだけは紐で縛りつけました。今度は、ヒュー、ヒュ-と女性がすすり泣くような声が聞こえてくるではありませんか。恐くて、結局、夜が明けるまで寝袋の中に顔をいれたままでした。寝てはいませんでした。
夜明と共に、ヒュッテの外で下界に向けた小生のセガレは破裂した水道管のように、かなりの間、放水し続けていました。
- お話2:津軽半島核心部を縦断する林道の中間地点にて
7月の頃だと思います。小泊から三厩へ向かう林道を1人、歩いていました。暗くなってきた頃、林道から30mほど山に入った所にテント場に適した場所を見つけ、そこをその日のねぐらに決めました。とても静かな場所でした。夜半、お話1と同じようなことが起きました。またしても小便をもようしてきたのです。今度は、風は吹いていませんが、ふくろらしき鳥の鳴き声が近くで盛んに聞こえていました。その鳴き声は、恐怖を誘うような鳴き声なのです。結局、その時も朝まで我慢してしまいました。
観光地ですと、経験的にこういう事にはなりません。単独で北アルプスや無人駅に寝泊まりしても、こういう事にはなったことはありません。それは、近くに誰かいるという安心感があるからだと思います。恐らく、単独行に慣れた小生の場合でも、半径1Km以内に人がいないと、不安になってしまうのでしょうね。
【青森県岩木山、津軽半島にて】
弘前大探検部時代、弘前市郊外のロッククライミングのゲレンデ・座頭石で、1泊してロッククライミングをすることになりました。

この時のメニューは食費を安く上げるために、インスタントラーメン尽くしとなりました。当然、具無しです。メニューは以下の通りでした。
| | 朝 食 | 昼 食 | 夕 食 |
|---|
| 1日目 | | 焼きソバ(多分、マルちゃん) | 味噌ラーメン(多分、サッポロ一番) |
| 2日目 | 醤油ラーメン(多分、明星チャルメラ) | 冷やし中華(多分、マルちゃん) | |
2日目のお昼、テント場の前の沢で食器を洗っていた後輩が、
「先輩、ラーメンが沢の底で、うらめしそうに泳いでいるんですよ」
と。
一同、込み上げるラーメン・げっぷに堪えながら、肯くばかりでした。
【青森県弘前市座頭石周辺にて】
信州・白樺湖のキャンプ場での、夕飯の一コマです。
2泊野宿して、白樺湖に着きました。たまには、設備の整ったキャンプ場もいいかなと、お世話になることにしました。その夜は、豪華にマーボドウフを予定していました。マーボドウフはレトルトで、パッケージは見るからに美味しそうでした。
温めて、いざ開封してみたら、豆腐が入ってないではありませんか。開封するまでは、パッケージの写真のように豆腐が入っていると思っていました。やむを得ず、ご飯にマーボドウフの素をかけて、腹に流し込みました。裏のテントでは、ジュージューと音を立てて、焼き肉をしていました。洗い場で、そのテントの女性に会い、
「僕の夕飯、豆腐なしのマーボドウフだったんですよ」
と話し掛けると、
で終わってしまいました。
確か、焼き肉は、まだ3分の1は残っているはずなのに。
【長野県白樺湖周辺にて】